登山に欠かせない装備のひとつであるザック(バックパック)。これまで自分が使用してきたザックのレビューをしていきたいと思います。
ザックは人によって求めるものが違いますし、フィット感などはかなり個人差も大きいと思うので、あくまでもひとつの意見として参考程度にしてください。
今まで使用した登山用ザックのレビュー
ドイター アクトライト40+10
【購入の動機】
記念すべき、最初に買った登山用ザック。
何も分からないまま登山用品店に行き、日帰りメイン+写真撮影が趣味(カメラ・交換レンズも持っていく)と伝えたところ、店員さんからおすすめされたもの。
【感想・評価】
名前にライトと付くだけあって生地が薄く、登山初心者でそこまでハードに使ったわけでもないのにあちこちに穴が開いてしまいました。
また、ショルダーハーネスの位置を変えて背面長が調整できるシステムがあるんですが、ショルダーハーネス固定用ベルクロに遊びがあって、身体を振った時にザックが左右にぶれて安定感に欠けます。
上記2点がどうしても気に入らず、約1年使ったあとに処分してしまいました。
ドイター自体はヨーロッパでシェアも高く良い物も作っていると思うんですが、このザックが個人的に合わなかったせいで、ドイターのザックは購入候補には入らなくなってしまいました。
カリマー フライヤー50-75
【購入の動機】
テント泊山行を始めるにあたって、登山用品店の店員さんに相談したところ、70L以上容量が入るザックを買うことをおすすめされたので購入。
当時は大型ザックを選ぶ個人的な基準もなかったので、なんとなく見た目が気に入ったという理由で選びました。
【感想・評価】
「50-75ってことは容量に合わせて拡張できるからお得じゃん」 と買った当時には思ったんですが、左右のポケットに色々物を詰め込むとこのザックは変に横に膨らんで醜くなります。容量が拡張できるといっても、実際に拡張してみるとバランスが悪い感じになってしまうのがマイナスポイント。
それ以来、ザックの容量の数字+10とか+20とか書いてあるものは信じなくなりました。
加えて、店で背負った時点では気付かなかったんですが、重い荷物を背負って長時間歩くと、身体のあちこちが痛くなってきました。
母親は「私は昔カリマーのザック買ったけど、イマイチだった」と言っていたので、カリマーが身体に合わないのは親譲りなのかも知れません。
結局テント泊山行で数回使用しましたが、どうも身体に合わない感じがして、すぐに使わなくなってしまいました。
グレゴリー Z40
【購入の動機】
日帰り登山用(山小屋泊にも使用)のドイター アクトライト40+10がイマイチ過ぎたので、その後釜として購入。
店にある40L前後のザックを背負った中で、一番しっくり来たモデルです。
【感想・評価】
店で試着した時から、背面やショルダーハーネス、ウエストベルトのフィット感も良好な感じ。「ザックの合う合わないでフィット感ってこんなに違うんだ」と目からウロコでした。
このザック、フロントポケットが付いているんですが、意外とたくさんの物が入って便利です。
両サイドにはメッシュポケットがあり、ペットボトルなどを入れていました。しかしその素材がメッシュという関係上か、メッシュが知らず知らずの間に何かに擦れて破れ、穴が大きくなっていることが幾度か。ペットボトルが落ちるほどの大きな穴が開く気配はなかったので無問題でしたが気になった点でした。
一応このザックは2気室なんですが、下の気室は小さすぎて使い道が微妙でした。メーカー曰く、寝袋を入れるところだとか。このザックに寝袋を入れて泊まりに行ったことは遂になかったです。
特に大きな不満点もなく、しばらくの間日帰りのメインザックとして活躍してくれました。
Z40の後継機がZULU40となるようです。
マウンテンダックス ラトック70+
【借りて使用】
テント泊用としてはじめて買ったザック、カリマーのフライヤー50-75があまりにも合わず、かといって値段の高い大型ザックをすぐに買い換える予算もなく、悩んでいたところに、使われていない大型ザックが実家に置いてあるのを見つけました。
それがこのザック。父親が買った言っていましたが、まだほとんど使っていないとのこと。借りて使うことになりました。
【感想・評価】
マウンテンダックスは、元値も安いしワゴンに入っているところを何度か見ていたので、安かろう悪かろうな印象がありました。
しかし、荷物を入れて背負ってみると意外にもバランスは悪くない。むしろ、カリマーのフライヤー50-75と比べて、個人的には抜群に背負いやすかったし、長期間歩いた後でも疲れは断然少なかったです。
