【パタゴニア】マクロパフ・フーディのレビューなど

 

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ダウンに迫る保温力を持った化繊のインサレーションジャケット、パタゴニア(Patagonia)の『マクロパフ・フーディ』を購入して何度か使用してみたので、その感想などを書いていきたいと思います。

 

2017年、『プルマフィル』というダウンに迫る保温力を持った化繊の中綿を使った保温着の『マイクロパフ』シリーズが発売され話題となりました。マイクロパフは確かに高性能なウェアでしたが、そもそも使われている中綿の量が少ない(65g)だったのもあり、真冬にアウターで使うのは厳しい印象でした。そのため、プルマフィルを使用した冬用の保温着の登場が、一部の人々から待ち望まれていました。

そして登場したのが、今回紹介するマクロパフ・フーディです。さてその実力はどうなのか、紹介していきます。

 

Patagonia Macro Puff Hoody

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スペック・特徴

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パタゴニア・マクロ・パフ・フーディの特徴は以下に

マイクロ・パフのロフトをさらに増し、温度計の目盛りを1つ上げた保温性を提供。耐水性を備え温かく、化繊のメリットをすべて備えたダウンに代わる画期的なプルマフィルのインサレーション入り。フェアトレード・サーティファイドの縫製を採用
画期的なハイロフトのプルマフィル・インサレーションはダウンの構造を模倣する連続した化繊のインサレーション素材で、ダウンのように格別に温かくコンパクトに収納できるうえ濡れても保温性を維持
シェルと裏地:0.8オンス・10デニール・リップストップ・リサイクル・ナイロン100%。DWR(耐久性撥水)加工済み。身頃のインサレーション:ポリエステル100%の135グラム・プルマフィルサイドパネルと袖のインサレーション:90グラム・プルマフィル
434 g (15.3 oz)

パタゴニア公式より

 

詳細ビュー

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保温性を重視し、腰までカバーする長めの丈

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ボリュームのあるフード

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フードは勿論ヘルメット対応です

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内側の両サイドに大型のグローブ収納用ポケットあり

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グローブ着用中でも摘みやすいコード付きジッパー

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ビレイに役立つダブルジップ仕様

使用者がストレスなく着用できるよう、パタゴニアのこだわりが随所に感じられるデザインとなっています。

まだまだこまかいポイントはたくさんありますが、ひとつひとつ取り上げているときりがないので、公式の動画でも参考にしてください。


メンズ・マクロ・パフ・フーディ:パタゴニア

 

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生地はかなり薄め

薄いナイロン生地(10デニール)を使っているのもあり、マクロパフフーディは軽量です。軽量性と耐久性はだいたいトレードオフなので、岩にガリガリ擦れたら案外簡単に穴が空いてしまいそうな生地感です。これは軽さ故に仕方がないと思っています。

 

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収納サイズの比較

左から、マクロパフ・フーディ、フィッツロイ・ダウン・パーカ、マイクロパフ・ジャケット、ナノパフ・フーディ。どれもXSサイズ。

マイクロパフの時も感じましたが、中綿にプルマフィルを使ったジャケットは、重量は軽いのですが収納時には意外と嵩張ります。

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収納サイズは大きいですが、付属スタッフサックにはまだまだ余裕があります

マクロパフ付属のスタッフサックは結構大きめな作りなので、実際にはもうちょっと小さく圧縮可能です。

 

※パタゴニアの保温着についての別記事※

www.dimountainphotos.co

 

マイクロパフとの比較

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マクロパフ(左)、マイクロパフ(右)

同じプルマフィルという中綿素材を使ったより軽量なマイクロパフというジャケットもあります。

マイクロパフはロフトが抑え目なので、アウターとインナー両対応。寒い日は、アウターの中に着込んで行動することができますし、夏の高山などの停滞時ではアウターとして羽織ったりと、状況に応じた使い分けが可能です。

対してマクロパフはボリュームのあるジャケットなので、インナーには不適。完全なアウター用のジャケットです。ダブルジップ仕様なので、寒冷地でのビレイ(ロープによる確保)もバッチリ。過酷な冬山でのクライミングや停滞・ビバークに対応したウェアということででょう(中の人が対応できるかはまた別の話)。

