「弱い雨を弾く」は実用的?レインウェアについて思うこと

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「弱い雨を弾く」は実用的?レインウェアについて思うこと

 

撥水性があれば雨でも使える?

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撥水=水を弾くけど防水ではない

防水=水を完全に通さない

 

「このウェアは高い撥水性があるので弱い雨でも安心です」という紹介文は、アウトドアウェアの紹介文でしばしば目にします。

以前にしたパタゴニア・フーディニジャケットの記事では

「このウェアの生地は撥水性があり、小雨なら弾くが、レインウェアの代わりには使えません」と書きました。

 

一方、フーディニジャケットを紹介している別のサイトでは「フーディニはジャケットは撥水性があるのでレインウェアの代わりに使えます!」と大きく書かれていました(そこそこの規模と知名度のあるであろうメディア)。

ペラペラのナイロン一枚地でできたフーディニジャケットが、雨の中で使えるとは全く思っていなかったので、「この記事書いた人、本当に山で使ったことあるのかな?」と、そのメディアに対し強い不信感を抱きました。*1

後に冷静になってからよくよく考えてみると、レインウェア(もしくはアウター)に対する防水性の期待値は書く側と受け取る側の認識の違いが大きいのではないかとふと思いました。

 

『雨』の認識の違い

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・大雨ではそもそも山に行かない

・雨は降るかも知れないが、天候条件は麓とほぼ同様=過酷な環境ではない

・ウェアの撥水性が保たれている間に、安全地帯に逃げ込める環境での使用

など、「山に行く」と言っても、近所の低山やケーブルカー等を利用しての軽登山、キャンプ等のアウトドア用途で使用する場合、高い防水性を持ったウェアは必ずしも必要でない場合があります。

「撥水性があれば多少雨が降っても大丈夫」と書く側としては、上記のような比較的リスクの少ない環境で使用することを前提として(過酷な状況で使用することをイメージしていない)紹介している可能性が考えられます。

それを「アウトドアでの使用でも安心」とか書いちゃう人がいるからややこしくなる…

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風のない遊歩道歩きなら傘でも問題なかったり…

 

高山帯での雨

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基本的に「レインウェア(完全防水のアウター)は、登山の必需品」と私は考えています。それは私が日本アルプスなど、3000m級の山を中心に登っている人間だからというのがあると思います。

 

【3000m級の山で、雨が降ることのリスク】

・夏でも気温がヒトケタになるので、濡れると低体温症リスクが高い

雨が降っても簡単には下山できないことがあるので、風雨に晒され続ける可能性

・森林限界上では雨や風を遮るものがないことがある

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以前(2013年)、北アルプスの稜線上で、強烈な風雨に叩かれたことがありました。

場所は一言で言うと山奥。簡単に途中下山できる場所はなく、レインウェアを着たまま何時間も歩き続ける羽目に。「思ったよりも雨が激しくて風も強い。今日は大変な日だなぁ」と思いながら行動していました。同日、同じく天気が悪かった中央アルプスで複数名の登山者(軽装だった?)が気象遭難で命を落としていたというニュースを後で知りました。

あの強風と雨が吹き荒れる中を「レインウェアの代わりにフーディニ(撥水性はあるが防止水性のないウェア)を着て歩け」とか言われたら、絶対に嫌です。

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遮るもののない森林限界上。強風が吹けば、「雨が降る」というより「横から雨に叩かれる」という場合もあります。そのような条件下で数時間歩き続けると、全身ズブ濡れです。特に夏場は急な天候悪化がしばしば発生するので、レインウェアは必需品だと思います。

 

「山に行く」ということの多様性

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同じ「山に行く」という事柄でも、小川山(廻り目平)とかに行く場合、クライミングのアプローチで1時間以上山道を歩く場合があるんですが、その時にはレインウェア持っていかないことがあります。自分の場合、「山に入る時には必ずレインウェアを携行している」かと言うと、そうでもないんですよね…。雨降ってきたらそもそもクライミングできないので、さっさと帰ります。 

岐阜県の鳩吹山(313m)に登ったときは、水とカメラぐらいしか持っていかなかったし…

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裏山をちょっと歩く時には、ゴアテックス等の本格的なレインウェアが不要な場合だってあります。その一方で、天候悪化が安全面へのリスクとなる高山帯での登山は、レインウェアは身を守るために必須装備だと思います。

一言に登山と言っても「どんな山に行くか」によって必要となる装備は変わってきます。

そのことを考えると、単に「登山で使えます」というワードは、登山の多様性を無視した雑な表現であると言えましょう。

 

最後に

アウトドアウェアの説明文で、「撥水性があるので小雨程度なら大丈夫です」という表現は、裏を返せば「激しい雨が降ったら耐えられません」ということです。

まぁ恐らくですが、アウトドアウェアを売りたい人は、商品に対してできるだけ良い印象を持って欲しいので、弱い雨なら弾く(強い雨は弾けない)を「小雨程度なら耐えられるウェアです!」と言っちゃうのでしょう。それを「雨に降られても大丈夫なんだ」とミスキャッチしてしまうと困ったことになることも。

撥水性を信じて雨でずぶ濡れになってしまっても、「登山は自己責任」と片付けられてしまうことになるので、道具(ウェア)選びは慎重に…

 

小雨を弾き、頼りになるおすすめウェア(大雨に耐えられるとは言っていない)

※誤解のないように補足:雨が降っていなくて、風があって、ちょっと肌寒いぐらいの環境で使うぶんには、こういうウェアがあると快適なんです!

 

本格登山にはレインウェアをどうぞ

 

こちらの記事もどうぞ

www.dimountainphotos.com

 

*1:後日、その記事を見に行ったら、「しばらく雨中で使うと浸水してきます」とコッソリ訂正されていました。