長野県・諏訪地方への移住と暮らしについて【山好きな移住者の目線で】

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長野県の諏訪地方に移住した当ブログの作者(ディーアイ)が、諏訪への移住や暮らしについて、個人的なものも含めて見聞を書いていこうと思います。長野県移住を計画している(登)山好きの一助となれば幸いです。

 

山が好きな人が考えることのひとつに、「山に近いところで暮らしたい (通うのが楽だから)」というのがあるのではないでしょうか。都会から山の麓に向かうのも結構手間だし、意外と時間とお金がかかります。

自分もそのクチで、かつて岐阜県(愛知県との県境に近いところ)に住んでいたころは、毎週のように長野県に通っていました。毎週のように高速使って、移動だけで何時間も費やしていました。

「こっち(長野県)に住めば、移動の時間もだいぶ短縮できるし、もっと手軽に登山ができるようになるな」と考えるようになるのは自然の流れ。それから長野県への移住を計画し、数年前、実際に長野県の諏訪地方に引っ越してみました。

実際に数年間住んでみて、自分がわかる範囲のことを書いていきます。 

 

信州・諏訪地域に山好きが移住し、分かったことなど

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高ボッチ高原より諏訪地方を見下ろす。

 

なぜ諏訪に移住したか

北・中央・南アルプス、八ヶ岳あたりの山々が近いからです。

長野県内だと松本・安曇野あたりがメジャーな移住候補になると思いますが、北アルプスは冬になると晴天率が低いので、オールシーズン遊ぶとなると、諏訪地域が各山域にバランス良く通えそうなのが魅力に思えました。

 

諏訪地方概要

諏訪地方は6つの市町村(諏訪市、下諏訪町、岡谷市、茅野市、原村、富士見町)の総称です。今回の記事のおいて、『諏訪』『諏訪地域』『諏訪地方』は同義です。

諏訪市の人口が5万弱。諏訪地域全体の人口が20万人ほどらしいです。

 

日本のだいたい真ん中ぐらいにある、長野県。その真ん中ぐらいにあるのが諏訪地域です。長野県の分類だと『南信』なのがちょっと解せない点でもありますが。ちなみに『中信』は松本あたりのことだそう。 

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諏訪に住むことについてのメリット

山が近いのが自分にとって最大のメリットで、そのために移住したようなものです。

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北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳の主要な登山口へは、だいたい車で2時間もあればアクセス可能なオールラウンド性が魅力です。

 

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更にロッククライミングの有名所である小川山・瑞牆山へも完全に日帰り県内(2時間ぐらいです)。花崗岩好きにはウレシイ。

 

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アイスクライミングをしたい場合も、八ヶ岳、尾白川、西上州あたりが1~2時間ぐらいで行けちゃいます。

 地図引いて、北中央南アルプス、八ヶ岳、御嶽山などの山からみて一番真ん中へんにあったから、諏訪への移住を決めたような感じです。

 

ちなみに松本・安曇野は北アルプスに近く、移住の候補地に上がりはしましたが…

冬の北アルプスは冬型の気圧配置になると荒れるので、松本・安曇野だと冬の遊び場には少し遠くなってしまうんですよね。(スキーやるなら話は別かも知れません)

冬は八ヶ岳に行くことが多かったですし…。

 

気候について

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夏は涼しく、冬は寒いです。

気温は東京・名古屋などと比べるとだいたい-5℃ぐらい低いような感覚ですね。

夏は本当に過ごしやすく、エアコン(クーラー)の無い家庭も多いそうです。

冬場は寒い日は本当に寒く、最低気温が-10℃以下になることも。断熱が弱い家だと、屋内でも氷点下になることもあるそうで、「凍らせたくない物を冷蔵庫に入れる」という寒冷地あるあるをやることになります。

 

冬は晴れる日が多いです。太平洋側の気候になるので、冬の晴天率が高いのも嬉しいですね。

そのかわり、雪が降った後、その雪が日中に溶け、夜の気温低下で凍るので、車を運転する際にはスリップに注意です。寒いので日陰の雪は結構長く残ります。

  