少し前のモデルだけあって、無骨な分厚い生地は頑丈で頼りがいがありました。
1週間近くの長期縦走から雪山でのテント泊山行まで、荷物の多くなる山行で活躍し、結局2年近くも借りっぱなしでした。
モデルチェンジしたラトックです。相変わらず安い…。
ザ・ノースフェイス プロフィット52
【購入の動機】
赤岳鉱泉に展示してあったこのザックのデザインに一目惚れして購入。
購入の際の言い訳としては、「持っている40Lと70Lのザックの間を埋める容量のものがあれば色々便利なんじゃないか」ですが、選んだ理由はほぼ見た目です。
【感想・評価】
テント泊を始めた初期の頃は、75Lまで入るカリマーのフライヤーでも容量いっぱいでパンパンでした。
山で2年ほど経験を積んできたこの頃には、必要な物の取捨選択ができるようになっており、1泊2日程度のテント泊登山なら、メーカー公称容量60L(Mサイズ)のこのザックで十分事足りました。
むしろ、自分の場合は単日休みか2日休みがほとんどで、3日以上続けて山に入れることは年に1~2回しかなかったので、これ以上の容量が入る大型ザックの出番は年に数回だけでした。
装備を厳選して効率化すれば、厳冬期でも1泊2日であればこの容量でテント泊用の装備が何とか入ったので、主に1泊2日の山行でオールシーズン大活躍でした。
ヤワな作りのザックではなかったですが、それなりにハードに、結構な回数を使用したので、最後にはボロボロになって、あちこちの縫い目がほつれて背面も剥がれかけてしまったので泣く泣くお別れに。
「壊れたら同じものをまた買う」と思うぐらい気に入っていたんですが、壊れた頃にはこのモデルは廃盤に。残念でなりません。
プロフィットの後継モデルが『コブラ』です。特にこの白モデルが良さそうです。お値段高めで買うのに少しためらってしまいます。
ホグロフス ロックアイス35
【購入の動機】
臨時収入が入った時に、セールになっていたザック。前述のプロフィット52でクランポンポケットなどの雪山向けの機能が便利だったので、雪山での日帰り用のザックとして購入。
購入動機のほとんどは、単に「見た目がカッコよかったから」だけだったりします。
【感想・評価】
手袋をつけたままでも扱いやすいようにつまみが付いていたりと、冬山・クライミングのための機能が充実。シンプルな1気室ですが、生地が丈夫で分厚いので、今時のザックで35Lの容量としては比較的重めです。
買った当時は、見た目はいいけど軽くなくてゴツイので、結構持て余し気味でした。使用頻度はそこまで高くなかったです。
クライミングと名の付く遊びに手を出し始めたころから、このザックの個人的評価は急上昇。
多少岩にこすれても、ラフに扱ってもビクともしない耐久性。クランポンポケット、ダブルアックスをガッチリと固定できるバックル、安定したロープ固定ができる二本締めの雨蓋…アルパインクライミング、アイスクライミング等ではかなり使いやすいです。
一気室でサイドポケットはなく、ウエストベルト周辺のポケットもなくて、人によっては小物の収納に困りそうですが、雨蓋の容量が結構あるので個人的には問題なし。
このザックは現在販売終了となっています。
最近(2018年3月現在)のホグロフスのザックは、どうも個人的に惹かれるところがないような気がします。
ブラックダイヤモンド ボルト25
【購入の動機】
登山も経験を重ねてくると必要な装備の取捨選択ができるようになってきて、日帰り登山だと40L前後の容量では大き過ぎると感じるようになってきました。
主に夏。春~秋など装備が少な目になる時期の日帰り用途で購入。
【感想・評価】
シンプルでそこそこ軽量。
フロントポケットは収納できる容量が結構少なく、あまりまともに使えなかった記憶が。
一本締めの雨蓋は、開け閉めする時には二本締めと比べて少しだけスピーディでしたが、個人的にはあまりしっくりきませんでした。ザックに入っている容量が少ないと、二本締めより一本締めのザックの方がなんとなく不恰好に見えます。
S/MとM/Lと2サイズの展開でしたが、何を思ったのかM/Lサイズを買ってしまい、なんとなくフィット感に欠けたまま使っていましたが…そのうち使わなくなってしました。
今では実家の棚に収納したままとなっています。
グレゴリー パリセード80
【購入の動機】
父親からマウンテンダックスの大型ザックを借りたままだったので、いつかは自分の大型ザックをと思って悩んだ末に購入。
ネットでの評判では、「大型ザックはグレゴリー!」みたいな評価を頻繁に目にしていたので、ブランドはグレゴリーを指名買いしました。
