冬山で使用するグローブ選びは本当に悩ましい…。今まで各社から出されている様々なグローブを使ってきましたが、コレひとつで100点満点っていうのには未だに出会えていません。
時には軽い凍傷にもかかりながら、いろいろと試行錯誤して、今のグローブに行き着きました。とりあえず今使っている手袋にはそれなりに満足しているので、あれこれ書いていきます。
雪山の登山やクライミングで使用しているグローブ(手袋)
過酷な冬山登山では、凍傷になりやすい末梢(指先)の保護のため、グローブの装着は必須です
モンベル トレールアクショングローブ
日本の山屋さんの味方、mont-bell(モンベル)が出しているフリースグローブ。
冬山での私の装着率は何気に高いです。
素手だと寒いけど、分厚いグローブだと手汗をかいてしまうような場所(出発直後~樹林帯アプローチ)などで主に着用。
薄手のグローブですが、裏起毛しているフリース生地なのである程度の保温性と通気性があります。風のないマイナスヒトケタぐらいの気温での行動中なら、寒くなく、暑くないのが良いです。
表面がよくあるフリースグローブみたいに起毛していなくて、ツルッとした感じなので、ウッカリ雪に触れてしまっても着雪しにくいのもポイント高いです。
耐久性はそれなりなので、ハードに使用すると1シーズンしか持ちません。気に入っているので穴が空いたら買い直しており、現在3代目です。
手の平側は滑り止めアリ。人差し指と親指はスマホを操作できる加工がしてあります。
このグローブはペラペラなのでズボンのポケットに入れておけます。薄いのでよほど濡れてない限りはすぐ乾きます。森林限界の上に出る場合や、寒くなったらこのグローブはズボンのポケット内に入れて、厚手のグローブ(+オーバーグローブ)を装着。下山時とかで、暖かくなってきたら、ポケット内で乾いたこのグローブを装着。そのような使い方で、登りから下りまで大抵は快適です。
11月終わり頃、積雪した甲斐駒ヶ岳では出だしから登頂まで、モンベル・トレールアクショングローブをずっと着用していました(山頂では流石に寒くてウールグローブに替えましたが)。
冬山(雪山)の風の弱い樹林帯のアプローチ用のグローブとして、まさに「丁度いい」感じが気に入っています。
ラックナー ヒマラヤングラブ
厳冬期インナーグローブの主戦力、ラックナーウールのヒマラヤングラブ。
未脱脂ウールで濡れても(手汗をかいても)温かい。高機能フリースとかハイテク中綿を使ったインナーグローブも試してきましたが、結局はウール最強という結論にたどり着きました。
結局フリースとか化繊は、濡れるとどうしても冷たさを感じてしまいます。行動すればそれなりに汗(手汗)をかくので、極寒の環境ではそれなりに指先に冷えを感じてしまいます。ウールだと、その汗冷えをかなり軽減(ゼロではないですが)できるのが素晴らしい!モン○ルのメリノウール製インナーは濡れると普通に手先が冷たかったので、未脱脂のタイプを私は信頼しています。
手の平側。小細工なしのウール100%。それが良い。
単体では防風性が無く、雪まみれになると少しずつ冷えてくるので、基本的にはオーバーグローブ(ゴアテックスなど防水性・撥水性を持った薄手のグローブ)と組み合わせて使用します。
オーバーグローブ、インナーグローブ(ウールグローブ)とそれぞれ用意することの利点は、乾かせることです。
日帰り登山の場合は、グローブを乾かせなくてもなんとかなることが多いのですが、泊まりの場合(テント泊)だと、雪や汗で湿ったグローブは放置しておくとカチンコチンに凍ってしまいます。
防水性アウターと、温かいインナーが一体化(取り外せない)タイプのグローブは、高い防水性のせいで、中が濡れてしまうとなかなか乾きません。その点、オーバーグローブとインナーグローブが分離できると、それぞれ個別に乾かすことができるので、比較的早く乾かすことができます。
雪まみれになっても温かいラックナーウール。ただし、その上にオーバーグローブを装着すると、雪が溶けてグローブがガッツリ濡れてしまいますので、こうなる前にオーバーグローブを装着することをおすすめします。
ウールグローブについてはこちらの記事で詳しく書いています。
ザ・ノースフェイス GTXロングシェルグローブ
The North Face(ザ・ノースフェイス)が販売していたシンプルなゴアテックス製のオーバーグローブ。現在同製品は廃盤になっています(ゴアの代わりにハイベントというTNF独自の防水素材をを使った製品に置き換わっています)。
手の平は合皮。薄くてシンプルなオーバーグローブです。縫い目のシーリングはされていないので、「完全防水」ではありません。ですが、そもそもオーバーグローブが活躍するのは最高気温でも氷点下レベルの環境なので、水の中に突っ込んでも濡れないような防水性能がなくても、個人的にはあまり気にしていません。雪に触れた時、中まで濡れてこない防水性で十分です。
薄いので濡れても比較的すぐ乾きます。まぁ、薄いので耐久性はそれなりですが(写真のものは2代目)。薄いので、多少凍ってもパキパキ折ったり揉んだりすれば普通に使えます。
