静かな冬の高山が楽しみたくて、中央アルプスの木曽側にある地味ピークを目指した時の記録です。日帰り可能で、それなりに雪もあって、眺望が良くて、人気がないという条件を満たした行き先で、良き山でした。
場所:長野県、中央アルプス、木曽地域、麦草岳
登山日:2021年1月20日
登山タイプ:雪山登山
メンバー:ディーアイ(単独)
積雪期(1月)の麦草岳
麦草岳概要
麦草岳(むぎくさだけ)は標高2,733m。長野県の中央アルプス(木曽山脈)にある山です。
かの有名な、千畳敷ロープウェイがあるのは中央アルプスの伊那側で、大多数の登山者は伊那谷から中央アルプスへと登っています。一方山を挟んでその反対側、木曽側から登る中央アルプスでは、登山者の姿を見かけることはぐっと少なくなります。
その中央アルプスの木曽谷側にあるピークが麦草岳。中央アルプスの主脈からはちょっと離れており、周囲の山々から見れば標高は低めで影に埋もれてしまいがち。ナントカ名山に選ばれてもいないので、目立つ要素はありません。アクセスに関して木曽側では比較的容易で、コースタイムも標高の割には手頃ですが、その地味さ故にあまり話題になることがない不遇の山です。
出発~避難小屋まで
木曽駒高原のスキー場跡地にあるコガラ登山口にある駐車場を利用。数日前に降雪があったので路面状況を心配していましたが、一部凍結路はあったものの駐車場まで除雪されており、スタッドレス&4WD車で問題ありませんでした。
駐車場に他の車は無く(後で1台来ましたが)、全行程ラッセルになると時間がかかるので暗いうち(5:45)にヘッドライトを点けて出発。
全く期待していなかったトレースがあったので、途中までは楽して進めました。
一人分のトレースは、登山道方面ではなく幸ノ川に向かっていました。幸ノ川の冬季遡行者(アイスクライマー)か…。
幸ノ川から先の登山道からはトレースがないので、ラッセルが必要。膝下ぐらい。雪が軽いのでしばらくはツボ足で。
4合目の標識。コガラ登山口が2合目で幸ノ川渡渉点が3合目?といった感じでしょうか。
ワカンを装着したらすぐに下山者(1人分)のトレースと合流してしまいました。
下山者のトレース。正規の登山道からは外れています。登山道ではない印(黄色のテープ)に導かれている様子。幸ノ川を登りきった人が下山に使ったものと推測されます。スキー場から麦草岳に向かうルート(福島Bコース)は、登山道を示すピンクのテープ以外に、登山道から離れたところに謎の黄色テープもあるのが紛らわしいです。無雪期ならそうそう間違えることはないと思いますが…。
下山者のトレースに助けられ、ワカンを脱いで軽快に登っていけます。ようやく陽が当たってきてくれて癒やされます。木曽側は陽が当たるようになるまで時間がかかる。
木々の合間からは清々しい青空が覗いていますが、基本的にはあまり代わり映えのしない登山道を淡々と登っていきます。
今回は日帰りなので避難小屋利用はせず。平地と比べらたら当然雪は多いですが、それでも1月の後半と考えると雪は少な目です。
山頂へ
幸ノ川を遡行していた人のトレースは避難小屋の上からは付けられていなかったので、これから先の行程は完全にラッセルとなりました。
「どうせすぐ森林限界超えて雪は締まってくるだろう」と、今考えると甘い考えのもと、しばらくはツボ足で頑張りました。
白い雪に包まれた清々しい道…なのですが、脚が半分雪に埋まっているので遅々として進まず。
しばらく雪の中をもがいていたら、この日麦草岳を目指していたもうひとりの登山者が追いつき、ワカンを履いて先行してくれました。自分もようやくワカンを履いて、お互いに協力してラッセルしながら山頂を目指します。
標高を上げていくとやがて木々が疎らに。雪が軽くてハイマツ等を踏み抜くので非常に歩きにくい箇所がありました。
山頂のすぐ近くにある『駒石』にて、雷鳥に遭遇。中央アルプスで雷鳥を見るのは初めてです。乗鞍岳から繁殖のために連れてこられた個体でしょうか。中央アルプスの主脈からいくらか離れたこの場所で、雷鳥に遭遇するとは思ってもいませんでした。
駒石から歩いていくと程なくして麦草岳の山頂に到着です。アイゼンを持ってきましたが、雪は固くなかったので山頂までワカンを装着したままでした。
一応標識のあるところが麦草岳の山頂ということでしょうが、山頂標識からほど近いところにもうちょっと標高の高いところがあります(上の写真の右側)。標識のところで終わりにしても登ったことにはなるのでしょうが、自分にとっての山頂は標識のある場所ではなく一番高いところという思いがあったので、麦草岳の最高点(?)を踏んでおくことにしました。
麦草岳最高点から。画面中央やや左にある牙岩が迫力あります。顕著なピークは左から木曽駒ヶ岳、木曽前岳、三ノ沢岳。木曽駒と木曽前岳の間に宝剣岳も見えています。
写真中央の尾根に沿って、左側にある開けた場所(スキー場跡地)を目指していきます。
避難小屋まで戻ってきました。13時ごろなのですが、もう影になっています。快適そうな避難小屋ですが、冬ここに泊まるとなると、日照時間が短くて結構寒いかもしれません。
淡々と下って、登山口まで無事に戻ってきました。山中で人に会ったのは予想外でしたが、ラッセル交代しながら登れたので助かりました。静かで展望も良かったので、冬の麦草岳は十分に楽しめました。
暦の上では大寒で、季節的には真冬と言ってもいい時期なのですが、この日は高気圧に覆われて天候は安定していました。ラッセルになったといっても、例年よりも中央アルプスの積雪は少なかったです。そのため、厳しさを連想させる『厳冬期』という表記はあえて使用しません。
装備
ワカンとストックが活躍しました。
今回の山行で使用したカメラとレンズの記事。
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