冬の間は寒いので、部屋の中でも登山用の保温着を着ています。
 

諏訪のシンボル『諏訪湖』なんですが…

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諏訪のシンボルであり観光地でもある諏訪湖。しかし…この湖に寄せる感情は、必ずしもポジティブなものだけではありません。

 

風が強い

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夏はまだいいのですが、諏訪湖畔では冬の冷たく強烈な北風が容赦なく吹き続けます。

湖面を見渡せるマンションなんかもありますが(多分立地的に凄く高い)、洗濯物干してあるところ見たことがないので、まぁそういうことなのでしょう。

冬に吹く諏訪湖の風はマジで寒いです。

 

諏訪湖虫(うんか)

1年に2回ほど、諏訪湖周辺には謎の虫(ユスリカと言うそうです)が大量発生します。

無害な虫なのですが、なにせ量が多くて気持ち悪い。諏訪湖畔でジョギングしてる時とか、口呼吸してると入ってくるんじゃないかってぐらい。

白い壁なんかがお好きなようで、湖畔にある建物なんかにビッシリと羽虫が張り付いているのです。洗濯物についていたり、車にくっついたり…。

 

悪臭の諏訪湖

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夏(暑い時期)には、諏訪湖では謎のバクテリアが大繁殖し、湖面がキレイなケミカルグリーンに染まります

けっこうドブくせーんですよ、コレ。地元住民から「悪臭をどうにかしてほしい」と市にクレームが入ることもあり、時々清掃されるのですが…またしばらくするとグリーンに染まります。エンドレスイタチごっこ。

 

諏訪湖の花火

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諏訪の花火大会は有名ですね。数万発の花火が打ち上がり、観光客が数十万人レベルで押し寄せる、諏訪最大のビッグイベントです。

花火大会は年2回(8月15日の花火大会と、9月の新作花火大会)。花火大会の間、湖岸通りの一角は歩行者天国となるので、一部で交通渋滞と車での移動不可能区間ができあがります。花火大会後は、帰宅を急ぐ群衆による大規模な交通渋滞が必発なので、この日の外出はできる限り避けたいところです。

また、夏の間は毎日15分ほど諏訪湖で花火が打ち上がります。最初のうちは「すげー、毎日花火上がるんだ!」と喜んでいたのですが、慣れてくると「あー、毎日毎日花火うるせーなー」という感じになりました。

るるぶ清里 蓼科 八ヶ岳 諏訪'18 (国内シリーズ)

るるぶ清里 蓼科 八ヶ岳 諏訪'18 (国内シリーズ)

 

 

地方都市は車社会

田舎というか、地方都市はだいたいどこもそうだと思うんですが…

諏訪地方も、車社会です。買い物に行くのも、仕事に行くのも、大抵は車が必須。なくても生きていくことは不可能ではないかも知れませんが、車がないと非常に不便です。

田舎暮らしは、車という文明機器がないと成立しないのです。

冬は寒くて、降った雪が凍るのでスタッドレスタイヤが必須。

車があれば、霧ヶ峰でも、湖畔公園でも、ステーションパークでも、綿半でも、ひとっ走りで到着できます。

 

諏訪地方民の運転傾向に対する記事

 

諏訪市の地盤は弱いらしい

「地震があると諏訪はよく揺れる」という声を時々聞きます。

かつての諏訪湖は今よりも大きく、諏訪湖周辺はかつて湿地帯(?)だったので、地盤が弱いという話。

不動産屋さんの中には、「諏訪の住宅は地盤が弱くて傾いているところがあって、都会から来た人が住んでると体調を崩すこともある」と言っている人もいました。

諏訪地方で住居を探す時には、ビー玉必須ですね。家が傾いていたらひとりでに転がるはず。

ビー玉 いろいろMIX 約300g入

ビー玉 いろいろMIX 約300g入

 

諏訪自体『中央構造線』と『糸魚川-静岡構造線』という大断層がクロスしている場所なので、今後大地震に見舞われる可能性は高いでしょう。

 

