長野県、八ヶ岳の東面、南佐久郡にあるクラッククライミング主体の岩場、湯川について。ロッククライミングの岩場紹介の記事です。
アプローチ
国道142号線から燈明の湯方面へ
2021年からは林道が完全に通行止め(以前はグレーな感じだけど車で入っていた)になったので、林道前の駐車スペースに車を停めていきます。
駐車スペースのある広場から岩場までは歩いて15~20分ほど。
いくつかの滝を右手に見ながら荒れた林道を進んでいくと、左手の沢にオレンジ色の橋が掛かった広場があります。その広場から、湯川の岩場へと斜面を登っていくことになります。岩場への入り口はちょっとわかりにくいですが、よく見るとお助けロープがかかっています。踏み跡に従い、急斜面を登っていくとほどなく岩場に到着します。
東京・山梨方面から向かった場合、最寄りのコンビニはセブンイレブン南牧村役場前店。
岩場の特徴
傾斜は90℃前後の垂壁が多い。フリクションは良好。
グレードは5.9以下~5.10台で、クラックルートが多いですが、(リードの場合)安全に登れるかどうかはクライマーの技量に依るところが非常に大きいと思われます。クラックの中は凹凸が多く、キレイにスッパリと割れていることが多い小川山のクラックなどと比較すると、NP(カム等)のセットがやや難しいと感じます(特に小さなサイズ)。
グレードはジャミング、プロテクションのセットが当たり前にできることを前提としてつけられているので、クラック/リード初心者は注意。
日当たりが良いので寒い時期でもそこそこ登れることがありますが、近くの沢はアイスクライミングのゲレンデとなるような場所なので、気温は低め。
下地は概ね良いが、雨の後はぬかるむ。地元クライマーは長靴を履いてきていた。乾燥しているときは埃っぽくて、地面に置いた装備は汚れやすい。
時期により岩場のハング箇所にスズメバチが巣を作ることがあるため注意。クラックの中に蛇を見たこともあります。
ルート紹介
湯川にある主なルートを紹介していきます。すべてのルートを紹介している訳ではないので、100岩などのトポも要参照。
どのルートも50mロープでロワーダウン可能だと思われます。
ルート紹介で書いている「C+数字」は使用するNP(キャメロット)のサイズの目安ですが、私の個人的な選択ですので絶対ではありません。ルートにより同じサイズのキャメロットを複数使っていますが、いくつ必要になるかは人によるとも思うので省略。
コークスクリュー
5.9+
C2~4
メジャーな道でアプローチすると、まず目の前に出てくるルート。
C3程度の、フィストサイズの割れ目が続くので、手が小さい人はジャミングが決まらずグレード以上に難しく感じるらしい。そうでなくとも、見た目よりも意外と傾斜があるので腕が張るパワー系ルート。
クラックがガタガタなので、所によりフェイス的にも登れます。
サイコキネシス
5.10d
C0.5~C4
ところによりC0.4
湯川を代表するクラックのひとつ。終了点があるのは隣の人気クラック・コークスクリューと同じテラスなので(終了点は別ですがすぐ隣)、トップロープでトライされていることも多い気がします。
出だしから中間部まで、かかりの悪いシンハンド~フィンガーサイズ。オフセットクラックで、ついついレイバックに頼りたくなってしまいます。トップロープならレイバックで強引に突破できますが、リードで登るとなると、強引なレイバックだけに頼ってしまうとNPのセットが大変になるのが悩ましいところ…。
山案山子
5.10b
C0.3~0.5
ところによりC3
フィンガーから始まり、中間部からレイバックで大胆に高度を上げる。途中でレストできるところがあるので、できるだけ回復してから次のムーブに移りたい。
テレポーテーション
5.10d
C0.4~1
先に紹介した山案山子の右。上部で右上する長いクラック。湯川の看板ルートのひとつということです。
ノーハンドレストができる小テラスまでは#0.75前後サイズ前後の簡単なクラックが延々と続く感じ。
少テラスから右上する被った細いクラックが核心部。足をうまく使って、フィンガーを効かせながら、短くて強度のあるムーブをこなす必要があります。核心部は細めのカムが良く決まるので、カムをしっかり決めたら思い切って行きたいところ。
北京の秋
5.10b
C0.4~0.5
場所によりC0.3、0.75
浅いコーナーに刻まれたフィンガークラック。フィンガーがうまく利かせられないと苦戦する。浅い左右の壁にうまくステミングを利かせるのもポイント。滑らないように気をつけたい。
途中で左の棚に逃げたくなりますが、クラックから離れてしまうと戻るのにエネルギーの消耗が大きいのであまり大きく逃げず、できるだけ正面からクラックに立ち向かうのが解決の鍵を握る。
傾斜が緩んだところで、クラックもいくらか幅広くなり登りやすくなります。
幅の変わる不正なクラックは、プロテクションのセットが難しいので、慎重にカムを決めながら行きたい。
バンパイア
5.10c
C0.75~1
一部でC4
湯川で最も見映えするクラックのひとつ。シンハンドなので、手が薄い人の方が有利っぽい。男性よりも女性の方が得意な方が多いのだとか。同じぐらいの割れ幅のクラック続くので、同一サイズのカムが複数個必要。長いですが極端に難しいムーブはありません。
最後のハング越えはムーブをしっかり組み立てれば、見た目よりも疲れない 。
個人的に、湯川で最も好きなルート。
白髪鬼/燈明
5.13/5.14a
湯川最難のルート。バンパイアの右隣りにある極細クラック。
オリジナルが白髪鬼で、クラックを最後まで繋げて登るのが燈明というらしいです。恐ろしくて触ったことすらないです。
今井クラック
5.8くらい?
C1~3
割と最近開拓された(?)ルート。場所は次に紹介するデゲンナーの裏側。湯川では珍しいC2程度の快適なハンドジャムが楽しめるクラック入門ルート。
日当たりが悪く、出だしはウェットで苔っぽいため登坂意欲が掻き立てられるようなルートではないですが…。
デゲンナー
5.8
C0.5~1
場所によりC2
上の写真で左にある方のクラック。低グレードなので「まずはコイツから…」とウォーミングアップ的にトライされるルートですが、意外に決まりの悪いシンハンドがでてくるので苦戦する人が意外と多い印象。
油断していると落ちる5.8です。私も初トライでリードして落ちました。
デゲンナー右にあるクラック
5.9~5.10aくらい?
C0.4~1
100岩場のルート図には掲載されていないルートですが、登られている形跡があり終了点もありました。シンハンド~フィンガーのあと、右上へとトラバース。最後のハング越えが独特のムーブになることも。
フォーサイト
5.10a/b
C0.4~1
下部~中部までオフセットフィンガー。レイバックになってしまいがち。しかしレイバックだとプロテクションのセットができないので、上手くフィンガーを効かせてクラックと向き合わなくてはいけない場面がでてきます。
上部まで登るとムーブはフェイス的に。プロテクションをセットしたら、大きな動きでガシガシ登るのが良い。
北風小僧
5.9
パワフルなレイバック、ハング越えのあるクラックっぽくないクラックルート。出だしがちょっと気持ち悪い感じだったような気が。
台湾坊主
5.9
C0.3~3
上部でナッツ類
メジャーな入り口から見て最奥にあるルート。コーナークラック。ステミングしやすいフットホールドが適度にあるので、湯川の中では比較的登りやすいルートではないかと。
ただ例に漏れずクラックはガタガタで、しかもルート上部は指がやっと入るぐらいのフィンガーサイズ。過去に上部でセットしたカムが外れてグランドフォールした事例もあるとのことで、リードの際は注意。
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