【イタリア4000m峰】 グラン・パラディーゾ登山【前編】

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イタリア国内に全ての山体が収まっている山の中で、唯一の4000mを超える峰がグラン・パラディーゾ(Gran Paradiso, 4061m)。

イタリアの最高峰はモンブラン(4810m)なのですが、こちらはフランスとの国境にもなっている山なので、イタリア・フランス両国の最高峰という位置づけです。グラン・パラディーゾは、イタリア領内に全ての山体が所属しており、ある意味ではイタリア最高峰と言っていいでしょう。

数年前にそのグラン・パラディーゾに登ってきた記録です。

 

場所:イタリア、グラン・パラディーゾ

登山日:2015年8月10日~8月12日

登山タイプ:雪山、山小屋泊

メンバー:ディーアイ(ソロ)

 

グラン・パラディーゾ登頂記録【前編】

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グラン・パラディーゾとは

グラン・パラディーゾ(Gran Paradiso)は、イタリアヴァッレ・ダオスタ州にあるグライエ・アルプスの最高峰である。 頂上はフランスとの国境に近いが、完全にイタリア領内にある。

最高点(4,061m)への到達は1860年9月4日に J.J Cowell, W. Dundas, J. Payot e J. Tairrazによってなされた。 今日ではそれは最後の60mを除いて簡単な登山だったと考えられている。 通常の登山道は「Chabod避難所」または「Vittorio Emanuele避難所」から始まる。 前者は1966年に登山家「Federico Chabod」に捧げられ、後者はイタリア王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世から名付けられている。今日のグラン・パラディーゾ国立公園、1856年に王専用のグラン・パラディーゾ狩猟場としてこのあたりが整備されたためである。

wikipedia[グラン・パラディーゾ]より

 

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グラン・パラディーゾ(国立公園)はイタリア北西部、フランスとの国境近くに存在しています。

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グラン・パラディーゾ国立公園は、シャモニー・モンブランと2006年に冬季オリンピックが開催されたイタリア・トリノ市を挟んでだいたい中間部に位置しています。

 

グラン・パラディーゾを目指したきっかけ

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その年(2015年)の夏、シャモニー・モンブラン山群の天気は(自分にとって)望ましい条件とは言い難かったです。

登ろうと思っていたルートが、雪解けが早くて落石リスクが上がってしまい、諦めざるを得ない状況に。さらに、それまで晴れ続きだった天気も変わり、曇や雨が続いてしまうことも。

どこに登ろうかと悩んでいる時に、同じ宿にいた人から「イタリアのグラン・パラディーゾはシャモニーの天気が悪くても登れることが多いし、行ってみるのはどう?」との提案をいただき、国境を渡ってイタリアの山に登るという選択肢に気づきました。

 

グラン・パラディーゾへの行き方がよくわからない問題

シャモニー発でグラン・パラディーゾに登ったという記録は、(日本語のものを含めて)いくつかネットで見つけることができました。

しかし、どれも「ガイドを雇って、ガイドの運転で登山口まで行った」というものばかりで、「車を持たない登山者が自力でグラン・パラディーゾ登山口まで行った」という情報は得られませんでした。

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周辺マップ

『シャモニー↔クールマイユール↔アオスタ』の経路(画像の赤点線)は公共交通機関が定期的に走っていますが、グラン・パラディーゾ登山口のあるポント(Pont)へ行くための公共交通機関(画像の青点線)は、有るのか無いのか、調べてもよくわからないままでした。一応途中のバルサブランシュ(Valsavarenche)というところまで、バスは出ているようでしたが、1日2~3便と素晴らしく使い勝手は悪そう。

クールマイユール↔アオスタ間のバス経路で、グラン・パラディーゾへ行くために最も近いと思われる下車場所はアルヴィエ(Arvier)。そこから登山口のあるポントまでは26.3kmの距離があります。車でならそれほど遠くない距離ですね。

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しかし、悲しいことに左ハンドルの運転が怖かったので、ヨーロッパに来るのに国際免許証は取得してこず。レンタカーを借りればシャモニーから登山口まで全然問題なく行けるのに…。

 

移動手段は?

結局、公共交通機関は見つけられず(バスとかをイタリアのサイトで探しましたが、よくわからないまま)。レンタカーも借りられないし、タクシーは、アルヴィエから呼べるのかは不明(イタリア語わからんし、英語通じるかは不明)。

 

仕方ないので、26.3kmを歩くことにしました。シャモニーを出発して一日かければ十分登山口まで到着できそうだし。

最悪途中でビバークすることになっても大丈夫なように、非常食やツェルト等を持っていけば行ってこれないことはないだろう、と。

 

あと、アルヴィエからグラン・パラディーゾ登山口への道は、ほとんど一本道になります。

そこを通りかかる車は、恐らくほとんどはグラン・パラディーゾの登山口(麓)に向かうと考えられます。

なので、「歩いてグラン・パラディーゾの登山口に向かいながら、ヒッチハイクをして通りかかる車に拾ってもらおう」と考えた次第です。

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2つの登山口

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グラン・パラディーゾを目指す登山口(ルート)は2つあります。

アルヴィエあたりからバルサブランシュ(Valsavarenche)谷に作られたSR23号線の道路を走ってポント(Pont)を目指す点は一緒ですが、隣接する場所に2つの登山口があるのです。

【1】標高1829mの小さな駐車場から出発し、シャボット小屋(2750m)で泊まり、グラン・パラディーゾの山頂を目指す。

【2】SR23号線終点にある標高1960mの大駐車場を出発し、エマニュエル2世小屋(2732m)で泊まり、グラン・パラディーゾ山頂を目指す。

どちらのルートを選んでも、上部の氷河部分で2つのルートは合流し、同じ山頂を目指すことになります。

 

