後立山(うしろたてやま)連峰は、霊峰・立山から黒部川を挟み、向かい合うように連なる山々です。長野県の大町市~白馬村にかけて縦断するその峰々は、3000m超のピークこそないものの、その頂稜はどれも個性的であり、麓から一気に立ち上がっている山が多いのも特徴です。
今回は、好きな人は大好きな山域である後立山エリアについて、個人的な雑感を綴っていきたいと思います。
北アルプス(後立山連峰)の印象的な場所
針ノ木岳(はりのきだけ)
2820m 二百名山
山頂付近は、扇沢を取り囲む山々の中で一際目を引く、凛々しい三角形のピークです。
この山の特徴は頂部の美しさだけでなく、メインルートで通過する『針ノ木峠』は、江戸時代・佐々成政の厳冬期針ノ木峠越えというエピソードがあります。
日本三大雪渓である『針ノ木雪渓』を擁することでも知られ、春に登ると登山者よりもBCスキーヤーの方が多いぐらい、山スキーの好スポットとなります。
山の美しさ、歴史、大雪渓などの地形的特徴を備えているので、百名山に選ばれてもおかしくはないような山なんですが…。個人的に日本百名山を選出した深田久弥的にはそれほどお気に召さなかったのかも。
扇沢(おうぎざわ)周回
針ノ木峠~種池間の稜線は、ちょうど扇沢を回るように縦走できます。
扇沢を出発し、そのまま扇沢に帰って来られるのでマイカー派には嬉しい。
百名山がないのであまり人気のないエリアですが、眺めもスケールも素晴らしく、もっと人気でもよいと個人的には思っています。
爺ヶ岳(じいがたけ)
2669m(中峰) 三百名山
北峰、中央峰、南峰と3つのピークからなっている三つ子の山。近くに後立山の盟主である鹿島槍ヶ岳が存在するので、前衛峰のような扱いを受けることもありますが、爺ヶ岳そのものは条件によってかなり見栄えします。
知名度では隣の鹿島槍ヶ岳には劣りますが、そこまで健脚者でなくとも扇沢から無理なく日帰りできるので、とりあえず北アルプスでどっか登っときたい時など 、大きく気負わず行けるという意味では使い勝手が良いとも言えます。
冬でも比較的アプローチの良いルート(東尾根)があったりするので、季節を問わず一定数の登山者が訪れる山。
鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)
2889m 日本百名山
動物の耳のような、双耳峰ピークが特徴。標高は高い方の南峰の方が表記されている。
槍ヶ岳の名前が付くと鋭く険しい印象を受けますが、扇沢~爺ヶ岳ルートからだと大した危険箇所はないです。
爺ヶ岳方面から、遠見方面から、どのアングルから見ても優美でそれぞれ異なった美しさがありますが、個人的には五竜岳山頂から見る鹿島槍ヶ岳の形がシュッとしてて好きです。
八峰キレット(はちみねきれっと)
鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間にある難所。
コルの部分にはキレット小屋があり、こんなところにどうやって小屋建てたんだ? という驚きがあります。
ちなみにキレット小屋から鹿島槍方面が通行注意箇所で、小屋から五竜方面はそれほどではない感じ。
五竜岳(ごりゅうだけ)
2814m 日本百名山
ゴツゴツした岩の塊感のある形をした山で、美しい曲線を描く隣の鹿島槍ヶ岳と対照的な存在。特に、唐松岳方面から見る五竜岳は存在感があります。
昔、残雪期に登って、ビビって引き返してきたことがあります。そのうち再挑戦したいと思いながら、なかなかその機会に恵まれずに何年も経過してしまいました。
遠見尾根(とおみおね)
八方尾根の方が有名だと思いますが、こちらも見晴らしのいい森林限界上まで楽々標高を稼げるロープウェイがある尾根。冬にはロープウェイのある場所はスキー場として使われています。
五竜岳(尾根が実際に行き着くのは白岳)まではアップダウンあって、意外と体力を使います。
進むに連れてアングルが変わる鹿島槍ヶ岳の眺めや、目の前に迫る五竜岳の岩壁が魅力。尾根上から見る景色に関して、個人的には八方尾根よりもこちらからの景色の方が好きです。
