夏の穂高岳・滝谷クライミングに持っていった装備

夏(8月)の穂高岳・滝谷のクライミングで持っていった装備について。持っていく時に考えたことや使用してみた感想などをまとめてみました。

無雪期に滝谷のクライミングを検討している方の参考になれば。

★穂高岳・滝谷クライミングの山行記録★

 

登ったルートはドーム中央稜・クラック尾根です。新穂高から白出沢ルートを経由し、北穂高岳のテント場で1泊2日で行ってきたときの装備です。

 

 

無雪期の滝谷クライミングに持っていった装備

 

登山装備

メインザック(60Lくらいのやつ)

北穂高の幕営地点でテントを張るのでそこまで軽量化にはこだわらず、ロープもギアも全部収納できる大きめのザックを選択。

マウンテンハードウェアのサウスコル70というザック使用。コレ絶対70Lも入らないだろうというサイズ感ですが、とりあえず1泊2日のテント泊とクライミングギア一式は問題なく収納できました。

 

アタックザック

軽快にクライミングがしたかったので、コンパクトになるポケッタブルザックを持っていきました。ポケッタブルな製品の中では生地が丈夫なBDの製品(トレイルブリッツ12)を使用。

ただし、水分・食料、アプローチシューズ、保温着、エマージェンシーなど詰めていくと12Lだと結構パンパン(口が狭いので荷物の出し入れもしにくいし…)になってしまいました。12Lでギリギリ入ったけど、アルパインの場合はもうちょっと容量が入るものでも良かったかもという印象です。

相方は60Lザックに必要なものだけを入れ、軽量化して登攀に挑んでいました。大きなザックだとチムニーが登りにくそうでした。

 

シューズ

不安定な道はちゃんとした登山靴の方が歩きやすいんだけど…

北穂高岳のほぼてっぺんという滝谷まではアプローチが長いので、クッション性や快適性に優れたトレランシューズも候補に上がりましたがやめました。トレランシューズだとウェットグリップがイマイチな製品も多いので、濡れた岩場を歩くことになったら若干の不安があるからです。登山靴(ライトアルパインブーツ等)は、一般ルートでの歩行性能は良いのですが、クライミングの場面では重くて嵩張る荷物と化すため最初から除外。

アプローチシューズは当時アークテリクスのアラキスという、どちらかと言えば街履きやクラッグ向けのシューズしかなかったので仕方なくそれを持っていきました。この靴は、ビブラムの目がグリップソールが採用されており、岩のグリップ力はウェット時でも素晴らしいです。反面ゴアテックス不使用で雨天時の快適性は低く、ソールは薄いので足の負担は強いし、ソールパターンが浅くゴチャっとしたトレイルは歩きにくく、アッパーは薄いので防御力は低いです。岩でのグリップ力は良いものの、穂高に履いていくのはおそらく本来の用途外。しかし、不安定なアプローチで確実なグリップ力が欲しかったので、当時唯一手持ちのアプローチシューズなので仕方なく履いていきました。

結果として、岩場では安定のグリップ力を発揮してくれましたが、重い荷物を背負って長距離を歩く靴ではないな…。とはいえ、なんとかなりました。

相方はスポルティバのTX2のレザーバージョンを履いていました。ソールの厚さもグリップ力も安定感があり、素晴らしいと絶賛していました。

 

ヘルメット

ヘルメットはペツルのシロッコ。樹林帯のアプローチとかではメットしないので、軽いのがありがたい。

なんでもいいけど、落石が頭に当たる機会はそんなに多くないと思うので、持ってくのが楽な軽いのが良いかと。

 

テント

良い感じの2人ようテントをお互いに持ち合わせていなかったので、1人用のテント使用。最近流行りの完全ソロ用じゃなくて、横幅100cmぐらいあるヘリテイジのソロ・アルティメイトを使用。良いテントです。

明らかに使わないギアを全室とかに置いて使用すれば、寝るだけだったら2人でもなんとかなりました。2人で室内調理は狭くてちょっと無理なので、朝は出入り口を開放して外で火を沸かしましたが、風が吹き抜けるのでちょっと寒かったです。

 

マット・スリーピングバッグ

マットは岩稜帯を歩くので外付けしたくなかったので、インフレータブルの120cmマットレスを使用。マットでカバーできない足元はクライミングロープと空のザックを引いておきました。