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マクロパフ(左)、マイクロパフ(右)

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マイクロパフはインナーとしても使えます。

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マクロパフも一応インナーにすることは出来ますが…

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かなりパツパツになる上にロフトも潰れるので、実用的ではありません

 

ちなみにマクロパフマイクロパフよりも暖かいことは確かですが、フィッツロイ・ダウン・パーカなどのダウンがモコモコ入ったジャケットよりは保温力はが劣ります。

マクロパフ・フーディは、ダウンと同程度の保温力を持つプルマフィルという化繊の中綿が135g封入されているという話ですが、例えばダウンが200g入っているダウンジャケットがあれば、より多くの羽毛量が入ったジャケットの方が暖かく感じます。

マクロパフは優れた保温着ではありますが、決して最も保温力が高い製品ではないということに注意が必要です。

 

冬山での使用

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重量に対する保温力は、ダウンとおおよそ同程度という印象です(同じ重さ・ダウン量のウェアと同じぐらいの保温力)。しかしダウンは品質によってランク分けされているので、1000フィルパワーダウン(最高級品)とかだったらダウンのが保温力は上か。1000フィルのダウンは着たことないので厳密に比較できませんが…。

日帰りで雪山に登る場合、自分は基本的に風の強い稜線上など、体温が大きく奪われそうな場所で長時間の停滞はしないので、日帰り登山であったらマクロパフほどの保温力があるものではなく、軽量ダウンなどの保温ジャケットがあれば十分と思っています。持っていくだけで使わないこともあるので(あくまでも個人的な選択ですが)。

マクロパフはロフトが高くてモコモコしているので、アウターで行動中に着るとかさばって動きにくいし、インナーにしてしまうと中がパツパツになって、これもまた動きにくい可能性。停滞時に上から着ることが基本なウェアです。

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山頂で天候回復を待つ間に着用

 

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テント泊の場合、冬場はテントのウォール部分が必ずと言って良いほど結露します。そのままストーブを着けるとテント内の気温が上がって、結露が水滴となり触れたものが濡れてしまいます。

しかし、一泊程度のテント泊であれば、ダウンの中まで染み込むほどに結露で濡れる場面はよほどありません(自分の場合は)。

数日間ウェットになる環境で使用を続ける場合、濡れても保温力が落ちない化繊の方がパフォーマンスが落ちないので、連泊する場合にはマクロパフだと手堅く、安心ですね。

 

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雪洞やイグルーで泊まる場合、四方が雪で囲まれた環境となります。湿度も高くなるため、装備が濡れるリスクや濡れても乾かない可能性もあります。従って、ダウンウェアよりも濡れても保温力が落ちない化繊を使用したマクロパフの方が安心感があります。

かといってダウンが絶対に駄目という訳ではなく、過去にダウンウェアを使用した時も特別不自由した記憶はありません…。濡れるのに弱いと言われるダウンジャケットですが、表面が湿ることよくありますが、ロフトが潰れるとこまで羽毛が濡れる場面は冬山ではそうそうありません。

 

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山小屋泊の場合、小屋の中はストーブが炊いてあって暖かいので、マクロパフほどの保温性は不要な場合も(寒がりな人の場合は知りませんが)。テントと違って結露に触れる場面もなくて、室内でウェアが濡れないように気を使うこともないです。

そこまで寒くもなくて濡れないので、マイクロパフのような軽量の化繊か、軽量ダウンで十分かも。山小屋泊の山行ではマクロパフである必要性は高くないと思います。

 

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雪の降りしきるなかで緊急ビバークとなった場合は、雪まみれになってじわじわと体温を奪われていく可能性があるので、マクロパフのような、化繊のジャケットの方が安定して保温してくれそう。

実際に冬山ビバークでダウンとマクロパフを着比べた感想ではないので、あくまでも予想の話ですが。

 

