【レビュー】ジェットボイル・フラッシュ【高効率ガスバーナーセット】

f:id:di82:20190427134329j:plain

「瞬間湯沸器」との異名(揶揄?)を持つ、熱効率型のシステムクッカー、ジェットボイル。その新作が、今回レビューするジェットボイル・フラッシュ(JETBOIL FLASH)です。「とにかく早く湯を沸かす」というジェットボイルのコンセプトを最も体現したモデル。果たしてその使い勝手はどうか、述べていきたいと思います。

 

JETBOIL FLASH レビュー

f:id:di82:20190124165553j:plain

 

スペック・パッケージ付属品

f:id:di82:20190124165537j:plain

本体(クッカー)の中にガス、ゴトク、スタビライザーなどを収納できるオールインワン型。

クッカーの容量は1L。500mlの水を1分40秒で沸かせるという驚異の熱効率を持つギアです。(通常型ジェットボイルの500ml湯沸かし時間は、2分30秒)。

f:id:di82:20190124165605j:plain

ジェットボイル・フラッシュのパッケージに付属しているモノ。

 

f:id:di82:20190410133542j:plain

メーカー公称値では重量は440g(ガス缶抜き)ですが、ガス缶込みの重量は583.5gでした。

 

外観&詳細ビュー

f:id:di82:20190124165612j:plain

湯沸かし可能な状態にジェットボイル・フラッシュを展開した図。

 

f:id:di82:20190124165529j:plain

上記に紹介したパッケージに同封しているアイテムが、クッカー(本体)の中に全て収納可能です。

 

f:id:di82:20190124165618j:plain

クッカーの底部に溶接されている『フラックスリング』(他社ではヒートエクスチェンジャーとも)。これがバーナーから出た熱を逃がすことなく効率的に捉え、少ない燃料(時間)で湯を沸かすこと可能にしています。

 

f:id:di82:20190124165625j:plain

ジェットボイルのバーナー、ガス缶、スタビライザーをドッキングさせた図。ここにクッカー本体を装着すれば完成です。

 

f:id:di82:20190124165645j:plain

 バーナー、クッカー共に専用品なので、正しく装着すれば(当たり前ですが)ピタッとくっつきます。

 

f:id:di82:20190124165701j:plain

f:id:di82:20190124165710j:plain

火力調整レバーは展開式(収納時はコンパクトに折り畳めます)。 

 

f:id:di82:20190124165639j:plain

付属のゴトク。コレを使用することで、一般的なクッカー(フライパン等)も併用することができます。

ただし、ジェットボイルのバーナーは、他社製バーナーと比べると火力が弱いので、ジェットボイル専用クッカー以外だと使い勝手はイマイチ。あくまでオマケ程度の機能と割り切った方が良いかもしれません。

 

f:id:di82:20190215155137j:plain

お湯がどの程度沸いているか(水温が上がっているか)を知らせてくれるインジケーター付き。

あっという間にお湯が沸いて吹きこぼれることもあるのがJETBOIL。水温が上がってきたことを知らせてくれるインジケーターは便利

水温が上がるごとに、黒→と色が変わっていきます。体感的に、沸騰直前ではなく沸騰前の8割ぐらいのところで完全に赤くなる印象です。

 

f:id:di82:20190410123021j:plain

フラックスリング(ヒートエクスチェンジャー)部分にライターを収納可能。一応本体にくっついているイグナイターで問題なく着火できますが、低温時など、イグナイターの着火機能が不安定になった場合に備えて保険的にライターを入れています。

他社製品との比較

私が所有している他の熱効率型クッカーと、ジェットボイル・フラッシュの比較を行ってみます。

f:id:di82:20190124165546j:plain

写真左が今回紹介しているジェットボイル・フラシュ。

写真右が、以前に記事を書いたジェットボイルのパチモンのDUG HEAT-I(ヒートアイ)。

収納時のサイズは、若干ジェットボイルのほうが大きめです。経はジェットボイルの方が若干スリムです。

 

f:id:di82:20190124165653j:plain

湯沸かし用に展開した図。収納時にはジェットボイルと大して変わらないのに、HEAT-Iでは250缶(容量の大きなガス缶)が中に収納できます。

燃料が効率的に使えるのは、ジェットボイルの強みではありますが、大きな缶が使えるということは、ガスをたっぷり・余裕を持って使えるということになります(その分重くなりますが)。どちらが良いかと思うのは、個人のお好み次第。

ひとつ言えることは、収納サイズにおいてはジェットボイルにそれほどの強みはなさそうです。

 

f:id:di82:20190410124517j:plain

ジェットボイル・フラッシュ(左)と、DUG HEAT-I+SOTO ウインドマスター(右)

1リットルの水を用意して、それぞれのクッカーに500mlの水を入れます。

 

f:id:di82:20190410124523j:plain

ほぼ同時期に点火して、沸騰までの時間を測定してみます。ちなみに室温は10℃前後。

※バーナーごとに着火したデフォルトの火力は違うし、最大出力も違うので、厳密な測定は不可能。あくまでも参考程度にとどめておいてください。

 

f:id:di82:20190410124531j:plain

着火から2分13分の時点で、ジェットボイル・フラッシュの水は沸騰しました。

公式だと「0.5Lの水を1分40秒で沸騰可能」とあります。公式とのアナウンスと実際に湯が沸いた時間の差異は、外気温・水温に影響されているために生じているものだと思われます。

