タイブロック・マイクロトラクション 【クライミングの装備】

今回はペツル社のクライミングギア、タイブロックとマイクロトラクションの紹介です。

お友達の山岳ガイドも必須装備に入れている便利アイテム。

レスキューや荷揚げなどマルチに使える軽量ギアです。

 

【Petzl】レスキュー・荷揚げに使える軽量ギア

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マイクロトラクション

セルフジャミングプーリー

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重量わずか85g

超軽量のセルフジャミングプーリー(滑車)です。

ロープ経8-11mmに対応しています。

【セルフジャミング機能】一方向へロープは流れますが、反対側にロープが引かれても、内蔵されたギザギザに引っかかることでロープがストップする作りです。

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ロープをセットした図。

 

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矢印の方向にロープは流れます。

逆方向にロープが引っ張られても、ギザギザのところで引っかかることでロープは反対方向には流れません。

 

プーリーの有用性

荷物の引き上げを行う時、プーリーを使うことで摩擦によるパワーロスを大幅に軽減できます。

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カラビナのみを使用して、荷物の引き上げをするの図

カラビナを介して重量物を引き上げるようとすると、ロープとカラビナの摩擦によって、引き上げには結構な力が必要となります。

 

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マイクロトラクション(プーリー)を使用

プーリー(滑車)を介して引き上げることで、摩擦によるパワーロスを大幅に軽減させることができます。カラビナのみで引き上げを行う場合に比べて、体感的にもかなり楽です。

要救助者の引き上げや、空身でルートを登った後の荷物の引き上げなどの場面では、スムーズなロープの引き上げが可能となるプーリーは重要なアイテムです。

 

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マイクロトラクションにはオートブロック機能(一方向のみにロープが流れる)があるので、荷物の引き上げ途中に手を話してしまっても、荷物は落下しません。

 

タイブロック

最軽量アッセンダー

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重量39g

アッセンダーの中では最も軽い製品です。

上の写真のアッセンダーは、ディーアイが使っている旧モデルですが、新モデルは35gと更に軽量化されています。

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内側のギザギザがロープに食い込むことで、下方向に引かれた際に落下を食い止める役割を果たします。

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矢印の方向に対しては何の抵抗もなく動かすことができますが、下方向にカラビナが引かれると、タイブロックのギザギザとカラビナがロープを挟み込み、下方への移動(墜落)を止めます。

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ロープ経8-11mmに対応。

カラビナとの相性もあるので実践で使用する前に、カラビナとの相性をチェックしておくことを推奨します。

 

タイブロックの用途

タイブロックはアッセンダーです。主に固定されたロープを登る際の補助として使用します。

プルージックなどのフリクションノットの代替としても使えます。

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フリクションノット(プルージック)

補助ロープをメインロープに巻きつける方法。こちらの方が汎用性がありますが、落下時には補助ロープが締まるまで少し落ちることや、テンションが掛かった時に締まった補助ロープを解くのが大変なこと、フリクションノットをスライドさせるのには、テンションを解除する必要があるなど、一手間がかかります。
タイブロックを使用することで、その微妙な一手間を省くことが可能です。

 

シンプル・軽量であることの有用性

上に挙げた写真の通り、タイブロックの構造はびっくりするほどシンプルです。

そのシンプルさ故に、山の中で故障する可能性が限りなく低いというメリットがあります。

また、39g(現行型は35g)という重量は、マルチピッチ、アルパインクライミングなど、装備をできる限り軽量化して臨みたい山行の際には、軽量化に大きく貢献してくれます。

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3人以上で、一本のロープを使ってクライミングをする際には、中間者が固定されたロープを登る際にタイブロック(アッセンダー)があると大変便利です。

 

3/1システムを手軽に実施

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上の写真は、マルチピッチクライミングの終了点にて、タイブロックマイクロトラクションを使用して、『3分の1システム』を作成。フォロワーを引き上げているところです。

『1/3システム』を作ることで、普通に引く場合と比べて1/3の力でロープを引き上げることが可能となります。

重量60kgの物体の場合、通常なら60kgを引き上げる腕力が必要となりますが、3分の1の場合では20kg分の力でOKという計算になります。これならもしも後続者が落っこちて宙ぶらりんになった場合でも、なんとか強引に引き上げることができそうですね。

荷物が重い場合でも、1/3システムを使えば比較的少ない力で引き上げることができ、体力を温存することが可能です。

1/3システムの役立つ場面

空身で難しいピッチをクライミングした後、重い荷物を上から引き上げたい時

フォローで登ってくるパートナーが、登れない状況になった時(ハング下で宙ぶらりん、技術的に登れない等)、上からパートナーを引き上げたい

屈曲の大きいルートでロープの流れが悪くなってしまい、腕力だけでロープを引き上げるのが困難な場合

 

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カラビナとプルージックコードを使用して、とりあえず持ち合わせのギアで1/3システムを組むことは可能です。ですがコレ、やってみると分かるのですが、ロープとカラビナの摩擦が大きくて、予想以上に力が必要です。

フリクションノットで流れるロープは一応止まりますが、少しだけ流れることもあります。

やはり、専用の機械でやった方が断然パワーロスが少なくて済みます

 

1/3システムよりも引き上げる際に負担が少ない1/5や1/7などのシステムもあります。…が、システムが複雑化して、セットに時間がかかる&必要な道具も重くなってしまいます。

現場でパパっと組める1/3システムは、覚えやすくて比較的少ない道具で実施できるので、現実的で便利なのかな…と思っています。

 

まとめ

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非常時に活躍するレスキュー用の装備。しかし、持っていったとしても基本的には使わずに終わってしまうことが多いです(毎度レスキュー装備が活躍していたら、それは安全管理に関わる問題)。

使う頻度の多くない装備は、できる限り軽量化したいのが人情というものです。

やたらに重いと、「多分使わないからいらないかな~」と、置いていってしまうことにもつながってしまう可能性ありです。→ピンチの時には超焦ることに。

ペツルのマイクロトラクションやタイブロックというギアは、「使うかはわからないけど、とりあえず持っていこう」という気にさせるほど軽量です。

マルチピッチ、沢登り、アルパインクライミングなど、事故が起きた際にはセルフレスキューが必要となるアクディビティには、レスキュー装備は必須。

レスキュー用の装備があれば「どんなトラブルも大丈夫…」というわけではないですが、いざという時に役に立つ可能性もあるので、持っておきたいところです。

モノだけ買っても、使い方が分からなければ意味がないので、クライミング技術(登る方だけ)でなく、セルフレスキュー技術も覚えておきたいところです。

 

 

プーリーやマイクロトラクション等、相性の悪いカラビナもあるので注意です。オーバル型(卵型・長円型)のカラビナが無難に相性が良いです。

 

このカラビナ(ペツル・エスエムディ)は、タイブロック落下防止のために使う細引きを通すため、小さな穴が空いています。

 

セルフレスキュー (ヤマケイ・テクニカルブック登山技術全書)

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