2023年、瑞牆山のシーズンが始まりました。以前から行ってみたいと思っていた小面岩にある『一刀』というルートで、マルチピッチクライミングを楽しんできました。
場所:奥秩父、瑞牆山、小面岩
山行日:2023年5月28日
種類:マルチピッチクライミング、日帰り
メンバー:ディーアイ、湯川
瑞牆山マルチピッチクライミング 小面岩 ・一刀
ルート概要
瑞牆山の中でも顕著な巨岩『カンマンボロン』『大面岩』の奥に位置する『小面岩』という目立たない岩に開かれたマルチピッチのクライミングルートが、今回登った『一刀』です。
クラック主体、オールナチュラルプロテクションというクリーンな内容*1で、極端に危険なピッチもなく*2、グレードも瑞牆の中では手頃感があって、凡人でも頑張れば登れそうなのが特徴というか魅力だと思います。
ルートグレード:V
最高ピッチグレード:5.11b
ピッチ数:8P(実質クライミングは4P)
ルート長:185m
アプローチ
植樹祭エリア(大駐車場手前)にあるウッドチップの駐車場に車を停め、パノラマコース沿いに歩いていきます。
旧登山道があるので、ルートは明瞭(昔一度コースアウトしたことあるけど)。しばらくは道沿いに歩いていきます。
カンマンボロン、大面岩の前を通り過ぎていきます。(樹林帯なので岩の全容は見えにくいけど)。
本日の相方、昨年アキレス腱断裂した男・湯川さんは後ろを振り返ること無くガンガン先行していき、カンマンボロン手前の上りに差し掛かるころには完全に見えなくなっていました。
「一刀の取り付き、あのへんは何回か通ったことあるし、行けばなんとなく分かるっしょ」と舐めてかかっていたら、山を舐めた私は道に迷いました。アプローチは樹林帯なので見通しが悪く、ある程度の土地勘がないと、この岩が何岩なのか分かりにくいのです。
最初は、途中まで正しい道を登っていたのですが、「こんなに登るのはおかしいのではないか?」と考えて一度下って、やっぱり上がったほうがいいんじゃないかと思い直してまた上がってと繰り返してしまい、時間のロス。
一刀の取り付きは、自分が想像していたよりも大面・小面岩間のコルに近いところまで上がった先にありました。
クライミング
私(ディーアイ)がハイライトの4P目を担当することになり、湯川さんは1P目と2P目をリードしたいということを事前に打ち合わせ。
下降は懸垂と短い歩行で取り付きまで戻ってこれるということなので、アプローチシューズは取り付きに置いて、クライミングシューズを履いて帰ってくることにしました(これは間違いだったと後で気づく)。
ピッチ数とグレードは、フロンティアスピリッツ出版のトポ・瑞牆本下巻のものを記入しています。
1P 5.9 ワイドクラック
湯川さんリード。
取り付きからの見た目はガッツリワイドだけど、最初は左側の壁も使えるので快適。上の方の核心部(5.9で核心とか言うのもどうかだけど)は短いけどちゃんとしたワイドっぽいムーブありました。フォローだったけど一瞬落ちるかと思いました。
6番を持っていったけど、結局リードの湯川さんは使っていなかったです。
トポだと登りきった先の木でビレイということですが、ランナウトに強い男・湯川さんはワイドを抜けた先のスラブをノープロでトラバースして、2P目のクラックにカムを噛ませて支点を作っていました。本人曰く「クラックで支点を取った方が、次のピッチがやりやすい」のだそうです。
ここから先は5、6番のカムは使わないので、取り付きに人がいないことを確認して放り投げ、次のピッチへ。
2P 5.11a フィンガークラック
湯川さんリード。
出だしは離陸にやや躊躇する、ワイド目な割れ目。そこから少し登ると効きの良いフィンガークラックに移行します。
核心となる部分は長くないながらも腕が張りました。ガタガタのクラック内にフィンガーがバッチリ決まる場所があちこち出てくるので、そこを上手く使い、細かい足も踏みながら登っていく感じです。一旦少テラスで一息ついたら、ちょっと汚いコーナーをぐいぐい登って終了点へ。
3P 4th 歩き~ちょっとトラバース
湯川さんが「歩きで行けるよ」と言ったのでコンテで進みます。
ちょっとだけ怖いトラバースがありますが、まぁこのルートをやりに来る人なら落ちないでしょうという内容です。
本当に短い歩きで次のピッチの取り付きへ。
4P 5.11b 被ったシンハンド~ハンドクラック
このルートのハイライトとなるピッチ。私(ディーアイ)がリード。
出だしのガタガタしたクラックでいきなりカムをスタックさせてしまい、2人がかりで回収するというドタバタのあと、改めて離陸。
私は雑魚なので核心部で力尽きてテンション。
ルートは被ったシンハンド~ハンド~トラバース~チョックストーンという構成。
