鳶岩でクライミング【長野県】

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長野県の岩場紹介シリーズ。冬でも登れる貴重な岩場、鳶岩(とびいわ)についてご紹介します。

 

アクセス

鳶岩へと行くには、大室山古墳群でナビ設定すると良いでしょう。

古墳までは住宅街の細い路地を通過するので、大きい車だと壁とすれすれに曲がる箇所がでてくるので嫌かも。

古墳の資料館の駐車場が利用できますが、冬は駐車場に入れません。古墳館閉館時期は近くの空きスペースに車を停めましたが、多くの車が集えるほどの場所はなさそう。

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古墳館は冬季に閉鎖されます

日当たりが良い岩場なので、真冬で気温ヒトケタでも晴れていればさほど寒くなくて快適。鳶岩のクライミングの時期は晩秋~冬~早春が良いかと。気温が高い季節は、日当たりが良いだけに厳しそうです。

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大室古墳館の駐車場から見える鳶岩

古墳館の駐車場に車を停める場合、閉館時間が17時となっているため注意が必要です。

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鳶岩全体図

 

岩場へのアプローチ

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駐車スペースから岩場は見えているので、見えている岩の方へと歩いていきます。

 

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舗装路からダートっぽいところへ

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岩場近くはちょっとブッシュっぽい

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階段を登り

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ハシゴを登ると岩場に到着します

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休憩に丁度いい広場に出ます

目の前には甘酒(5.10c)、左には吹雪(5.11b)、右にデーモン(5.10d)、みかん(5.10b)などのルートがあります。

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鳶岩の基部から見える大室古墳群

 

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鳶岩のボルトは場所によっては錆びていたり、強度については不安を感じさせるものも混じっています。ガチ落ちしないよう慎重に登ったり、危険度が高いと判断されたら登らないなど、強度保証されているわけではないので各自が慎重に判断する必要がありそうです。

 

主なルート

※すべてのルートを紹介しているわけではありません。

 

コールドエリア

鳶岩メインエリアから左に進んだ杉林の中にも、岩場が続いています。

コールドエリアと呼ばれているそうです。冬暖かい鳶岩ですが、それは日差しがあってのもの。杉林の中にあるこのエリアは冬寒くて湿っぽいのもあって、あまり登られている感じはありません。

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鳶岩左端にある堰堤のような人工物。岩場はここまで

コンクリートに固められてしまったため、100岩場のトポに載っていた数本のルートが消失してしまったようです。

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(左)コーナークラックのジットリ(5.8)、(中央)顕著なクラックのムジナ(5.9)。上まで登っていないので終了点がどうなっているかは不明。

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あまり登られていなさそうなフェイス。一応ボルトは打たれている。カンガルー(5.7)?

 

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森の小人(5.8)?


メインエリア

鳶岩は狭い岩場なので、トポ上ではエリアが別れてはいるのですが、メインウォールと他のエリアとの境目が曖昧です。一応、アプローチで到着する広場の周囲がメインエリアという認識で良いかと。

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(左)フィッシュアイ(5.10c)。カンテは脆いので注意。100岩には5.11aと書いてありましたが、登ってみた感じ5.10cぐらいと思いました。写真右のワイドクラックも登れそうです。

 

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左側の岩には、カンテ沿いを行くEdge of Heaven(5.11a)と岩のど真ん中を行く大地の響き(5.10a)がありますが、大地の響きに関しては、途中のリングボルトの強度に不安があります。写真やや右のルートはニューフェース(5.9)

 

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ニューフェースの右隣にあるクラックルートのアリンコ(5.7)。クラック以外に使えるホールドも多く、クラックの入門に良いかも。すぐ隣にあるボルトルートはルート名不明ですがグレードは5.9とのこと。終了点はアリンコと共通。

 

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鳶岩につくとまず目に飛び込んでくるルート。左が吹雪(5.11d)、右がMind Crime(5.11d)。その右にあるクラックも登れます(KOB 5.8)。

 

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広場のど真ん中から伸びる長いルートの甘酒(5.10c)。上部の核心部で甘いホールドに耐えながらハングを越える。

 

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鳶岩の看板ウォール。デーモン(5.10d)、みかん(5.10b)、Crying Face(5.12a/b)。デーモンは上部がみかんと共通。みかんの3ピン目から右に向かう(岩を直上する)のがCrying Face。

 

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みかんのある壁から右隣。5.9のルートが2本仲良く並んでいます。ウォームアップに良い内容ですが、両ルートともボルトが錆びてたりして支点強度に不安があります。

左のルートは「春が来い」、右はルート名不明。難しさは同じぐらいで、終了点は共通。

 

メインウォールには2ピッチのマルチピッチで登れる上部岩壁もありますが、登っていないので紹介は割愛させてもらいます。

 

