雪山で使うグローブについては本当に悩みました。
何せ、変なものを使ってしまうと、下手すると凍傷、指の切断なんてことになりかねません。
あーでもなこーでもないと色々ためして、気がつくとウン万円分は手袋に使ったような気がします。
「有名メーカーのそこそこ高いやつだから大丈夫!」なんてことは決してなく、実際使ってみたら凍傷になりかけて、「こんなもん雪山じゃ使えねーよ!」とゴミ箱にブチ込んだ経験アリです。
色々と試行錯誤を重ね、現在自分が最も信頼しているのが
ウールのグローブです。
…普通ですね。
昔から使われている未脱脂ウールのグローブ、
当初は「どうせ過去の遺物だろ」と、その効果に半信半疑でした。
しかし、実際に使ってみるとその効果は想像していた以上。
今では冬山登山に欠かせない道具のひとつです。
雪山登山で使うグローブ【ラックナーウール】
私が冬の登山でメインに使っている保温グローブは、ラックナーウールのヒマラヤングラブという製品です。
ウールのグローブは今では冬山の必需品
いままでフリースグローブやら、化繊のグローブやらを色々試してみたんですが、確かに暖かいには暖かいけど、汗をかくとどうしても冷えてしまいました。
自分は特に手汗をかきやすい体質で、激しく登ると必ず手に汗をかく。で、そのうち濡れた手袋が指先の温度を奪ってしまう・・・というような事態に陥り、強風の吹きつける厳冬期の稜線では指先に軽度の凍傷を負ってしまうということが何度かありました。
いろいろと試したり調べたりするうちに、未脱脂ウールのグローブが冬山では定番ということを知り、試しに買ってみたのがラックナー。
好日の棚に並んでいるウールグローブの中で一番安かったのが購入の決め手です。モノによっては1万近くするのもありますが、これは4000円弱! 店員さんに、「値段の違いは何ですか?」と尋ねたら「わかりません」との返答。じゃ、安いのでいいやということで、棚の中で一番安かったラックナーに決めました。
正直に言うと、その時はあまりウールの性能に期待をしていなかったので、ダメだった場合を想定して財布の負担が少ないものを…というのが決め手になりました。
なんどか冬山で使ってみての感想は、
今まで厳冬期登山では、指に軽度の凍傷を負ってしまうことが何度かあったんですが、ラックナーウール+オーバーグローブという組み合わせにしてから、凍傷を負うことが格段に少なくなりました。
更に、今までのグローブは行動中に汗をかいてムレがどうしても気になっていましたが、ウールの吸湿性のお陰か、ムレもあまり気にならなくなりました。
ウールグローブを使うようになって、本当に目からウロコの思いです。
愛用のラックナーウール、ヒマラヤングラブ。
12月の硫黄岳にて。こんなになってもちゃんと暖かいんです。
ただし、雪がウールにくっつくと落ちにくいのと、この状態でオーバーグローブをしてしまうと雪が溶けて濡れの原因になってしまいます。
雪がつきそうな状況下では、早めにオーバーグローブを装着した方がいいです。
オーバーグローブ+ウールという組み合わせが冬季登山では最も使い勝手が良い。
ウール+オーバーグローブという組み合わせ
冬山ではウールとオーバーグローブを組み合わせて使っています。
登山口~アプローチの段階では薄手のフリースグローブをしていて、稜線に上がる前や寒くなってきたら保温力の高いウール+オーバーグローブに切り替えていく、といった使い方をしています。
雪山、特に泊まりの場合は、手袋はシングルではなく、オーバーとインナーが分離できるタイプのものを強く勧めます。
オーバーグローブ(アウター)は雪に触れることが多いので、確実に濡れてしまいます。
ほとんど常に氷点下の冬山では、濡れたものは放っておくと凍ります。オーバーグローブも凍ります。ですが、それはたいした問題ではありません。
インナーのウールグローブさえドライで暖かい状態であれば、アウターが凍っていようと意外と快適なんです。
逆に、インナーのグローブが湿って冷えた状態であれば、指先はたちまち冷たくなってしまい、凍傷のリスクが高まってしまいます。
一度末端(指先など)が冷えてしまうと、再び温まってくるまでに時間がかかります。温まってくるまでの間は結構辛いです。
インナーとアウター、分離式の一番のメリットは、インナーだけ取り外して乾かすことができるという点です。
インナー・アウター一体型のグローブの場合だと、アウターはゴアテックスなどの防水素材が使われているため、濡れてしまったインナーがなかなか乾かないです。大汗をかいてしまった場合、山行中では完全に乾かせないこともあります。
これは、日帰りだとあまり問題にならないこともありますが、テント等で何泊もする場合にはとても重要です。
一日の始まりに、濡れて冷えた装備を身につけることになってしまうと、テンションが上がってこないですし、何より凍傷の危険があります。
雪山登山で一泊以上をする場合は、グローブはインナーを個別に乾かせる分離型をおすすめします。
一体型のシングルグローブの利点は、操作性が分離型に比べて高いところです。
ディーアイはアイスクライミングではシングル、冬山登山ではインナー+アウター(ダブル)と山行によってグローブを使い分けています。
天然素材・ウールの暖かさ
フリースや化繊(プリマロフト)なども暖かいんですが、基本的に暖かいのはドライな状態の時だけです。
濡れた上体だとヒンヤリ感があって、すぐに汗冷えするしなんとなく不快感があります。
それに対して、ウールは濡れても不快感が少ないです。
暖かさに関しても、ポッカポカにするというよりかは、じんわりと芯からじっくり暖めてくれるような保温性があります。この辺は抽象的は表現ですみません。
この特製は、快適に使える温度範囲が広いということであり、寒くなったり暑くなったりと、場所や時間で温度が移り変わる登山中では非常に有効です。
いろいろなグローブを試してみた結果、雪山の登山ではウールがイチバンという結論に至りました。
将来的には超快適な化学繊維のグローブが出るのかもしれないですが、出てもどうせ高いでしょうし、冬山でのウール定番はしばらく続きそうです。
ディーアイが使っているのはラックナー。ハンドシュペーター(旧エラス)やオルトボックスといったブランドからも未脱脂ウールのグローブが出ていますが、ラックナーのほうが安いです。高い分他のブランドの方が高性能?使ったことがないのでわかりません。
オーバーグローブは現在、TNFのゴアテックス製オーバーグローブを使用していますが、同製品は廃盤になってしまいました。
今使っているオーバーグローブがだめになってしまったら、ヘリテイジのオーバーグローブを使う予定です。
シンプル&必要な機能を備えており、信頼のゴア製ファブリックを使用。
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