グレゴリーの大型ザックとしてはバルトロの方が人気がありそうでしたが、縦開き式ジッパーが付いたフロントポケットがどうも嫌で、こちらを選択。
フロントポケットの外側に付いているパーツにベルトを通せば、ショベル等を外に固定できるのも魅力的に思えました。
【感想・評価】
グレゴリーの大型ザックは 、重い荷物を肩ではなく腰で支えるフレーム入りの分厚い腰パッドが大きな売りとなっています。
しかし、評価の高いその分厚い腰パッドが、個人的には合いませんでした。
確かに腰パッドは重い荷物を背負った時に、腰でガッツリホールドしてくれますが、その腰パッドが厚すぎて脚を大きく上げた際に干渉してしまい、脚上げの妨げになってくることが多々ありました。
雪山で膝レベルのラッセルや、バリエーションルートの急勾配などでは、腰パッド(ウエストベルト)を外してしまいたいと思ったぐらい。ザックの重量自体は他社と比べて重いので、自慢のウエストベルトを外して使うのは本末転倒となってしまいます。
ハイキング/トレッキングで横に長い距離を歩く際には、重荷の負荷を分散してくれる腰パッドは有効かもしれませんが、大きく脚上げしながら歩く場合は正直言って邪魔でした。
ウエストベルトを強く締めると、腰パッドが当たるところが痣になってしまったこともありました。体格に合っていなかったのかも知れません。
何回か使用しましたが、どうしても合わなかったので友達にプレゼントしてしまいました。
ちなみに、友達からはこのザックの評価は上々でした。
パタゴニア アセンジョニスト・パック25
【購入の動機】
衝撃の350gという重量でありながら、決してペラペラの生地ではない。こりゃすげぇザックが登場したもんだと、スピードハイクやバリエーションルートの日帰りため、発売後まもなく購入しました。
【感想・評価】
確かに軽量は軽量で、そこそこ丈夫な生地なのでそこそこ丈夫。
しかし、やはり軽量化を突き詰めたザックだけあって、使い勝手に関してはお世辞にも良いとは言えませんでした。
背中のフレームはないので、上手くパッキングしないと荷物の中の固い物が背中に当たって不快です。
アイスアックス固定用のループが付いていますが、その機能はおまけ程度で固定は不安定。
少ししか入らない雨蓋のポケット。今まで雨蓋に入れていた荷物も、一部本体のほうに入れる必要が出てきました。そうすると、本体に入れたほうの小物を出す時にやや面倒臭いです。
当時は超軽量のクライミングパックはこれしかなかったような記憶が。そのため結構評判は良かったですが、山登りには正直使いにくいです。
軽量化重視の山行の際にはそれなりに活躍しましたが、やっぱり使いにくいので使用頻度は徐々に下がっていきました。
軽量で嵩張らないので、今でも時々アタックザックとして使っています。
マウンテンハードウェア サウスコル70
【購入の動機】
グレゴリーのパリセード80が個人的に合わなかったので、次こそは!と意気込んで色々検討した結果購入。
アウトドライというメンブレンを使用した完全防水ザックであること(ザックカバーが不要で、カバー分軽量化可能)、アルパイン用のシンプルな一気室で、グレゴリーの時に懲りた分厚い腰パッドが付いていなかったことが決め手となりました。
【感想・評価】
腰パッドは薄く、サポート性はあまり期待できません。ザックに助けてもらうというよりかは、自分の筋肉で背負うといった印象。重量物を背負うとジワジワと重荷が食い込んでいく感じ。ですが、最近の製品だけあって、背負い心地自体は結構良いです。
グレゴリーと違って腰パッドは薄いので、岩と雪の多い山岳地帯でも動きの妨げになることはほとんどありません。
シンプルな作りゆえに大型ザックの中では比較的軽いというのも好印象(約1500g)。クランポンポケットやアイゼン装着のアタッチメント、物を固定するのに便利なサイドストラップなど、あると便利な機能もしっかり搭載。
最近のMHWは良い物を作るな~と、感心させられました。
完全防水のアウトドライですが、完全防水なのはメインコンパートメントのみで、雨蓋とフロントポケットは防水でもなんでもないです。
よって、雨蓋とフロントポケットの中に入れているものについては別途防水手段を考えなくてはなりません。もしくは、濡れても構わないものを入れるか。
このザックの問題点は積載容量。メーカー曰く70Lということですが、たぶん70Lも荷物を入れられません。せいぜい65Lといったところでしょうか。70Lの大容量ザックと思って買うと、とんだ肩透かしを食らう可能性があります。
オスプレー ミュータント28
【購入の動機】
