ヘルメットについて【安全登山のための個人的意見】

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最近は一般登山道でも、岩場のあるルートではよく見かけるようになったヘルメット。長野県警も一部山域でヘルメット着用を推奨しており、安全登山のための装備として今やヘルメットは一般化している感じです。

まぁ、その辺についてはケチつけるつもりはないです。では、登山でヘルメット着用が一般化した現在、登山者の安全意識は向上していて、遭難は顕著に減っているか、と言うと…そいういうわけではない模様。

ヘルメット=安全登山という図式については、なんとなく違和感を感じていない訳ではないので、思いつくままダラダラと書いていきたいと思います。

 

ヘルメットは安全登山のために必須の道具か

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Petzl(ペツル)社の登山・クライミング用ヘルメット

 

ヘルメットがあれば難ルートを登れる?

どこかで「ヘルメット買ったから剱岳に行けるようになった!」という喜びの言葉を見かけ、私個人としては恐ろしさを感じました。

その人の登山経歴は詳しく知らないし、どういう意図でその発言をしたのか、こちらの解釈とは異なる場合もあるでしょう。

まぁ、とにかく剱岳のルート、ヘルメットをしていても鎖(岩)から手を離せば、普通に死にます

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剱岳の一般的なルート(別山尾根)

ヘルメットをしていても、剱岳の岩場を通過するにはある程度しっかりとした登山技術が必須です。ヘルメットが山に登らせてくれるわけではありません。足で歩いて登るのが山です。

私自身はヘルメット否定派じゃないし、安全性を向上させるものはどんどん取り入れればいいと思ってはいるのですが、最近の「ヘルメット被れば安全に配慮している」みたいな風潮の前には、いやちょっと待てよという違和感が無いと言えば嘘になる。

全身ピカピカのブランド装備で、危なっかしく岩場を進む人(と、その人が作り出す渋滞)を見ながら、「道具を揃える前にやるべきことがあるだろう」と、思っているわけです。

 

最近は急に着用率が上がったヘルメット

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2011-2012年ごろの写真を振り返ると、北アルプスの槍・穂高あたりでもヘルメットを着用している人は本当に少ない。

一昔前まで、ヘルメットは奥穂~西穂縦走とか難しめのルートに挑む人や、ロッククライマーが身につけるモノといった印象がありましたが、ここ数年でヘルメットの着用率が急上昇しているのを感じます。岩場を含む一般ルート(槍・穂高周辺とか)を歩いていると、ヘルメットをしている人をよく見かけます。

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登山者の安全意識が全体的に向上している?それは良いことだと思います。

 

一方で興味深いのは、2018年夏山での山岳遭難件数。統計始まって以来最多だそうな。

平成30年夏季における山岳遭難の概況

過去5年間の夏期における山岳遭難発生状況をみると、今年は、夏期の山岳遭難として統計の残る昭和43年以降で、発生件数が最も多く、初めて700件を超えた。また、遭難者数は平成27年以降700人を超えて推移しており、高止まりの状態にある。

警察庁より引用

www.npa.go.jp

山岳遭難で最も多いのが「道迷い」なので、ヘルメット着用率の増加と山岳遭難の増加を安易に結び付けるのは乱暴な気もしますが…。とにかくヘルメットを着用率の上昇=登山者の安全意識の向上→山岳事故(遭難)の減少という結果にはなっていないような気がします。知り合いの山岳救助隊員は、「最近はお粗末な遭難事故が本当に多い」とぼやいていましたし。

ヘルメットは頭部の負傷から身を守る道具であり、それを装備することで安全性が上がることは間違いないでしょう。しかし、ヘルメットを持つことで、「自分は安全に配慮している」と勘違いした未熟な登山者が危険地帯に向かうようになるとしたら、危険登山を行うための免罪符となったヘルメットは、むしろ(恐らく数は多くないにせよ)遭難を増やす引き金となっている側面も否定しきれないのです。

 