今回の登山では、【1】のシャボット小屋を経由するルートを選択しました。

以下の理由から。

  • 1829mの登山口の方が、1960mの登山口よりも近い場所にあるので、歩いていく場合には楽。
  • 大駐車場があり、出発地点の標高が高い(登りが少ない)エマニュエル2世のルートの方が恐らく人気が高い。
  • 今回歩いて(もしくはヒッチハイク)してグラン・パラディーゾを目指すとなると、小屋に1日で到着できるか、2日で到着できるか分からないので小屋の予約ができない。
  • シャボット小屋の方が多分混まないので、予約無しで行っても泊めてくれる可能性が高いと思われる。

 

とりあえず行ってみた

まぁ、うまくいく保証はどこにもなかったわけですけど、とりあえず行ってみないと始まらないので、シャモニー(フランス)から国境を超えて、山を挟んで向う側にあるイタリアを目指すことにしました。

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シャモニー・モンブランの朝。ホテルを出たところ。

 

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エギーユ・ディ・ミディの朝焼けを横目に、シャモニーのバス・ステーションを目指しました。

そこからイタリア・クールマイユール行きのバスに乗ります。

 

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モンブラン山中にブチ抜かれたトンネル(モンブラントンネル)を抜け、隣国イタリアに到着。

バスチケット販売所のおばちゃんに、地図を見せながら、身振り手振りで「ここに行きたい!」と伝え、バス券購入。

 

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バスドライバーにも、地図を見せながら「ここで降ろして!」と伝え、なんとか目的地であるAlvier(アルヴィエ)という場所で下車。ここからグラン・パラディーゾ国立公園へと通じる道を目指し、歩いていくことに。

 

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歩行中に見た、イタリア国内の景色。

 

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市街地で迷子になった時、買い物帰りの現地おばちゃんに遭遇。地図を見せながら「グラン・パラディーゾ!マウンテン!クライミング!」的な言葉を発しながら、ジェスチャー。英語は通じませんでした。

恐らく買い物帰りで、洗剤とか野菜とか持っているにもかかわらず、親切なイタリア人のおばちゃんが途中まで一緒に歩いてくれて、道案内をしてくれまいた。感謝。

 

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途中から、グラン・パラディーゾの登山口へ至る道は一本道に。ここまで来たら迷いようもないし、最悪歩いても到着できそう(ビバーク装備と非常食も持っている)。気楽な感じで目的地である登山口を目指しながら、ヒッチハイクを開始。

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時々車が通りかかるので、グッと親指を立ててヒッチハイクポーズをやってみるのですが、見事にスルーされました。

「そんな簡単にはいかねぇよなぁ~」と、トボトボ歩いて目的地を目指します。最悪、車がつかまらなければ歩いて到着すればいいやと思っているので結構気楽です。

まぁどうせダメだろうけど、と途中でちょっと投げやりな気分になりながらも、通りかかる車の前で親指を立てみると…

1台の立派なキャンピングカーが止まってれ、運転しているオジちゃんが「乗りな!」と気前よく社内に招き入れてくれました。

「うおぉぉぉ、マジでヒッチハイクってやればできるんだ!」と少し感動しながら、車に揺られて目的地を目指すことになりました。

サンキュー、ニュージーランドから来た4人組。

 

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無事というか、意外とあっけなく、グラン・パラディーゾの登山口に到着。この時点で標高は1829m。

 

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登山口には、いろいろと注意書きが。国立公園ですから。

12:00ごろ、グラン・パラディーゾ登山開始です。

 

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朽ち果てた小屋。昔はどのような用途で使われていたのでしょうか。

 

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最初は明瞭で歩きやすいトレイルを行きます。

 

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無人の小屋。薄い石を敷き詰めたような屋根がアルプスっぽい。

 

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晴れていれば素晴らしい展望だったでしょうが、生憎の天気です。

時々降る霧雨が、肌に心地よく、天気が悪いのも悪くない…と思いながらゆっくりと標高を上げていきました。

 

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森林限界を抜けたところ。

 

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アイベックス発見。嬉しくて何枚も写真を撮りました。

 

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近くにアイベックスの群れがいてビビる。

 

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登山者たちとアイベックス。角が超でかい。

 

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14:30ごろ、標高2750mにあるシャボット小屋(Refugio Federico Chabot)に到着しました。

運良く予約無しでも泊まれましたが、いっぱいの場合は宿泊が断られることも。予約無しで小屋に行くと、露骨に嫌な顔をされる場合もあります。

ちなみに1泊2食付きで料金は43.2ユーロ。ヨーロッパの物価を考えると安い。

 

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シャボット小屋の眼の前にある広場。天気が良ければ素晴らしい光景が一望できそう。

 

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明日目指すグラン・パラディーゾの山肌。上部の氷河部分は雲に包まれて見ることができませんでした。

 

 

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グミとか行動食しか食べてなかったので腹ペコ。小屋で遅めのランチを注文。

パスタ、ビールと合わせて12.5ユーロ。

 

 

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シャボット小屋到着時には時々雨が降ることもありましたが、天気予報通り、少しずつ雲は取れていく様子でした。

 

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明日は天気予報通り、本当に晴れてくれるのだろうか。
ルートは、問題なく登れるのだろうか。

色々な不安や期待など、複雑な感情を抱きながら、ゆっくりと雲が取れていくと同時に、暗くなっていく空を見つめていました。

 

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シャボット小屋の寝室(昼間に撮影)。

翌日は暗いうちから行動するので、早々に寝ます。

  

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グラン・パラディーゾ登山記

 

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