年末の奥穂高岳登頂の際にもGTXロングシェルグローブを使用。インナーは上で紹介したラックナーウールのヒマラヤングラブです。
個人的に森林限界を越える雪山登山で、最も使用率の高いのがノースフェイスのGTXロングシェルグローブです。
ヘリテイジ WINDOSTOPPER オーバーグローブ
上に紹介したノースフェイスのオーバーグローブをなくしてしまって、更に廃盤になってしまっていたので「ヤバイ、このままじゃ冬山行けねえ」と慌てて買ったものがこのグローブ。後日、ノースフェイスのオーバーグローブがとんでもないところから姿を表したので、結局まだこのグローブは未使用です。
ノースのが壊れたり破れたりしたらこちらを使い始める予定。基本的にはそんなに大差なさそうな印象。
手の平はナイロンか何か。濡れてもすぐ乾きそうなのは、泊まりの雪山で、テント内で乾かせるのが良さそう。(革製は濡れると冬の山行中ではまず乾かない)
使っているのはゴアテックスですが、完全防水シーリングしてないので『ゴアテックス』の名前が使えず(防水テストにパスしないとゴアテックスのタグが付けられないらしい)、ウインドストッパー扱い。上でも書きましたが、オーバーグローブを使うような環境は、最高気温でも氷点下なことが多いので、オーバーグローブは完全防水でなくとも問題ないと思っています。むしろ、縫い目が防水処理されてないので、縫い目から湿気が抜けてくれるから汗抜けがいいんじゃないかと思っていたり。
ブラックダイヤモンド ソロイスト
ディーアイが切り札的に忍ばせている厳冬期用グローブ。旧モデル。実はそんなに着用率は高くない。
メーカーによると、-26℃まで対応しているらしいです。それ以下に気温が下がることって、ディーアイの主な活動フィールド(日本アルプス・八ヶ岳)あたりではほぼないので、これ以上の耐寒性能はいらないかも…(寒さの感じ方には個人差ありますが)。
インナーに防水透湿性素材(BDRY)を使用。内側は起毛したフリース生地とプリマロフト(化繊)のダブル使用で暖か。
インナーに防水素材を使うという謎采配のせいで、インナーが汗で濡れてしまうと乾きが悪いです。(防水素材はアウターに使ってもらうと個人的には嬉しい)
なので、冬山では基本的に、ウールインナーグローブ&ゴア製オーバーグローブをメインに使用して、このグローブ(ソロイスト)はガチ寒い時の最終兵器として持っていっています。
メインに使っているオーバーグローブ&ウールインナーで耐えられないほどの寒さがあまりないので(この辺は個人差アリ)、正直出番はあまり多くありません。時々-20℃ぐらいの環境で使うことがありますが、ソロイストの防寒性能は高いですね。
ブラックダイヤモンド パニッシャー
アイスクライミングでメインに使っているグローブ。防水透湿素材(BDRY)を使用。手の平側は丈夫な革製。内側はフリース生地です。
中厚のグローブで保温性はそれなり。それが良い。
グローブの保温性が高すぎると、アイスクライミングなどで登っている時には汗をかいてしまうので、登り終えた後には汗冷えして手先が凍えてしまうことがあります。程よい保温性の方が汗をかきにくくて好きです。
また、グローブ生地が厚すぎない方が、アイススクリューやカラビナなどの道具を扱う際には有利です。
アイスアックスを扱う際に違和感なく握れる形にカッティングしてあります。
南アルプスの某氷爆にて。
防寒テムレスは…
最近冬山登山者の間で話題の防寒テムレス。
それなりに良いものだとは思いますが、冬山のメイングローブとしては使っていません。安いのはいいのですが、保温性や透湿性はそれなり。シェル(アウター)部分は薄手なので、岩を握ってクライミングすると穴が空きそうな印象あり。安いので壊れたらすぐ買い直せるのは良い点ですが、山の中で壊れた場合、その場ですぐ新しいのを買うというわけにはいきません。
使ってる山のプロ(山岳ガイドの友人も愛用中)もいますが、だからといって最強装備というわけではなく、しっかりと道具の持つ強みと弱みを知っておくことが大切だと思います。
保水しないゴム様のアウターは、縫い目もなく完全防水なので、雪を掘ったりする際には信頼性が高いです。イグルーや雪洞作成など、雪遊びに使っています。
自宅での雪かきや、車に積もった雪を払い除けるのに使うのが私のメイン用途。
あれこれ試したグローブ
独学で冬山登山を初めて、ほとんど全てにおいて試行錯誤の連続でした。
冬山に持っていく手袋に関しては、一番頭を悩ませた道具です。有名どころのメーカー製であっても、イマイチ使えない製品もありました(用途が合っていない可能性もありますが…)。指先が軽い凍傷になったのも、一度や二度ではありません。
アレコレ試して、これまで手袋だけで10万円以上は軽く使っていると思います。10万円以上というと高い金額に見えますが、自分の指の価値は少なくとも10万以上はあると思うので、このへんは勉強代だと思って後悔はしていません。
今回の記事が冬山登山で最も悩ましい装備である、グローブ(手袋)選びの一助になれば幸いです。
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