登山で使っているカメラ『EOS R』詳細レビュー

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Canonのフルサイズミラーレスカメラ、EOS Rを買ってしばらく使ってみました。

山のことをあれこれ扱う当ブログらしく、『山』でEOS Rの使い心地はどうなのかということを中心に書いていきます。

 

Canon EOS Rを山で使ってみた感想など

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雪山で

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夏山で

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森の中で

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岩場で

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海外で

 

オートフォーカス(AF)

RFレンズ及び、キヤノン純正のマウントアダプターを介してEFレンズを使った時の話です。(サードパーティ製のレンズは未検証)

オートフォーカス(AF)は、基本的には優秀です。特にUSM(Ultra Sonic Motor)を採用したレンズの場合は、スッと素早く正確にフォーカスが合います。薄暗い場所でもきっちり仕事をしてくれるので、AF性能は高いと思います。

ただし、山で撮影している時に、気になることがひとつ。キヤノンの自信を伺わせる正確かつ暗所に強い(低照度合焦限界-6EV)とされるEOS RのAFですが、『日の出の場面』など、暗さと明るさが混合している場面でAFを使うと、時々上手く合焦しないことがあります

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このような場面でAFが被写体を上手く認識してくれないことがある

一眼レフ(EOS 6D)のAFでは迷わなかった場面で、明らかに迷いが生じるケースが時々。何度かAFボタンを押すと、そのうち焦合してくれるので、実用面では凄く大きな問題ではないですが、小さなストレス。他は概ね問題なし。

 

顔認識(瞳認識)AFについてですが、機能的にはまぁこんなもんかという感じ。山ではポートレートをほとんど撮らないし、人を撮るにしても背景込みの被写界深度の深い写真がほとんどなので、顔(瞳認識)AFの精度についてはあまり雄弁には語れるほどに使っていません。

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山での人物写真は、背景を入れたいので被写界深度は深くなりがち

 

顔(瞳)認識AFで少し気になる点は、AFを全画面モード(顔・追尾優先AF)にしないと作動しないこと。

この辺は、顔認識ONにしておくと、一点AFモードでも自動的に顔認識に切り替わるOLYMPUSのOM-DのAFの方式の方が個人的には好きだったりします。この辺は個人の好みの問題。

 

電子ビューファインダー(EVF)

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EOS RのEVF(電子ビューファインダー)は、詳細で見やすく、良いものだと思います。

暗い画面だと表示がスローになってカクつくこともありますが、暗所でもまずますの使い心地。

ただし、EVFで見た像と、実際に撮影した画像の色味や明るさが違うことがあり、ちょっと気になりました。光学ビューファインダー(OVF)の一眼レフから、電子ビューファインダー(EVF)のミラーレスに乗り換えるメリットのひとつに、リアルタイムに撮影結果を参照しながら撮影できる…というメリットを期待していましたが、条件によってはそうならないこともあります。

あとは、当たり前ですが、EVFは電源オン状態でないとファインダー像の確認はできません。じっくりファインダーを覗き込んで構図を決めたい時には、OVFを採用した一眼レフの方が、バッテリーのことを気にせず済みます。

 

 

電池もち

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3日目…バッテリーは、まだ持っている…

電池持ちは、基本的にほぼ同じバッテリーを共用するEOS 6Dと比べると、明らかに悪くなっています。

一眼レフのEOS 6Dと比べると、体感的には1/3以下の電池持ちです。

バッテリー消費量の増大は、OVFの代わりにEVFを採用しているなど、電子部品が増えているミラーレスカメラの宿命とも言える事項なのである程度は覚悟していたのですが…。やはり、電池持ちは悪いと感じます。

泊まりで何日間か山に入る場合、充電ができなくなってしまうので、遠征登山などではミラーレスより一眼レフの方が有利なのかもしれません。

とりあえず、スイス旅行でツィナールロートホルンを目指した時は、(充電ができない環境で)2泊3日の行程となりましたが、あまり無駄に使わないように心がけたらバッテリーは1つでなんとか持ちました。念の為予備バッテリーも持参しましたが使わずに済みました。

このことから、EOS Rのバッテリーは、一眼レフカメラと比べると明らかに持ちが悪いですが、物凄くバッテリー持ちが悪いかといえばそうでもないといった認識です。 

 

画質

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EOS Rの画質は良いとは思うんですが…。数年前に発売された一眼レフのEOS 6Dと比べた場合、どれぐらい良くなったか聞かれたら「自分の目だと、ひと目で差が分からない」という結論です。

フルサイズセンサーカメラと、スマホとかGoproとかで撮った写真を見比べれば、画質差は一目瞭然ですが、それなりのレンズを装着した今どきの一眼/ミラーレスカメラで撮り比べた写真は、パッと見それほど画質に変わりないような気がします。

重箱の隅をつつくような撮り比べをしたなら、差はあるのかもしれません。

 

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EOS Rで撮った写真か、EOS 6Dで撮った写真か、パッと見で判別できますか?