ジャミングは決まるところではバッチリ決まりますが、傾斜があるのでモタモタしていると力尽きる感じ。更に、クラックはガタガタしていて、カムが上手く決められなかったり、手がいい感じに入らなかったりする箇所があるので、そこをどうするかがポイントでしょう。
チョックストーンを越えるところもこのピッチに面白さをプラスしています。これは登り方が分かっちゃえば…系ですね。
湯川さんもこのピッチをリードしたいとのことだったので、終了点に作ったスリング&カラビナで懸垂下降し、リードとフォローを交代してもう一度登ることになりました。
私がフォローで登ってから、次のピッチへと移動しました。
5P 3rd ほぼ歩き
コンテで進みました。
ブッシュ帯を少し進むと目の前に汚い岩がでてくるので、そこを左へ。やや下った先にあるチムニーが次のピッチです。ここは事前情報がないと迷うところかも知れません。
6P 5.7 チムニー
私(ディーアイ)がリード。
体がすっぽり入るチムニー。奥の割れ目に一応カムがキマる場所があるので1つ噛ませましたが、別に落ちる気もしなかったので無くてもよかったかも。背中を擦り付けていればとりあえず大丈夫そうな感じ。
最期はチョックストーンの上から行っても、くぐっても良さそう。
チムニーを抜けた先のトラバースが微妙に気持ち悪い。
地面が平らになっている適当なところで、木にスリングを巻き付けてフォローをビレイ。
7P 3rd ほぼ歩き
コンテで進みました。
前回ピッチを区切ったところから、ごく簡単なクライミングを交えながら、巻き気味に岩を登っていきます。
クラックの走った岩を左に巻くようにして、シャクナゲのトンネルみたいなところをくぐった先が最終ピッチの取り付き。湯川さんがルートを知っていたので迷うことはなかったですが、お互いが初見だったら進むべき道を間違えてしまったかも。
8P 5.11a トラバース~スラブ
最終ピッチはガバ手トラバース→テラス→数歩が怖いスラブ→テラス→ガバフレークのフェイスと言う内容でした。事前情報無いと迷いそうなピッチ。
私(ディーアイ)がリードしました。
トポだとC3~C4という表記ですが、核心部の手前でC0.5も足元に決まるので、精神安定剤(気休め?)代わりに使用。「プロテクションは固め取りしたし、落ちても死なない、落ちても死なない」と自分に言い聞かせながらツブに立つ。核心のワンムーブに5.11aが付いている感じ。
まあここまで来たら落ちることはないでしょうが、今まで一度も使わなかったC0.2がその上の溝にガチキマりしたので心の中でガッツポーズ。後はテラスまで登って、その上にあるガバフレークを掴んで小面岩の山頂へ。
全ピッチRPという形にはなりませんでしたが、岩の上に立って景色を見下ろすこの瞬間はマルチならではの充実感です。
下降
小面岩の最高点から、小ヤスリ岩方面へ少し下ったところに、下降点がありました。ちなみに小ヤスリ岩山頂方面へ歩いていく際にも、細いリッジや足が細いところもあったので、念のためクライミングシューズを履きっぱなしの方が良いかも知れません。
一刀終了点→小面岩のピーク→そこから岩を伝って小ヤスリ方面に少し降りたところに、下降用のリングボルト、スリング、カラビナ2枚がありました。
瑞牆本によると、太い松の木にスリングが巻かれた下降点があるとのことでしたが、よく分からず。
60mシングルロープで2ピッチの懸垂下降。2ピッチ目の下降点がなんとも微妙な向きに生えている木と、ボロボロの残置スリングで恐ろしかったです。ブッシュも多く、回収時にロープが引っかかりそうだったのも地味に嫌な感じでした。
2ピッチの懸垂下降の後、まぁまぁそれと分かる踏み跡を辿って左寄りに下っていくと、明瞭なクライマー道(小面新道)に合流しました。そこから大面・小面間のコルまで5分とかかりませんでした。
下降はそんなに距離がないからとナメてかかったので、下山用の靴を持たずにクライミングシューズを履きっぱなしでした。その判断は完全に間違いで、一刀の取り付きに戻った時には、一歩歩くごとに足先に激痛が走る状態に。12:30前には取り付きに戻ることが出来ましたが、あまりの痛さにモチベーションは完全に消失。本日のクライミングはここで終了としました。
帰りにカンマンボロンで相方のビレイをして、パノラマコースを経て植樹祭の駐車場に戻りました。
小面岩の一刀は、クラック&マルチ好きなら楽しめるだと思います。質の高いクラックのピッチや、冒険的なワクワク感、そして小面岩山頂からの眺めなど、一言では言い表せない、様々な楽しさが詰まった瑞牆ならではのルートでした。
装備など
ロープ:60mシングル
カム:C0.2×1、C0.3~4×2、C5~6×1
ヌンチャク:アルパインドロー×6本
スリング:120cmで問題なく支点が作れました
あとはマルチで使いそうなギア一式
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