父ちゃんの遭難救助話

クライミングを始めるにあたって、昔(ウン十年前)はバリバリ登っていた元クライマーの父から警告を受けました。

「いいか、岩場は本当に危ないから調子に乗るなよ。落ちた時に鋭い岩角に当たったら、ヘルメットなんて被ってても意味ないからな。俺が昔救助に行った時、その人は落ちて亡くなってたけど、落ちてく時に岩に当たってヘルメットごとスッパリ顔半分無くなってたぞ。その人の脳味噌をビニール袋に入れて持ち帰った」

山で何人かの岳友を亡くしている父からのリアル話でした。

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危険度の高いルートとして知られる北アルプスのジャンダルム。実際に遭難多発地帯です。そのジャンダルムの真下にある『αルンゼ』で見つけた割れたヘルメット。見つけた時には「なんだコレ?」ぐらいの感覚で軽く手に取ってみましたが、よく考えると脳味噌付いてた可能性がありました。

 

ヘルメットをしていれば、無いよりもそりゃ安全です。予期せぬ落石があった時に、頭を負傷から守ることが出来ます(他の場所に当たればもちろん怪我しますが)。デカイ岩が勢いよく落ちてきたりしたら、ヘルメットごと頭が割れるか、首の骨が逝っちゃうと思うので、過信は禁物です。

Point!

ヘルメットにとても大きな衝撃が加わると割れます

 

ヘルメットを買いましょうby売り手

ネットで登山用ヘルメットについて調べてみると、「安全登山にヘルメットは必需品」というサイト(記事)を数多く見かけます。→ヘルメットの必要性を語った後、「この商品を買え!」と特定商品のリンクが貼ってある場合も多いですね。

そう言えば何年か前、登山用品店で働く友人が、「最近はヘルメット着用が推奨されるようになったから、ヘルメット飛ぶように売れてて、結構単価も高いしオイシイ」と言っていたような。まぁ、売る側も買う側もハッピーならそれも良し。

買ってください。

 

安全登山のためには何が必要か

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「ヘルメットは落石などから頭を保護し、安全性を高める」という点については、全くその通りです。ヘルメット無しで落石が頭に当たった場合は、少なくもとも怪我をします。ヘルメットが無い場合よりあった場合の方が、怪我をする可能性は下がるでしょう。

しかし、ヘルメットを買う以外で、安全登山の為に配慮すべき点はそれこそ山のようにあります。

三点支持とか、岩場をバランス良く通過できる身のこなしを身につける方が、結局は滑落のリスクを下げられます。足腰を鍛えれば、疲労時でも岩場でフラついて転倒するリスクを下げられます。握力(保持力)があれば、多少滑っても鎖(岩)を保持することである程度は耐えられます。

金を出せばいい道具を買うことが出来ますが、人間は道具で山に登るのではなく自分の足(身体)で登っているのです。 高価な道具より、強い身体。

強い身体、確かな技術(知識)が、最強の山道具なのです。

その辺をしっかりした人が、ヘルメット被れば更に登山の安全性が高まります。


岩場の通過技術を向上させるなら、ロッククライミングやるのが一番手っ取り早いです。

クライミングジムとか講習会とかで、安全に配慮された環境で学ぶのが理想的。

 

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例えば、奥穂~西穂縦走(ジャンダルム登頂)のためには「どんな道具を買ったらいいですか?」ではなく、「どれぐらいの登山技術(経験)が必要となりますか?」という観点で計画できることが、結局は安全登山につながると考えています。

 

まとめ

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・ヘルメットは落石などから登山者を守るので、無いよりもあったほうが安全

・大きな落石や滑落時などは、ヘルメットごと頭が割れる可能性があるので過信は禁物

・一般ルートの岩場を通過する場合、ヘルメットを装着するよりも、確実な岩場の歩行や三点支持などの技術を身に着けた方がよほど安全に繋がる

・道具を揃えるよりもそのルートに見合った体作り(登山技術習得)を優先するべき

 

山のリスクと向き合うために 登山におけるリスクマネジメントの理論と実戦

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