小川山の有名なクラックルートを4つ登ってきたのでその感想や内容などを。
日本のフリークライミング発祥の地と言われる、長野県川上村にある廻り目平周辺の岩峰郡(通称・小川山)。数百とも言われるクライミングルートがある中で、クラック・クライミングのクラシック4ルートが、小川山クラック四天王と呼ばれています。
【クラック四天王】
・小川山レイバック 5.9+(親指岩)
・カサブランカ 5.10a(親指岩)
・ジャックと豆の木 5.10b/c(妹岩)
・クレイジージャム 5.10d(妹岩)
どのクラックも5.10以下という比較的取り付き易いグレード、プロテクションの良さ、手頃なアプローチ、そして岩を断ち切るクラックの素晴らしい見た目など相まって、シーズン中の週末には常に誰かが取り付いているような人気ルートとなっています。四天王という名称は正直大げさ過ぎると思うのですが、一部の先鋭的なエキスパートクライマーとは程遠い平凡なクライマーでも楽しめる好ルートとして、その存在価値は高いと思います。
今回の記事では、1日でそのクラックをすべて登ってきた時に感じた印象などを書いた記録です。すべてオンサイトトライではありません。以前にRPしたものや、今回が初RPとなったものもあります。
クライミングの達人でもなんでもないフツーの人間が書いた記事なので、あくまでも参考程度にして下さい。
★記事では各ルートのムーブや、カムの番号などにも言及しているので、オンサイト狙いやクライミングの冒険性を損ねたくない人は読まない方が良いかも知れません。
小川山クラック四天王
小川山レイバック 5.9+(親指岩)
日本におけるフリークライミング発祥の地と言われる小川山で、最初に登られたフリークライミングのルートというスーパークラシックが、小川山レイバックです。
廻り目平駐車場から、まずこのルートから登ってやろうと親指岩を目指しました。キャンプ場を突っ切り、廻り目平下部のボルダー郡を横目に見ながら踏み跡を頼りに急登を登ると、見えてくるのが小川山レイバック。朝イチに急登を登るので、カムの重さも相まって息が上がります。
小川山レイバックは、今まで何度も登ったことがありますが、何度登っても良いものは良い。
出だしはシンハンドで、ジャミングは気持ちよく決まりません(手が薄い人は決まるかも?)。かと言ってレイバックで行くとプロテクションが設置しづらいので、最初からクラックを正面に見据えて登っていきます。
クラックは微妙に細そうに見えますが、右足のフットジャムは普通に決まるので、なんとなく収まりの悪いシンハンドをちょっとこらえながら、クラックの中に突っ込んだ足先で立ち上がって行くと、まもなく傾斜が落ちてハンドが良く効くようになります。
以前は多くのクライマーがスメアしているせいで側壁が磨かれてツルツルになっていると思っていましたが、左壁をよく観察すると普通に立てる小さなツブがいくつかありました。両手両足ジャムすると無理な姿勢になってしまうので、壁のあちこちにある小さなツブに足を乗せていくと、だいぶ楽です。クラック登りにこだわり過ぎて、両手両足ジャミングしようとしてしまうと、結構無理な体制になって辛い思いをしてしまいます。手はジャミングですが、足はツブなどを拾っていくと安定する箇所があります。
中間部にあるレッジがガバなのでそれを掴んで、その上に立ち上がってしまえば完全回復するまで大レストが可能です。リードの人はとりあえずそこまで頑張ると良いです。
レッジの上は傾斜が強くなっているので登り難そうですが、左右の壁には足場として使えるホールドが散見されるので、脚を開いて傾斜を殺すように登っていけば、腕の負担を減らすことができます。チョット怖いマントルを返し、斜めになった居心地悪いテラスに立ち上がれば終了点にクリップできます。
2P目もあるらしいですが、私は1Pしか登ったことがありません。2P目を登る場合は、取り付きから見えている終了点を無視して斜めったテラスの奥へと歩いていき、昼寝ができるほどの平坦なテラスまで登っていくと、そこにも終了点があります。
使用したカムは、下から0.75、1、2、1、2。
クレイジージャム 5.10d(親指岩)
小川山レイバックから親指岩を挟んで反対側にあるのがクレイジージャム。小川山レイバックとはクラックがつながっているらしいので、反対側で登っている人の声(叫び声とか荒い息遣いとか)がよく聞こえます。
小川山クラック四天王で最もグレードが高く、ボス的存在です。今回は小川山クラック四天王を1日で全部登るつもりで来ていたので、場所の都合上2本目に登りました。
このルートで落とされる箇所は、最初のシンハンドのコーナー、ハングからハンドに移る箇所、ワイドクラック、肩への乗越しのあたりでしょうか。
出だしはハングしたところにハンドバチ効きさせてスタート。それから手の収まりがどうも悪いシンハンドサイズのコーナークラックを登ります。一応正対のクラックムーブでも行けるらしいですが、個人的にはレイバックでさっさと抜けてしまった方が楽。左右の壁にあるスタンスを拾って行きます。
ハングした箇所までくるとハンドが決まるので、両足を開いて突っ張ると大休止できます。続いてハングからハンドサイズのクラックを登りますが、ハングを越えるところが手も足も収まりが悪くてちょっと疲れます。直前のハング下に赤(#1)キャメロットがバチ効きするので、ムーブは思い切って。
しばらく快適なハンドセクションは癒やし区間。そこから突入するワイドは、ワイドなれしている人からすれば快適らしいですが、私は疲れました。奥にハンドが決まるのと、 クラックの外側の足でヒール&トゥを決めるのがポイント。ワイド区間は疲れますがそんなに長くないのと、ワイドを抜けるとノーハンドで休めるところがあるので頑張っていきます。玉みたいなガバを掴めば一安心です。
最後の方でクラックが途切れ、親指岩の肩に立ち上がるところがあるのですが、微妙に持ちどころのないホールドと、遠いガバ、スメアする右足などが悪くて、個人的にはそこが最も苦手な場所だったりします。ここまで来たら落ちられない(落ちたくない)!
