「シングルロープとダブルロープというのがあるのは分かってるけど、みんなどう使い分けてるの?」という疑問に対して、書いた記事です。
私も昔は「シングルとダブル、理屈はなんとなく分かるけど使い分け方が分からん」となっていました。様々なルートを登っていくうちに、状況に応じて使い分けができるようになってきたので、自分なりのロープの使い分けの方法とその考えをまとめてみました。
ロープの使い分けを理解する一助となれば幸いです。
シングルロープ/ダブルロープの使い分け
シングルロープ
フリークライミングで主に使われるタイプのロープ。ロープ径は9~10mmほど。
シングルピッチのクライミングなら使うのはほぼこっち。
ダブル(ハーフ)ロープと比べると太いので、どちらも簡単には切れないと頭でわかっていても、見た目にちょっと安心感があります。
ダブルロープだと二本同時に扱う必要があるので、扱いに関してはシングルロープの方がシンプルで容易。
ルートが屈曲している場合などでは、ロープの流れによって岩に擦れたりしてしまって、引きが重くなってしまう場合も。最悪の場合ロープと岩の強い摩擦によってこれ以上進めなくなってしまう可能性も。屈曲が大きいルートは、シングルロープとの相性が悪いです。
ダブルロープ
ダブルロープは2本1組で使うことを前提として設計されています。ダブルのうちの一本は「ハーフロープ」とも呼ばれます。ロープ径は8.5~7.8mmほど。
2本のロープを振り分けてプロテクションに掛けていくことで、ロープの擦れを低減することができます。左右にトラバースしたり、複雑な構成のルートでは有利。
ただし、2本のロープを扱うことで操作はいくらか煩雑になりますし、ロープ同士が絡まって(シングルロープと比べて)余計な手間がかかることもあります。
ロープ1本あたりの径は細くて軽量ですが、2本まとめるとシングルロープ1本よりもトータルで重量は重くなります。自分かパートナー、どちらがロープを担ぐかで喧嘩する可能性は減ります。
マルチピッチでフォローが登る時、1本のロープはフォローで登るクライマーに、もう1本のロープは荷物に括りつけて上の人に荷揚げしてもらうということもできます。
フリーかアルパインか
フリークライミングではシングルロープ、アルパインクライミングではダブルロープ、というのが一般的によくみられる気がします。
不確定要素が強いアルパインなどで、撤退の可能性を常に視野に入れるとなると、懸垂下降で長距離降りられたり、1本のロープが万一破損したりしたことを考えると、ダブルロープは安全性をより高められる点で有利でしょう。
「基本的に落ちることはないけど万一の墜落のためにロープを使用。でも、軽量化もしたい」という人は、ダブルロープ(ハーフロープ)1本でアルパインルートを登ることもあります。強度的には保証されているわけではないし、ビレイデバイスの流れが良過ぎて墜落時にはリスクがありますが、軽量化というメリットがあります。
マルチピッチ=ダブルロープとしているクライマーも見かけます。高難度のマルチピッチクライミングになってくると、扱いがシンプルなシングルロープが好まれる傾向があると思います。
3人以上で登る
3人でマルチピッチのルートを登る際には、ダブルロープの場合フォローのクライマーが時間差を開けて同時に登ることが可能です。
フォローが同時に登ることによって時間の節約になります。
シングルロープの場合、3人以上でマルチピッチルートを登る場合は、中間にアッセンダー等を噛ませて登ることになります。
バックロープ
シングルピッチでのクライミングでも、登高距離が長くてロワーダウンできない時には、メインロープ+ハーフロープで登る方法もあります。
クライマーはメインロープとハーフロープをハーネスに結びつけて登りますが、登りで使うのはメインロープだけ。登りではハーフロープはハーネスからぶら下げていくだけです。
クライマー、ビレイヤーともにシングルロープの方が扱いはシンプルで楽。登りきった後は、ロワーダウンで取り付きまで降りて来られないので2本のロープを連結させて懸垂下降で取り付きまで戻ります。
南沢大滝、醤油樽の滝などでアイスクライミングを行った時にこの方法を使いました。両方ともシングルロープで取り付きに戻るには70mぐらいのロープが必要になりそうですが、70mロープは持っていなかったので…。
マルチピッチでバックロープを引いてくと、登る時のロープワークをシンプルにできる&長距離下降&荷揚げができるというメリットがあります。
デメリットは、シングルロープ1本またはダブルロープ(ハーフロープ)2本と比較して、メイン+ハーフロープとかではトータルの重量が更に重くなってしまうこと。
敗退と下降
シングル(ロープ)でいくか、ダブルでいくか考えるときに私が基準としていることは、ルートの1ピッチあたりの長さです。
1ピッチあたりがロープ全長半分よりも長いと(50mロープを持っていった場合には
25m以上)、時間切れやトラブルの発生時などに敗退できません。
ツインロープ
2本のロープを一本のロープのように扱う(2本のロープを同一の中間支点に掛けたりする)やり方をツインロープといいます。
私は実際にやったことはほぼないので、あまり語れないのですが…。
1本のロープ切れたときのバックアップとなるとか、出したロープ分の長さだけ懸垂下降できるとかメリットはあります。
2本ロープで登っているときに1本だと落ちた時を考えると何となく不安だから心理的な負荷を避けるため2本一緒にクリップしとこうとかやったことはあります。
最近のハーフロープはダブル、ツインの両規格を満たしていることが多いので、2本一緒に中間支点に掛けてもOKだとは思います。ただし、その分落ちた時の伸びが少なくなって、支点により大きな負担がかかってしまう可能性あり。
実例
錫杖岳 注文の多い料理店
→ダブルロープ(50m×2)使用
ハング越えやトラバースなど、ルート取りが複雑で、シングルロープだとロープドラッグが発生する可能性大。
歩いて下れる道がなく、帰りは懸垂下降となる。1pあたり30mを越えてくるルートがあり、シングルロープよりもダブルの方が少ない回数で取り付きまで降りられる。
小川山 セレクション
→シングルロープ(60m)使用
ルート上(ひとつのピッチあたり)の屈曲が比較的少ない。
各ピッチが短く、60mロープを折り返して30mとしても地面もしくは次の下降地点まで無理なく降りられる。
トップアウトすれば歩いて取り付きまで戻れる。内容的に途中で撤退する可能性が低い。
瑞牆山 大面岩左稜線
→ダブルロープ(50m×2)使用
屈曲しながら進むピッチがある。
大面岩でのクライミングが初で、下降ルートが分からない可能性があり、素早く下降できるようにダブルを選択。
ひとつのピッチは短いが、ルートが直線的で無いため懸垂で下るとなると別ルート(初見)を下りなければならない。
懸垂を行うとなった際の安全マージンを多くとるためダブルロープを採用。結果として懸垂下降(1pのみ)は30m以内の距離だったため、シングルロープでも良かった。
城山 バトルランナー
→シングルロープ(60m)使用
ルートが直線的で、1pあたり30m以内の距離なので、無理なく下れそう。
ロープ操作のハンドリング重視でシングルロープに。
4p登って懸垂下降4回で取り付きに戻った。懸垂下降にいくらか時間がかかってしまった。ダブルロープならおそらく2回の懸垂下降で取り付きへと戻れた。時間の節約を考えたらダブルロープ(もしくはバックロープを引いていく)のが良いかも知れない。
ベアールの10mmシングルロープ。
エーデルリッドのハーフロープ。2本合わせてダブルで使用できます。
シングル・ダブル・ツイン全ての規格を満たす、1本でお徳(?)なエーデルリッドの8.9mmロープ。
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