瑞牆山のマルチピッチクライミングルート、大面岩左稜線に行ってきました。
場所:山梨県 瑞牆山
登山日:2020年9月30日
登山タイプ:マルチピッチクライミング
メンバー:ディーアイ、オタキ
瑞牆山 大面岩 左稜線
ルート概要
「瑞牆本」こと瑞牆クライミングガイド(上)を参考にしました。
瑞牆山最大規模の一枚岩が大面岩。その左側に引かれたルートが今回登った『左稜線ルート』です。
瑞牆のマルチピッチの中では珍しく、ボルト主体で登ることができるルートだそうです。
ルートグレード、全10p、最高ピッチグレード5.10c、登攀距離245m
アプローチ
瑞牆山自然公園を目指し、大駐車場手前のウッドチップの駐車場に車を停めました。
チップの駐車場からパノラマコースへ。パノラマコースは旧登山道で、山と高原地図には載っていませんが、多くのクライマーによって今も歩かれているため道はしっかりしています。
大面岩への正式なアプローチはパノラマコース沿いにしばらく行くのですが、途中でボルダーの踏み跡に入ってしまい、少々道を間違えたようでしたが強引にパノラマコースに復帰。
パノラマコースに復帰したところは、ちょうど大面岩の真下あたり。
それから瑞牆本のアプローチ解説にあるように、30mほどの苔っぽい岩を(下から岩を見上げて)左にトラバース。
初見だったこともあり、そのあと取り付くルートをミスってしまいました。
リッジっぽいスラブを左に見ながら登る。
取り付きの上にチムニーがある…ということで、コイツを目印のチムニーだと勘違い(本当の取り付きの上にあるのはダブルチムニー)。
適当な踏み跡から岩尾根の上に登って、さぁ登攀開始と意気込みたいところですが、なんか違和感が消えない…。
振り返ると大面岩と、今いる場所はちょっと離れているし、上の写真左側に見えているのが左稜線なんじゃないか?と言う気分になってきたので、登りかけた岩尾根を一旦降りて取り付きを探すことに。
来た道を少し戻って、コケっぽいスラブを左手に見ながら登ると…。
瑞牆本に記してあったようなダブルチムニーを発見。先程はやはり取り付く箇所を間違えていたようだ。違和感は大事!
仕切り直してクライミングの準備を整えます。
げっ、これから登ると言うのに、嫌なものを見つけてしまった…
クライミング
1p目はコケの生えた登攀意欲がわかないスラブ。多くの再登者と同じようにこのピッチは省略し、2p目から取りつきました。
ここが左稜線2P目に繋がる本当の取り付き。
適当に岩尾根に乗り上げると、トポに書いてあった通り、2本のリングボルトを発見。簡単なスラブを登っていき、土っぽいルンゼの立ち木でピッチを切りました。
2P目終了点は適当な立木にスリングを巻いて作りました。強度的にはもうちょっと下にあった生木の方が良かったかも。
2P目をフォローで登ってくるオタキ氏。
3P目はオタキ氏リード。最初は木登り。半分は歩きでフリークライミング的ではないワイルドなピッチ。
3P目途中から。視界が開けて瑞牆のマルチっぽい景色になってきました。
3P目終了点は、ここよりもうちょっと下にある土のテラスで良かったかも。次はトラバースだし…という話になりましたが、まぁ初見だし下調べはそこまで厳密にやっていなかったので仕方ない。
4P目、ディーアイがリード。小川山セレクションにあるような高度感のあるトラバース。5.10aというグレードでしたが、足はダイクで拾っていけばいいし、グレードよりも簡単に感じました。念のためキャメロット#2使用。
4P目をフォローで進んでくるオタキ氏。トラバースするだけなので、すぐに終わるピッチ。ルートが蛇行しているので、次ピッチをリンクするとロープの流れが悪くなりそうだったので、無難にここでピッチを切りました。
5P目を下から見上げる。今回のルートで最難の5.10cがついたピッチ。「右が切れ落ちていて怖い」と他のブログに書いてあったりしますが、その場に立ってみると確かにと納得。写真では伝えきれない高度感があります。
5P目はオタキのリード。6P目もリンクして登ろうかという話もでましたが、ヌンチャクの残数とかにちょっと不安があったので無難にトポ通りにピッチを切ることに。
私はフォローで登りましたが、思い切りとバランスが要求される内容で、そこまで難しくはないのですがなかなかにスリルのあるピッチだと思いました。
5P目終了点はのんびり休める広々としたテラス。水を飲んだり行動食を食べたりして休憩。
ハイライトとなる6P目。グレードは5.10b
最初にボルダーを左側から登ってから1ピン目にクリップ。スラブとフェースの中間のような傾斜の壁を、右側のカンテも交えながら登ります。
ピンは適度にあるとは言っても、中にはサビたリングボルトもあるので、これらを足元にしながら細かいホールドを拾っていくのはなかなかスリリング。
登りきって取り付きあたりを見下ろしたところ。巨岩に囲まれた中を登っていくという瑞牆ならではのロケーションが素晴らしい。