最後は岩の上に立って終了。素晴らしいルートです。
使用したカムは、下から0.5、1、2、2、3、3、4、0.3、0.4。
カサブランカ 5.10a(妹岩)
妹岩の人気ルートの筆頭がカサブランカ。一枚岩をすっぱり断ち切るような美しいクラックは、見て良し登って良しです。
最初は傾斜の緩い溝状で跡切れ跡切れの浅いクラックを登って行きます。ジャミングの決まりも微妙で、個人的にはここが一番苦手です。溝にはところどころカムが決まる場所があるので見逃さないように。
レッジに立つとノーハンドで大休止できるので、そこで気合を入れ直して本編となるクラックを登っていきます。クラックの途中にもノーハンドで立てるダイクがあるので、休むべき所でしっかり休み、行く所では一気に行くのが完登コツだと思います。
カサブランカのクラックはフレア(手前側が開いている)ので、プロテクションには注意が必要。フレアしている箇所で闇雲のカムをセットしても、落ちた所で外れてしまっては意味がないので、なるべくパラレル(左右が平行になっている)な箇所にカム類をセットしていきます。クラックはハンドサイズですが、フレアしている箇所の奥がパラレルだったりするので、小さめのカムが決まる箇所もあります。
メインとなるクラックが途切れ、隣のクラックに移る箇所が核心部。それまで効いていたハンドジャムが突然効きづらくなってしまいます。ハンドジャムが効かなくなる直前でカムをセットし、思い切ってムーブを起こすと良いです。
途中にあるカットされた枯れ木は、フリークライミングという観点で見るとできたら使いたくないですが、目の前にあったらついつい掴みたくなってしまう魅惑的なガバホールド。使わなくても登れますが。
クラックが途切れ、ちょっと緊張しながらダイクに立ち上がると、そこに終了点があります。
使用したカムは、下から0.5、0.3、4、1、2、0.75(0.4だったかも?)、1、0.5、0.75とかだった気がしますが、登る度に使うカムの番手が変わっている気がします。
ジャックと豆の木 5.10b/c(妹岩)
ジャックと豆の木は、昔々にトライして全然登れなかった記憶があり、苦手意識をずっと持っていました。久しぶりに触ってみたら普通に登れたクラック。このクラックも四天王の例に洩れず、取り付きから見上げるその形は壮観です。
取り付きがワイド、その後はハンドサイズとなり、最後はフィンガーとなってきます。
出だしがちょっと傾斜の強いワイド。キャメロットの大サイズ#5を決めておけば安心。ワイド登りでも行けるらしいですが、クラックの左右に散りばめられたホールドを使って登りました。
ズバッと切れたメインのクラックについつい目が行ってしまうのですが、左にある細いクラックに、フレーク状になっている箇所があるので、そこをガバホールドとして使うとだいぶ楽に登れます。ワイドの後はハンドですが、傾斜がある上に、ハンドジャムの決まりが甘いところもあるので、モタモタしていると力が吸われていきます。悪い体勢で恐怖に負けて、強引にカムをセットしようとしてしまうとすぐに力尽きてしまいます。カムのセットは安定した体勢になってからと、クラックの左にあるホールドを上手く使うのがポイント。
ルートの中ほどで右に逃げたく箇所もありますが、そっちに逃げて良い思いをしたことがありません。クラックがフィンガーサイズまで細くなった所でようやく右側へ。最後はカムが決まるような箇所がなくなりちょっと緊張しますが、ムーブはカンタンなので思い切って行きます。
使用したカムは、下から5、3、1、2、2、0.5、1、0.4。
カムの選択は、あくまでも個人的なセレクションなので不安があれば多めに持っていくことをおすすめします。人によってプロテクションを設置する感覚とか、設置したくなる箇所は様々なので、あくまでも参考程度に。
こちらの記事もどうぞ