容量が25L前後の日帰り用ザックが、サイズを間違えて買ってしまったBDのボルト25と、軽いが使いにくいパタのアセンジョ25だったので、使いやすい日帰り30L以下のザックはないかと色々検討した結果これを選択。
クライミングや雪山にも使えるデザインで、シンプルかつ軽量なものという条件で探した結果、こいつに行き当たりました。
ジップ式アクセスのザックを試してみたいという好奇心も購入動機のひとつです。
【感想・評価】
巷で人気のオスプレー。はじめてオスプレーのザックを購入しましたが、オスプレー良いですね。個人的には総合点で最高のザックメーカーだと思っています。
クライミング向けで収納はメインの気室と、トップのポケットの二つだけですが、個人的には問題なし。この辺は人によって好みが別れそうではありますが。
雨蓋こそ付いていませんが、ロープ固定用ベルトとヘルメットホルダーが付属しており、使い勝手は良好です。
シンプルで軽くて、それでいて華奢ではなく、岩場にも十分対応できそうなそれなりにしっかりした作り。
背面とショルダーは通気性のあるメッシュ構造で、快適性にも気を配ってあります。
唯一気になる点を挙げるとするならば、ジップ式の収納。荷物がパンパンになるまで詰め込んでしまうと、ジッパーを閉めるのが大変です。
やっぱり雨蓋式、それも二本締めが個人的には好きだな~と、再確認しました。
それでもこのザックの魅力は色褪せるものではありません。特に無雪期の日帰り登山ではメインで使っています。収納量の関係で、厳冬期の山行とアイスクライミングでは少し厳しいかも。
パタゴニア アセンジョニスト・パック40
【購入の動機】
2014年に初代アセンジョニスト・パックが発売され、2017年にモデルチェンジしました。新型はループが増えたり、雨蓋の容量が増えたり、中にポケットが付いたりで、「尖ったデザインだったアセンジョも、一般登山でも使いやすいように丸くなったな~」なんてのが第一印象。最初はそれほど欲しいとは思いませんでした。
その後、沢登りをはじめ、沢で使えるザックで何か良いものはないかと考え始めるようになりました。
1.シンプルな一気室構造
2.濡れても重くなりにくい軽量なもの
3.ハーネスに干渉しないウエストベルト
沢で使うなら、以上の条件に合うものが欲しいと思いました。
色々調べているうちに、理想がぐんぐんと高くなってしまい、結局このザックに行き着きました。沢で使うには高級すぎるのではないかと迷いはしたものの、思い切って購入。
【感想・評価】
初期型アセンジョニスト・パックは確かに軽量ではありましたが、シンプル過ぎる作りが故に、現代の便利ザックに慣れた人間からすると多少の不便さは我慢して使わなければいけない部分もありました。
新型アセンジョは、クライミングパックとしてはもちろん使いやすいですが、一般登山においてもそこそこ快適に使うことができます。
旧型よりも雨蓋の容量が増えて、小物もそれなりに入るようになりました。生地もより頑丈なものになってこれまで以上にタフに扱うことができます。ヤブ山、岩山、雪山、なんでもござれです。
当初は沢登り用にと買ったのですが、あまりにも使い勝手が良くて、日帰り登山からアイスクライミングなどにも使うようになりました。そのせいで、それまでかなり気に入って使っていたホグロフスのロックアイス35の出番が少なくなってしまいました。
40Lとしては、ここ数年で一番のお気に入りのザックです。
シンプル系のザックが好きな人にはぜひ使って欲しい、おすすめの製品です。
まとめ
これまで色々なザックを買って使ってきましたが、個人的な好みとしてはシンプルで頑丈なタイプのザックが好みです。
クライミング向けモデル(クラッグ向けではなくて、アイス/アルパインに対応したもの)が物凄く好みにマッチしています。
トレッキング向けのモデルは小物収納用のポケットがいっぱい付いていて便利そうではあるんですが、パーツがひとつ増えるごとに、壊れる可能性がある箇所がひとつ増えると思っているので、あまりゴチャゴチャ機能が付いているものは個人的には遠慮したいです。
自分は雨蓋と本体の収納で十分。小物はカテゴリ別にスタッフサックに入れて分けており、使う頻度が高い順に雨蓋⇒本体の上の方といった具合に分けています。
物の扱い方が結構雑な自覚があるので、適当に扱っても壊れない、丈夫な作りであることも個人的には大切です。山道具は高いので、簡単に壊れたら悲しいですしね。
そんな思考の人間が書いたレビュー記事だと理解した上で、読者様がザック選びに対して何かの参考になれば幸いです。
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