フリークライミングにて

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ロッククライミングは雨の日にはやらないので、化繊の長所である耐ウェット性能は基本的に不要。

寒い時期にじっとビレイすると冷えてくるので、マクロパフの保温性はありがたいです。しかし、保温性だけを期待するのであれば、ダウンで十分といえば十分。

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登った後は手にチョークついてるし(場合によっては血も)、クライミングに着たウェアは確実にどこかにチョーク汚れが付着すると思われます。

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ジャケットが汚れたとしても、ジャブジャブ気軽に洗濯できるのは、中綿が化繊であるマクロパフのメリット。ダウンだと乾かす時に偏らないように…とかちょっと気を使わないといけなかったするので、ちょっと洗うのを躊躇してしまうことがあるのです。

 

アイスクライミングにて

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アイスクライミングのシーンでは、滝が凍るような氷点下でも、水しぶきが飛び散っている場所があります。

基本的に水がかからない場所で登ったりビレイしたりするのですが、どうしても多少濡れてしまう場面も多くはないにしろあったりします。

そんなときにはやはり、濡れるとロフトが潰れてしまうダウンより、ウェットになっても安定して保温力を提供してくれる化繊の保温着が安心感があります。

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かといってダウンが駄目というわけでは全然なく。アイスクライミングの保温着として、ダウンは主流派です。

 

街着として

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寒い季節のビレイ(ロープによる確保)用のパーカとしてデザインされている感の強いマクロパフ・フーディ。ハードシェルの上から羽織れるようなサイズ感なので、腕や胴回りがゆとりのある大きさになっています。スタイリッシュに着こなすというシルエットではないです(この辺は個人の好みも大きいので良い悪いは別として)。ダウンはシルエットが太くなるから…という方には細目のマイクロパフシリーズをオススメします。

マクロパフは保温力がかなり高いので、東京の都市部など、それほど冷え込まない地域では、活躍の場面は少ないかもしれません。これは人にもよりますが。

私が住んでいる長野県内では、真冬は-10℃ほどまで冷え込むことがあります。そのような寒冷地の冬では、薄手のダウンウェアを着ても寒く感じます。冷え込む場所にお住まいの場合は、マクロパフは普段着としても活躍します。

ただし、ハードシェルの上から着れるサイズ感なので、シャツ一枚の上に羽織ると隙間風が入ってきて、意外に寒いこともあり、インナーと合わせてサイズ選びには注意が必要です。それは山で使う場合も同じですが…。

 

まとめ

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ダウンは濡れると保温力がなくなる。化繊は濡れても保温力は落ちないが、ダウンよりも暖かさで劣る。そのことから、「ダウンと同等の保温力を持つ化繊」の登場は、一部のアウトドア愛好家から長く待たれていた存在です。

プルマフィルというダウンに迫る保温力を持つ化繊が135g詰め込まれたマクロパフフーディは、ダウンか化繊か論争(?)に終止符を打つ存在となるかもしれません。

一方で、使用場面をそれぞれ見てみると、必ずしもマクロパフでなければならない場面は正直言って限定的です。気温が低い→水は氷か雪になるので、ダウンが中まで濡れる可能性はそれほど高くありません。今まで冬はダウンウェアで十分保温できてたわけだし。

濡れる場面が冬のアクティビティではそれほどないとは言っても、低体温が死に繋がる可能性のある冬季は、少しでもリスクの低い選択をしたくなるのも人情。化繊の進化に伴って、そのうち「ダウンは濡れると保温力が下がるので、アウトドアで使うのには向いていない」と言われる時代がくるのかも知れませんね。

単純に物欲で欲しい? それは病気なので買って治しましょう!

 

パタゴニア・メンズ・マクロパフフーディ

 

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追記:2021年Fall/Winterもでるから、マクロパフのフロントジッパーがダブルからシングルに変更となりました。これによって、マクロパフはビレイパーカというよりは寒い時の保温着になった印象です。

ビレイパーカといえば、同時期に復活したDASパーカとの棲み分けのためでしょうか…。

う~ん、これは個人的には良くない変更点です…。

 

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