【瑞牆山】カンマンボロン ワイルド・アット・ホーム

9月後半の瑞牆山で、マルチピッチクライミングをしてきた時の記録です。パートナーは前回の大面岩・フリーウェイに引き続き湯川さん。

 

場所:奥秩父、瑞牆山、カンマンボロン

山行日:2022年9月29日

種類:マルチピッチクライミング、日帰り

メンバー:ディーアイ、湯川

 

瑞牆山マルチピッチ ワイルド・アット・ホーム

 

概要

瑞牆山を代表する巨大岩壁・カンマンボロンに開かれた初のフリークライミング・マルチピッチのルートとして有名なのがワイルド・アット・ホームです。

 

ルート名:ワイルド・アット・ホーム

マルチピッチグレード:V-

ピッチ数:7p

登攀距離:160m

最高ピッチグレード:5.11b

 

アプローチ

瑞牆山の植樹祭駐車場の手前、通称『チップの駐車場』から、一般登山道ではない『パノラマコース』を進んでいきます。

チップの駐車場から出発

踏み跡やマークを頼りに進みます

カンマンボロンの手前は急登

ワイルド・アット・ホームの1p目取付き

取付き地点は階段状

 

クライミング

奇数ピッチは私(ディーアイ)が、偶数ピッチはパートナーの湯川さんが担当。このルートは、奇数ピッチに5.11台の核心が入ってくるので、是非お願いしますと担当させてもらいました。

 

1p目 5.11b 20m

見た目はすごく簡単そうだけど、実際に登ってみると嫌らしいスラブ。最初のボルトにクリップしてから小核心。少テラスに這い上がってから、隣のHappiest youのラインから離れて右へトラバース。バランシーな核心を越え、フレークを掴んだら後は落ちないように登るだけ。フレークでカムの#0.75と#0.4を使いました。

終了点は錆びたリングボルト3本で強度は非常に心もとない感じ。終了点のすぐ隣に#3か#4が入るフレークがあるので、命は自分のカムに預けたい(少なくとも10kNの衝撃には耐えてくれるはずなので)。

1p目をフォローで登る湯川さん

 

2p目 5.10a 20m

2p目はスラブ後コーナークラック

フレークからスラブ、そしてコーナーへと続くピッチ。リングボルトが多数打ってあるので、それがプロテクションとなります。上部のコーナーでカムも使用可能。
コーナーを這い上がったところにあるテラスでビレイ可。終了点は安心感のあるハンガーボルトでした。

 

3p目 5.11a 25m

3p目を見上げたところ

3p目は5.11aのエッジング系スラブ。見上げると上部が濡れていましたが「俺が登ったときもあそこは濡れてたけど、オンサイトできたよ。意外と持てる」と、パートナーより。

傾斜は緩いので、ところどころ休みながらエッジを拾って登っていきました。で、核心らしいところでホールドを持つと、やっぱり濡れていました。ウゲッとなりましたが、意外と大丈夫だと自分に言い聞かせながら登ったら、何とかなりました。

テラス上にある、2つ並んだハンガーでビレイ。ボルトのうちの1つはくるんくるん回る感じでしたが、多分大丈夫でしょう。

3p目を登ってくる湯川さん

濡れているのも含めて5.11aという印象。傾斜は緩いのできちんとルートを見ていけばオンサイトに向いていると思います。

 

4p目 5.10d 20m

ボルトに導かれてのハング直上はHappiest youのルート。ワイルド・アット・ホームは草の生えた浅い凹角状のボロいクラックから、ハングを左にトラバースする内容です。

ボロくて浅い凹角からハングを左へ

所々ボロくて怖いけど、丁寧に登れば5.10abぐらいな印象。

終了点はハングを抜けた先のコーナーにあり。こちらもちょっと頼りないリングボルトで、場所的にビレイちょっと快適ではないかも。

 

5p目 5.11b 25m

ワイルド・アット・ホームの核心ピッチ。

コーナー→スラブ状カンテ→トラバース→ダブルクラック→トラバース→スラブという、取付きから見上げただけだと全容が把握できない複雑なピッチです。ルートファインディングが完登のカギとなります。

最初のコーナーから最初のボルトに導かれるようにスラブ状カンテに入るのですが、そのままブッシュ混じりの汚いコーナーを直上するのもありらしいです。そっちの方が簡単とのこと。今回は本来のルートと思われるスラブ状のカンテを直上しましたが、高度感もあってちょっと怖かったです。核心部では落ちそうになりながらも何とか耐え、度胸試しみたいなトラバース~スラブを登って通称『太陽のテラス』と呼ばれる場所にある終了点へ。グレードにはルートファインディングとメンタル的な要素も含まれている印象。