フォローで6P目を登ってくるオタキ氏。
7P目はオタキ氏リード。高度感の中、足をスメアリングしながらの左へダウンクライムを交えたトラバース。比較的まともなボルトにクリップしてから出られるが、ここもリードだと怖そう。フレーク状のガバを掴んでしまえば一安心。
7P目後半は、フリクション勝負のスラブ。ボルトがリングボルトなので落ちたくない。ここはフォローすることになって良かったな、と内心思いました。
7P目終了点はボロいRCCボルトだったので、オタキ氏はもうちょっとロープを伸ばして自前の長スリングをピナクルに巻いて終了点を作っていました。
8P目は単なる歩き。樹林帯に入ってから踏み跡は2手に分かれるので道間違い注意。両サイドが岩に囲まれた場所で、適当な木で支点作成。
9P目。両サイドの岩壁が狭まったところを登っていく。ワイドに苦手意識を持っていたので、弱点克服のためここは是非リードさせてくださいとディーアイがリード。
前半は背中&膝&踵でフリクションを掛けながら登っていけば落ちないので、とりあえず落ちないようにゆっくり登っていきました。このピッチは短い間隔でボルト(殆どはリングボルトですが…)があるので、NPはほとんど使わず。
後半は身体が半分入るか入らないか、微妙なサイズのオフウィズスで登りにくい。休めるところで休みながら、なんとか落ちずに登りきれました。
フォローで登ってくるオタキ氏。ザックが引っかかって登りにくそうだったので、途中でザックにロープをくくりつけて荷揚げしました。
岩に身体をズリズリ擦って登ったのですが、気づいたらズボンのポッケに穴が開いていました。
10P目はおまけのようなほぼ歩きのピッチ。
どこでピッチを切ったら良いのか分からず、とりあえずチェンジして歩く。
広場にあった立ち木にスリングが何重にも巻かれていました。ここが左稜線ルートの終了点っぽい。
大面岩左稜線ルート終了。行動食を食べてしばし休憩。
登頂&下降
「山頂付近に下降点がある」ぐらいの情報しか持っていなかった我々は、下降路探しでちょっと迷いました。周囲をウロウロしてから、とりあえず大面岩の山頂に行ってみるかということで、アプローチシューズを履いたまま、ごく簡単な一手もののクライミングを経て山頂へ。
大面岩山頂からは、十一面岩方面がよく見えました。
ちょっと怖い歩きを経て、大面岩山頂部の隅っこへ移動。そこにあった立派なラッペルリング付き終了点を利用し、懸垂下降。後に調べたらここはパノラマックスというルートの終了点だったみたいです。
地面に踏み跡がついている箇所まで、25mほどの懸垂。
写真じゃ伝わりにくいですが、明らかに人が歩いている跡があったので、踏み跡を辿って大面~小面のコル方面へ。
ある程度下ると、山頂方面から続くフィックスロープに出くわす。メジャーな下降路はこちらのフィックス沿いだったみたい。この地点から小面のコルへと続く踏み跡はもっと明瞭に。
大面岩・小面岩間にあるコルに出ました。ここから小面新道を下り、パノラマコースへ。
大面岩左稜線の取り付きに置いてきたザックを回収。
パノラマコースを快調に下山し、植樹祭広場をへて駐車場へ。
本当は時間に余裕があったらショートルートでも登ろうかと画策していたのですが、取り付きで迷い、下降路で迷ったのもあり、駐車場に戻ってくる頃には陽の傾いた時間になってしまいました。
それでも終始天候にも恵まれ、楽しいクライミングができ。無事に下山することができました。パートナーのオタキ氏に感謝です。
安全性について
大面岩差稜線は全ピッチを通して、ルート上随所にボルト類が埋め込まれており、登攀時にはクイックドローだけ(カム類不使用)でも登れないことはないです。
しかし、そのボルト類の多くはウン十年前に打たれたであろうサビだらけのリングボルト。強度面では不安が残るので、安易な墜落は避けたいところ。ボルト間隔においても、短い間隔でボルトがあるピッチもあれば、現代のスポートルート比で「ちょっとしたランナウト」といった場面もなくはないです。
キャメロット#0.4~#3を一応持っていきましたが、全ピッチを通して各サイズをそれぞれ1回ずつ使ったぐらい。古いボルトよりは、きっちりセットしたカムの方が安心感は断然上なので、安全性をより高めるためカム類も一応持っていった方が良いのかな?と思っています。
装備
共同装備
ダブルロープ50m×8.5mm
アタックザック(フォローが担ぐ)
クイックドロー4本とアルパインヌンチャク6本(リンクする場合はもっとあっても良いかも)
120cmスリング×3本
180cmスリング×1本
キャメロット(カム)#0.4~#3を1セット
ビナ幾つか
トポのコピー
個人装備
ハーネス
ヘルメット
クライミングシューズ
アプローチシューズ
保温着
ヘッドライト
水分
行動食
ビレイデバイス&グローブ
カメラ
スマホ
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