仕事とお給料の話

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長野県内にあるクライミングジム(諏訪ではないが割合近いところ)の店長が言っていましたが、クライミングジムの常連になる人は、たいてい地元で有名な企業に努めている人か、公務員か、病院関係者ぐらいらしいです。

時々来る中小企業勤務の人曰く、「残業して出た給料が、有名企業の基本給ぐらい」らしいです。なので、「ジムに通いたくてもそこまでお金に余裕が無いか、仕事が忙しくて時間が作れない」とのこと。クライミングジム通いは、月1万とかそれぐらいです。

地方は都会と比べると、やはり給与水準は低い。

更に地方で生活していると車は必需品になるので、車関係の出費が必然になります(家賃その分安いですが…)。

松本クラスの都市まで行ってしまえば、働き口や給料に関してはいくらか良くなりそうですが(この辺は詳しく調べていませんが)、諏訪地方で働くとなると、都市部と比べたら給料面については多少の妥協は必要となりそうです。実際自分も、岐阜県に住んでいたときと比べると、いくらか給料減りました。その分、毎週のように長野まで通っていたガソリン代と高速代は浮いたので、まぁ合計すれば所得額と出費額は、大きく変化はしませんでしたが。

 

長野県民の郷土愛は強い?

「山が好きで移住してきました」というと、地元民から「こんな何もない田舎によくもまぁ(笑)」という反応をもらうことが時々ありました。

それでも、長野県民は他県(岐阜県)と比べると郷土愛は強いと感じています。長野県内の地元スーパーに行くと「長野県の特産品コーナー」みたいなのがだいたいありますし(岐阜県にはそいうのない)。

 

若い頃には都会に憧れるらしいが…

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長野県の若者は都会に憧れ、実際に東京などに行く人も多いそうですが、「やっぱり長野が一番」と、戻ってくる人も多いそうです。

 

地元民はたいてい登山に関心がない

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長野県内の中学校には、『学校登山』という恒例行事があります。強制的に登山をさせられるので、これで登山嫌いになってしまう長野県民が多いのだとか。

聞いた話によると、中学校の場所により

諏訪地方→八ヶ岳

伊那・駒ヶ根→木曽駒ヶ岳

安曇野エリア→燕岳

あたりに登っているらしいですね。

 

登山を趣味としている長野県民はかなり少なくて、「何でわざわざ疲れる登山をするのか理解でない」と、多くの地元住民からは不思議そうな顔をされます。登山は「都会から来る者がやっていること」という認識をされている場合が多いです。

山が好きで移住してくる層も一定数いるので「あなたも山好きで来たのですか」という顔をされることも。

  

食文化の謎

虫食は今や一般的ではない?

長野県と言えば、イナゴや蜂の子といった昆虫食でも有名です。実際に長野県内のスーパーの一角では、イナゴの佃煮とか売ってます。

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諏訪湖畔で買える「イナゴ入りソフトクリーム」。これは完全にネタ食品です。

一方で、若い世代に「虫を食べる文化は今もあるんですか?」と聞いてみたところ「お年寄りが食べてるって感じですね~」という返答がありました。

昔の食料が少なかった時代、貴重なタンパク源として昆虫食は一般的だったのかもしれませんが、どこでも肉や魚が手に入る様になった現代、虫を食べる文化は廃れつつあるのかも知れません。

花九曜印 いなご甘露煮 EO缶 F3 45g

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馬肉(馬刺し)が割と普通

地元の飲食店(主に焼肉屋、蕎麦屋、飲み屋)では、たいてい『馬刺し』がメニューに載っています。

「こっちは馬食がメジャーなんですか?」と地元民に訪ねてみたところ、「普通にあるんで意識もしていませんでした」との返答が。

ただし、毎週食べるとかそういうものではなく、馬刺しは宴会や親族の集まりなどで振る舞われる食品だそうです。感覚としては、マグロのお刺身とか、そういう類の扱いだそう。馬刺しはスーパーでも売っています。

 

テンホウを馬鹿にするべからず

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諏訪地域を中心に、数多くの店舗を擁する謎の中華料理チェーン店