八方尾根(はっぽうおね)・八方池
この尾根が行き着く先にあるピークの『唐松岳』という場所よりも、『八方』という名前のほうが有名かつ訪れる人々の印象に残りがち。
途中にある有名な『八方池』では、白馬三山のリフレクションが見事な池。晴れた空と無風のタイミングをつかむと見られます。カメラマン多数。
シーズン中には渋滞するほどの人気ロープウェイを乗り継げば、白馬村が眼下に広がり、1850mの地点まで登山装備無しで到達可能。
個人的にはロープウェイは始発時間が遅いと感じるので、黒菱の林道がオープンしている時にはそっちを使って暗いうちに歩き出したりします。
唐松岳(からまつだけ)
2695m 三百名山
山としては目立たないけど、八方尾根の行き着く先なので人気。
稜線まで上がりきった時に現れる剱岳の景観が素晴らしい。
唐松山荘はテント場が結構下にあってトイレとか大変なので、ここで一泊するならテントでなく小屋の方が良いかも? …でも、土日とか混みそうだ。
不帰の嶮(かえらずのけん)
不帰キレットとも。
唐松岳から北方、鋭く切れ落ちた稜線。八峰キレットと並ぶ後立山の難所。北アルプスの奥西縦走とか大キレットとかと比べたら難易度は落ちますが、鎖場とか落ちたら死ぬところとかあるので慎重に。完全に信頼していいのか分からないハシゴが渡してあるところが個人的に怖かったです。
冬にはこの辺のピークから谷に滑り降りるスキーヤーがいる。クレイジー。
鑓ヶ岳(やりがたけ)
2903m
白馬三山のひとつ。
麓から見ると白く尖ったピラミッド型の山で、ヤリと言われるだけあります。が、白馬岳方面の稜線上からみると尖ってみえない。山は見るアングルが変わると全然印象が変わって面白いということを再認識させてくれます。
山腹にある天然温泉、鑓温泉が人気。入ったことないけど。
杓子岳(しゃくしだけ)
2812m
白馬三山のひとつ。
なかなか面白い形。白馬(長野)側はすっぱりと切れ落ちたようになっている。杓子岳は多くの場合目的地とはされず、白馬三山セットとかで「ついでに」登られる印象。
杓子尾根は残雪期のバリエーション入門にピッタリ。
白馬岳(しろうまだけ)
2932m 日本百名山
白馬三山のボス。大雪渓とお花畑が有名で、北アルプスでは絶大な人気を誇る名山。
特にこわだっているわけではないのですが、自分の場合はなぜか大雪渓を登る時には5月が多いです。5月だと、大雪渓は上の稜線まで繋がっているので、太陽が登って雪が緩んでくると上から長い距離をシリセード(尻滑り)で滑り降りることが可能です。
ただし、雪渓上部はかなり傾斜が急なので、下手をするとスピードコントロールできずに滑落という形になって怪我をする恐れもあります。ピッケルでの速度調整が不可欠。
シリセードのやりすぎで、(セールで)1万円ぐらいした愛用の山パンツのケツの部分に穴を開けてしまいました。
春に登るとスキーヤーが多いです。
白馬村(はくばむら)
白馬岳や八方尾根などの登山ベースとなる村。村から見上げる白馬三山や五竜岳が素晴らしいので、帰りたくなくなってしまいます。
スキーシーズンになると外国人が多い。
パタゴニア、ノースフェイス等の直営店や、登山用品店も多数あり。下山後に立ち寄るとついつい何か買ってしまうので危険度が高いです。
美味しい個人経営の飲食店が多いので、下山後メシが楽しみです。ガーリック、サウンズ、おおしも、絵夢、ちとせあたりが好きです。
白馬大池(はくばおおいけ)
白馬岳山頂から北にある大きな池。
池畔にテントサイトが(営業小屋も)あり、下地もよいのでステキなテント泊が満喫できます。ガツガツ歩かないテント泊登山も悪くないですね。
親不知(おやしらず)
北アルプスの北端は、栂海新道を経て日本海にて終了。日本の屋根と言われる北アルプスを歩き通すと、最後には海に出るというのはなんともロマンチック。
その日本海に面する場所が親不知。
そのうちに北アルプスを縦走して、栂海新道から海まで抜けてみたいのですが…休みをくれェ。
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