 

f:id:di82:20190410124538j:plain

DUG HEAT-Iは2分52秒での沸騰となりました。ジェットボイルに比べたら沸騰時間は幾分か遅いですが、十分に健闘していると思います。

リアルなアウトドアフィールドでは、この時間差はそこまで大きくなさそうですし。

 

 

アウトドアでの使用

実際に何度もジェットボイル・フラッシュをアウトドアの環境(山)で使用してみました。

f:id:di82:20190410093052j:plain

休憩中にカップ麺やコーヒーのためにサッと湯が沸かせるのはすごく便利です。湯沸かしは快速

やはり暖かいものを口にすると、疲れが取れるような気がします。

 

少し難を挙げると、ジェットボイル本体にピッタリと収納されたバーナー、ガス缶、スタビライザーを出して組み立てて…と、湯を沸かす前の工程が、他バーナーに比べるとチョットだけ手間(本当にチョットだけ)。

「俺はさっさと湯沸かししたいんだよ!」という気持ちでジェットボイルを買った身としては、セットするのに他バーナーより多少手間がかかる(時間がかかかる)というのがどうも矛盾点。

しかし、組み立ての時間も含めトータルで見ても、やはりジェットボイルの湯沸かしは早いです。

流石は高速湯沸かし専用品。凝った料理を作らず、お湯さえ沸かせれば十分という人にとっては、「湯が湧くのが早い」という本機の割り切った性能はかなり魅力的なはずです。

 

冬季(谷)での使用

アイスクライミングの休憩中に、ジェットボイル・フラッシュを使用してみました。

場所は八ヶ岳の某所。日は当たらず、無風の場所。恐らく外気温は-12℃ぐらいでしょうか。

f:id:di82:20190215155112j:plain

イグナイターは問題なく使用できました。カチッと一発点火

 

f:id:di82:20190215155124j:plain

湯沸かしは問題なく、快速。

山ランチに来ているわけでない(食事に重点を置いていない)場合、カップラーメンやコーヒーを淹れるぐらいなら、お湯だけ沸けば十分です。その場合最も重要になって来るのが、ストレスなく使えることと、お湯がすぐに沸くこと。ジェットボイル・フラッシュは、その両条件を満たしていると感じました。

 

厳冬期の稜線上での使用

f:id:di82:20190215154551j:plain

2月の阿弥陀岳山頂でジェットボイル・フラッシュのテスト!

気温は-10℃以下、風速は10m/s以上でビュンビュン強い風が吹いている条件下でのテストです。

 

点火…何度かカチカチやっていると、イグナイターで着火できました。しかし、低い気温と風の影響もあってか、イグナイターの着火性能は不安定です。

 

防風性…火が付いても、強い風が吹いてしまうとジェットボイル・フラッシュの火はすぐに消えてしまいました。結果として、強風の山頂ではお湯をわかすことはできませんでした

 

現実的には…強風が吹き続ける中での調理を行うことは、低体温症のリスクを高めてしまうので通常はやらないと思います。ジェットボイル・フラッシュは強風下では使えませんでしたが、恐らく同条件で使えるバーナーはほとんどないと思われますし、現実的ではないので、このテストをして「ジェットボイルは悪条件では使い物にならない」というのは乱暴な結論かな、と。

 

f:id:di82:20190215154557j:plain

ちなみにヒートエクスチェンジャーは使用直後も熱を持っているので、お湯を入れた後など、不用意に雪面上に置いてしまうと熱で溶けた雪がくっつきます。

 

終わりに

オールインワンパッケージで、湯沸かしは快速。製品のコンセプトをしっかり理解していれば、ジェットボイル・フラッシュは素晴らしいモノだと思います。

 

ただし、ジェットボイル・フラッシュは本当に湯沸かし専用と割り切った方が良さそうです。一応料理もできますが、調理で汚れてしまったらネオプレンで覆われた本体を、カバーと金属製のクッカーに分けて洗わないといけなかったり、火力の微調節が苦手だったり、簡単に吹きこぼれてしまったり、凝った調理をするには使い勝手が悪いのです。

ジェットボイル クイックレシピ55 (mont‐bell BOOKS)

ジェットボイル クイックレシピ55 (mont‐bell BOOKS)

 

こういう本も出ていますが、以前からのジェットボイルユーザーで、料理好きの嫁曰く「載ってるメニューはあまり現実的ではない」そうです。

 

ジェットボイフラッシュは、こんな人にオススメです。

オススメ!

山での調理にはこだわっていない

バーナーはお湯を沸かすぐらいにしか使わない

なので、早くお湯を沸かせるバーナーが欲しい

 

用途がしっかりしていれば、ジェットボイル・フラッシュは良い製品です。「コレひとつで何でもしたい!」みたいな夢を持って、はじめてのバーナーとして選ぶなら、プリムスのP-153とかSOTOのウインドマスターみたいな汎用性の高い製品の方が良いのかも。

 

 

 

 

 

こちらの記事もどうぞ

www.dimountainphotos.com