『テンホウ』

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長野県民(主に諏訪地方)のソウルフード的存在です。

豊富なメニューを展開し、手頃な価格で、お子様からお年寄りまで、幅広い層をターゲットにしています。「この世で一番うまいメシ」…という訳ではありませんが、何かと使い勝手は良いので時々利用しています。

名古屋経済圏における『すがきや』のような存在でしょうか。はたまた、北陸における『8番らーめん』とでも言いましょうか。

諏訪地方育ちの人間たちは、幼い頃からテンホウで味覚調教されている可能性が高いので、諏訪の民相手にテンホウを「マズい」とか「チープな店」などと罵ってはいけません。

 

こんなもんはカツ丼じゃねぇ!

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信州において『カツ丼』とは、『ソースカツ丼』を指す言葉です。

 「こんなもんカツ丼じゃねぇ!」と、県外でカツ丼を注文した長野県民は、実際に出てきた『卵とじのカツ丼』を見てそう思うらしいです。

諏訪ではカツ丼といえばソースカツ丼のこと。確かに地元の定食屋とかに入ると、ソースカツ丼はメニューにあるのに卵とじのカツ丼が無い!

これは、卵とじのカツ丼が好物の人間にとっては結構深刻な事態です。県外に出なければ『あのカツ丼』が食えないのです。

と、カツ丼不足に陥って困っていたら、最近諏訪市内に『かつ庵』ができました。ここは全国チェーンで、卵とじのカツ丼が食べられます。一件落着。

  

御柱の光と陰

日本三大奇祭と言われる『御柱祭(おんばしらさい)』。七年に一度開催され、その度に地元は異様なほどの盛り上がりを見せています。祭の前になると、諏訪の男たちは騒ぐようで、ソワソワして止まらないという話です。

「御柱で盛り上がるのは男衆ばっかり」といっていたおばちゃんも、TVで流れる御柱の映像を見ながら「◯◯地区はやっぱり動きが悪いねぇ」とか、ちゃっかり見ています。

諏訪の民から御柱にかける情熱は、部外者にとっては理解しがたいものもあり、正直あの熱気にはついていけなかった…。

と、自分は傍観者的な立場で御柱祭を見ていましたが…。

地元で商売をやっていると、「御柱際への協力金」なるものが必要となるようです。いくらぐらい払わないといけないかは、風の噂程度にしか聞いていないので、詳しい額とかについてはあえて述べません。

ある程度の思い入れがなければね…。 

御柱祭ガイドブック

御柱祭ガイドブック

 

 

大抵の移住者はそのうち都会へ帰るぞby地元民

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諏訪地域にある、とあるローカルな喫茶店で店主との会話中に出てきた話題。

「田舎暮らしに憧れて移住してきた人は、何年かすると都会に帰る」ということでした。

移住する理由、都会に帰る理由、それは人それぞれだとは思いますが、やはり都会から田舎に来ると、イメージ通りにいかないことも多い模様。

 「DIYの家具に囲まれ、薪ストーブで暖を取る、のんびりとした自然の暮らし」みたいな理想の(八ヶ岳デイスのような)キラキラした生活を、すべての移住者が手に入れられるわけではなさそうな気がします。

八ヶ岳デイズ vol.14 (TOKYO NEWS MOOK 690号)

八ヶ岳デイズ vol.14 (TOKYO NEWS MOOK 690号)

 

自分としては、山へのアプローチが楽になればそれだけで割と幸せ。それ以上の過度な期待はしていなかったので、何事も「こんなもんか」という感じです。

「隣の芝生は青く見える」ということもあるので、地方での暮らしは思い描いた理想と違う可能性もあることも、覚悟しておくに越したことはないでしょう。

余談ですが、今でこそ住所は長野県内にありますが、嫌になったらいつでも帰れるようにと、最初の数年間、住民票は岐阜県の実家にしていました。

 

 

とりあえず諏訪地方へ移住してきた自分が、見聞きした情報を載せました。

今後追記することがあったら随時更新していく予定です。

誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書

誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書

 

 

【諏訪地域への移住についてのサイト】

www.suwa-life.jp

 

こちらの記事もいかがですか

www.dimountainphotos.com