ライトブロークンエリア

一応メインエリアと別れて紹介されてはいますが、岩は繋がっていて境界となるものはないので、別エリアという印象はないですが…。

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ドラゴンボール(5.10b)。やや長めのガバルート。取り付きから見上げた印象よりも傾斜があるような印象。

 

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唯一の中間支点が錆びたリングボルトで落ちたくない、神々の扉(5.10c)。

右の顕著なリッジ上を行くのが鬼太郎(5.10b)。隣にあるのが新鬼太郎(5.8+)。どちらも登っていないので詳細は不明。

 

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ライトブロークンエリアの右端。左が達磨(5.8)。中間支点に信頼がおけなさそうなので登ってはいないです。右にあるのが桃太郎(5.8)。ガバガバなのですが、グレードはやや辛めに感じました。

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達磨、桃太郎の取り付き。

 

かもしかエリア

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ライトブロークンエリアから少しだけ歩いた先にある小さな岩。

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トポに載っているルートは画像中央のシンクラック沿いを登る凧(5.11b)のみですが、左に謎のルートがあります。

 

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更に奥へと行くと、ハングを乗っ越すような短い謎のルートがありました。このルートが鳶岩の最奥だと思われます。

 

参考

日本100岩場 伊豆・甲信

 

ROCK & SNOW No.086

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Crying Face 5.12a/b挑戦

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鳶岩最難のグレードが付いているルートがCrying Face(5.12a/b)。看板ルートのみかん(5.10b)と3ピン目までが共通で、終了点もごく近い位置にあります。最初に訪れた時、みかんを登った後に(登れなくてもみかん登ってから回収すればいいし)、Crying faceを触ってみることにしました。

何度もテンションはかかりましたが、Crying Faceのムーブは自分の得意系で、何とかリードで上まで抜けられました。この日は疲れてしまったので無理そうでしたが、頑張ればRPできそうな気はして、気になるルートになりました。

 

Crying Faceが気になって仕方なく、しばらく後に訪れた鳶岩。

凪(5.11b)とか他の気になるルートをやった後にCrying Faceに再トライ。何度か挑んでみたものの、核心でどうしても落ちてしまう。やがて力尽きてしまい、宿題は終わらせられず。悔しい気持ちでいっぱいになりながら帰宅。

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三度目の鳶岩。Crying Faceを落としに来ました。疲れがたまらない程度にアップを済ませていざCrying Faceに挑戦。核心部まではなんとかたどり着け、核心のムーブに入る…。両手の指の第一関節を一本ずつ引っ掛け、フットホールドに乗り込む。「行ける気がする…!」という感覚とは裏腹に、指が滑ってフォール。

落ちた直後から、爪に違和感を感じました。指の爪を短く切り忘れたせいで、中指の爪が1/3ほど剥がれて出血していました。受傷直後はまったく痛くありませんでしたが、そのうちズキズキと痛み始める指先。テーピングで剥がれかけた爪をグルグル巻きにして止血しました。

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スリップ&フォールで爪が剥がれた

出血が止まってから諦めず再トライ。核心部、指一本で耐えないといけないところは、受傷した中指でなく人差し指を使ってみましたが、人差し指を横で支えている中指にズキズキと痛みが走るせいで力が入らず、あえなくフォール。止血していたはず中指から再出血も始まり、これ以上のクライミングは無理そう…。ほとんど登っていないのに、この日のクライミングはおしまい。悔しすぎる。

 

四度目の鳶岩。もういい加減にCrying Faceを終わらせたい。確実にRPするために、隣のみかんを登って、下降しながらCrying Faceのボルトに前もってヌンチャク掛けようかという考えが過りましたが、それは自分のやりたいスタイルでないと思い直したので止めました。ムーブを繋げられれば登れることはわかっている。

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気合を入れてCrying Face登攀開始。前回までムーブにちょっと迷うことがあった核心までは、スムーズに突破。前腕のパンプはほとんど感じていない。

さて、問題の核心部。レストポイントから、サイドを引いて足上げ。クリップしたあとはあまり休めないので覚悟を決める。左右の中指一本ずつをホールドにひっかけ、剥がされないよう重心右足へと移し、一気にガバを取りに行く。あっけないほどに核心は終わりました。

核心の後に出てくるムーブは難しいわけではないが、ムーブを固めているわけではないので気は抜けない。前腕はパンプし始めているが、ここで落ちる訳にはいかない。頭の回転が早くなったような気がしてあれこれ考えながら、これは違う、こっちだと2回ほどムーブを修正し、最後のガバを一気に取りに行く。そして終了点にクリップ。

このルートのために、何度も鳶岩に通うことになりました。それがようやく終わったという解放感に包まれ、息をつきました。

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「また長野(市)まで行くの?」と文句を言いつつも、ビレイに付き合ってくれた妻に感謝です。

さて次は、どこを登りましょうか。

 

登った時に履いていたシューズ。

 

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www.dimountainphotos.com