 

良い点も言及しておきます。EOS 6Dは2020万画素で、EOS Rは3030万画素。画素数アップして一画素あたりの受光面積は減っているはずなのに、EOS Rの暗所性能は6Dと変わらないかちょっと良くなっているような印象なので、センサーは世代を重ね、少しずつ進化しているようです。

 

同じキヤノン製品でも一眼レフ用のEFレンズと、ミラーレス用のRFレンズは、実際に撮り比べてみた結果、新しいRFレンズの方が画質が良かったです。しかし、その画質差よりも、撮影のロケーションとか撮影者のセンスの方がよっぽど結果に影響しそう。

同じ焦点距離とF値(24-105mm F4)のEFレンズとRFレンズの比較をしてみた記事

 

レスポンス

一眼レフの場合、電源を入れると即座に撮影可能となるのですが、ミラーレスカメラの場合、電源を入れてから撮影できる状態になるまで、若干のタイムラグがあります。

一眼と比較するとバッテリー持たない問題があるミラーレスカメラだから、こまめに電源はオフにしておきたい。でも、電源オンにしたとき、起動まで時間かかるのはストレス。

EOS Rの場合、電源オンから撮影可能となるまで、1~2秒ぐらい待たないといけません。しかしそれでシャッターチャンスを逃したということは数回ぐらいしかないので、山で使う分には、起動時間はそれほどストレスにはなっていない感じ。

山だと決定的瞬間に、咄嗟にシャッターを押したい!という場面はそれほどないですね。雷鳥とかカモシカとかに遭遇したときぐらいか。

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高山帯で突然出てくる雷鳥

 

操作性

直感的な操作に関しては、以前の記事にも書きましたが、EOS Rの操作性はあまり良いとは思えません。

いろいろ自分でカスタマイズすれば、「使えなくもない」レベルまでは改善できるという印象。それは、今でも変わりません。

登山の際には、AVオート、一点オートフォーカス設定で、山のスナップ写真を基本にしつつ、場面によって変更(人を撮る時は瞳優先AFにするとか)という運用方法にしています。

絶望的に使いにくいというわけではないですが、ちょいちょい設定を変更しながら撮る人の場合は、ボタン類が省略されたEOS Rは使いにくいカメラかもしれませんね。

設定は基本的に固定で、時々状況に合わせて設定を変更する…というような、(自分のような)使い方の場合、慣れたら操作性に関してはそれほどのストレスにはなりません。

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人が動く写真は、風景と違って比較的頻繁に設定を変えて撮ったりするので、設定は直感的に・瞬時に変更できるに越したことはない。

 

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電源スイッチ

未だに好きではないのは電源スイッチの形。溝が掘られた丸形のスイッチを横に回すことで電源のON/OFFができます。

これ、素手で扱う分には問題ないのですが、手袋をした状態だと指が滑ることがあって操作がしにくいのです(できないわけではない)。冬山だと手を保護するために手袋を外せない場面が出てくるので、この操作が割とストレス(寒いと電池のもちが悪いのでこまめにOFFしたいし)。さらに、溝のところに雪が溜まって凍って固まり、ON/OFFできなくなってしまったことが一度ありました。ピッケルでぶっ叩いて氷を割ったらON/OFFできるようになりました。この電源スイッチ形状は時期モデルでは改善を期待したいところです。

 

堅牢性

EOS Rをしばらく使ってみて、山での使用に関しては、目立ったトラブルも無く概ね信用できそうというのが現在の印象です。

今後、故障が発生した場合は印象が変わってくる可能性もありますが…。

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とりあえず、雪をかぶったり水滴がかかったりすることは何度もありましたが、今の所内部への浸水らしきものは発生していません。防塵防滴構造なので、多少濡れる可能性のある場所でも使えます。

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こういうのはEOS Rでは無理

さすがにOLYMPUSのOM-Dシリーズのように、シャワーをぶっかけるような気にはなりませんが、山の中で使う分においては、おおよそ問題なさそうな気配。

 

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何ヶ月か使用で、岩にぶつけたり、落っことしたりしたこともありましたが、特に不具合が発生したりということもありません。

あ、落石がクイックシューに命中したせいで金属部分が凹んで、外部ストロボが現在装着できないとうトラブルが発生しています。でもそれは、どのメーカーのカメラでも同じくダメージを受けるであろう為、レビューとは別の話。

総評

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キヤノンのフルサイズミラーレスカメラ、EOS Rですが、「山で使えなくもない」というのが現在の認識です。

外の撮影で重要となるバッテリー持ちに関しては、一眼レフのEOSシリーズと比べると、明らかに持ちません。充電のできない長期山行や、1日1000カットも撮るような場合では、まだ一眼レフの方が優れていると思います。

純正のマウントアダプターを使えば、一眼レフのEOSシリーズの、豊富なEFレンズ資産がトラブル無く使えるというメリットはあります。一方で、EOS Rの独特の操作性は、従来のEOSユーザーにとっては慣れるまでストレスでしょう。

フルサイズミラーレスカメラ、EOS Rシリーズ専用に開発されたRFレンズは、2019年8月現在、24-105mm F4 Lと、35mm F1.8の2本を所有しています。両レンズ共に、画質や使い勝手は良く、大変気に入っています。

RFレンズにはキヤノンの本気を感じるので、今のうちにRFレンズを揃えておく意味も込めてEOS Rに移行するも良し(自分がそう)。もう少しレンズラインナップが拡充して、山でもっと使い勝手の良さそうなボディが発売されるまで待つのもアリだと思います。

 

 

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