ルート中にボルトは随所に打ってありましたが、出だしで#2、ダブルクラックで#0.5を使用しました。

5p目を登りきった先にあるビレイ点。ボルト1本と木を使う

奥に立派なラペルステーションがありましたが、そこまで行ってしまうとビレイが大変そう。次のピッチのセルフ&下降で使う用だと思われます。

快適な太陽のテラスから後続をビレイ

 

6p目 5.8 25m

5p目終了点からテラスを少し歩いてのスタート

5.11台のピッチを終えると、後は5.9以下のグレードとなるためメンタル的にはだいぶ楽になりました。とはいえ、ここは瑞牆なので油断は禁物。

6p目はワイルドなコーナー

コーナーはワイドクラックとなっている部分はあるものの、随所に打たれたリングボルトがプロテクションとなってくれるので、大きなカムがなくても安心(?)。

5.8とはいえ、あくまでも『瑞牆の5.8』といった内容でした。

コーナー先にあるテラスでビレイ。ラペル用のボルトもありました。汚い芯の見えたスリングが何本も巻き付けてあったので、次はナイフを持っていって要らないスリング類は回収したいと思いました。

 

7p目 5.7 25m

最終ピッチは見た目でビビるけど、進んでみたら普通にどうにかなる内容。

最終ピッチはトラバース後クライムダウン。見た目よりはカンタン

クライムダウンすると、完全にビレイヤーからは見えなくなるし、ロープの流れもかなり悪くなります。

プロテクションの取れないボロボロのルンゼを登っていくと、ラペルステーション付きの終了点が見えました。

今回はカンマンボロンの上まで抜けたかったので、中途半端な位置にある終了点は使わずその奥にあるワイドクラックから岩の上まで登っていきました。後で気づいたけど、終了点のある場所からワイドを登らずレッジを回り込むようにしても岩のてっぺんに抜けられそうでした。

一応この木でピッチを切ってみましたが、この判断は間違い

最後は普通に歩いて抜けられそうだったので、この辺かなと思った立ち木を終了点としてみました。あとになってわかったことでしたが、ここで切らなくてもワンピッチで岩の上まで抜けられました。

ロープはつけていたけど最後はビレイ無しで岩の上へ

ここが岩の上にあるワイルド・アット・ホームの終了点

 

カンマンボロンの山頂からは、素晴らしい展望が広がっていました。

圧倒的な高度感、上まで抜けきった時に見られる素晴らしい展望、そしてやりきったという安堵感と達成感。瑞牆でのマルチピッチクライミングは、本当に素晴らしい。

 

下降

カンマンボロン岩上にあるスリングの巻かれた立木から、懸垂下降を繰り返して取付きまで戻ります。

最初の懸垂では約25m下降して、6p目終了点まで。50mいっぱいで5p目終了点のある太陽のテラスまで降りられるそうですが、懸垂最初の地点の傾斜が緩くロープがスタックし易いため、最初は太陽のテラスまで2ピッチの懸垂で降りるのが無難だそうです。

カンマンボロン頂上の立木スリング→6p目終了点→太陽のテラス→鎌形ハング上(Happiest you)→2p目終了点→取付き。ダブルロープで5回の懸垂下降で、取付き地点の地上までもどってくることが出来ました。

 

カンマンボロンからパノラマコースを歩いて駐車場へ

 

感想

前回のフリーウェイではボロボロで散々な結果でしたが、今回はパートナーと共にノーテーションで全ピッチ完登できたのが良かったです。フリーウェイで花崗岩マルチを登る感覚が養われたというのもあったと思います。

ワイルド・アット・ホームはボルトも多く(と言っても、強度不明なリングボルトも多数ですが)、エグいワイドクラックもなかったので、登りやすいマルチピッチルートだと思いました。体感グレードというのにはもちろん個人差はあると思いますが、瑞牆にしては珍しく甘めかな?というピッチも多かった気がします。

上級者向け・敷居が高いイメージがあるカンマンボロン。全くの初心者向けではないし、相応の経験は必要ですが、カンマンボロンでまず手始めに登るのに良いルートだと思います。ベルジュエールや大面岩左稜線の次のステップとかに向いているかも。

 

装備など

クイックドロー×5本

アルパインヌンチャク×5本

カム(キャメロット)#0.3~#4×1セット

・Tシャツ→場所により肩や背中でフリクションかけたりしたので穴が空きました。高いのやお気に入りのTシャツは着ていかない方が良いかも。

・120cmのスリング→180cmも持っていきましたが出番なし。

・8.2mm 50mダブルロープ使用→ルートの終了点から懸垂下降になるので、懸垂の手間と回数を考えるとダブルもしくはシングル+バックロープがオススメです。

・どうせ懸垂で降りてくるので、アプローチシューズは取り付きにおいていきました。

 

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www.dimountainphotos.com