夏山だし、保温着着れば大丈夫だと思って夏用の化繊の寝袋を持っていきましたが夜はちょっと寒かったです。

ケチな軽量化とか考えずに普通にモンベルの#3とか持っていけば快適に寝られたとちょっと後悔しました。

 

ヘッドライト

今回の行程では暗いうちから行動し始めるので、ライトは明るいモデルが必須。BDのストームをずっと愛用しています。ちょっとゴツいけど明るいしエネループ対応しているのでお気に入り。

 

クッカー・バーナー

夕食は湯を注げば食える系の質素なものだったので、軽量化を優先。嫁の持ってるバーナーがプリムスのP-115という軽量コンパクトなやつだったので借りました。クッカーはパスタもクッカーLサイズというやつ。

ジェットボイルも持ってるけど、これは確かに湯沸かしは早いけど最軽量というわけではないです。急いで湯を沸かしたいシチュエーションが思いつかなかったので、今回は熱効率は無視して我が家にある最軽量のバーナー&クッカーとしました。

 

水筒

とりあえず登攀中(ドーム中央稜&クラック尾根)はそんなに大量の水は飲まないと思ったので、500mLのナルゲンボトルを行動用メインに。後は汲んだ水を入れておくようにプラティパスの2.5Lをひとつ。

 

食料

1泊2日なので、栄養素とか豪華さとか別に考えずに、とりあえず腹が膨れればそれでいいぐらいの考えで好きなもん持っていきました。

行動食はチョコ、グミ、魚肉ソーセージ、inゼリー、せんべい等。余った分は朝夕食に追加。登攀中もグミを持っていきましたが、クライミング中は気が張っていたのか、何も食べなくても平気でした。

夕食はカレーメシ、即席ミニラーメン。

朝食はカロリーメイトとコーヒー。

 

ウェア

インナー

標高約3000mでストップ&ゴーを繰り返すクライミングとなるので、汗冷えを軽減するファイントラックのメッシュインナーは必須。狭いテント泊になるので、あまり臭わないようにメリノウールの半袖Tシャツを着ていきました。

臭いに関していえば、メリノシャツはたしかに下山後も臭くなかったですが、靴下が化繊のヤツ(薄い靴下は化繊のしか持ってなかった)で、寝る時テントの中は激臭でした。シャツだけ防臭しても、他の装備が臭けりゃ結局臭いというのが今回の学び。

 

保温着

標高が高く、風が吹くし、日も当たりにくいので、夏でも寒い

滝谷は早朝行動だし日も当たらないので確実に寒そう。樹林帯とか、日が昇った後は、夏の気温予報なので風がないと暑そう。暑いのに合わせるか、寒い時に合わせるべきか結構悩みました。

ちょい寒いときに着れる薄手のウインドシャツと、保温着にナノパフを選択。ダウン系だけだと行動(クライミング)中着るには嵩張るので、停滞時のダウン(インサレーション)に加え、薄手の保温着もあると良です。

ナノパフを羽織っても寒い時は寒かったですが、まぁなんとかなるレベルでした。これ以上持ってくと嵩張るので、次回も同じような服装で行くと思います(予報気温にもよりますが)。

 

アウター(シェル)

スタート直後から雨だったので、ブラックダイヤモンドのレインウェア(ファインライン・ストレッチレインシェル)を着用。

稜線上は常に風があったのと、滝谷登攀中も風が抜ける箇所が結構あったので、風除け用にとクライミング中はずっとレインジャケットを着ていました。BDのレインジャケットはストレッチ性がありフィット感が良いのでクライミング中に着続けていてもストレスは有りませんでした。

BDのレインウェア、4年ぐらい前に買ったやつですが、稜線上まで上がったところで首周りのメンブレンが劣化して剥がれているのを発見。大雨に降られたら浸水していたと思います。使われていた防水素材はBdryとかいうBD独自の2.5レイヤー系だったのですが、おそらく耐久性はそれなりっぽいです。最近は薄いヤツとかストレッチのあるヤツとか、各社いろんな防水透湿系の素材を出していますが、長期間にわたって安定した性能を期待するなら、やっぱりシェルはゴアテックスだと感じた山行でした。

レインパンツはストレッチ性があって評判の良いファイントラックのレインパンツ。小雨程度だったので今回は使用せず。

 

手袋

手がかじかんで冷えそうだったので、この時期の一般登山じゃまず使わないような春山用のグローブを持っていきました。

レザーでロープの操作がやりやすく、フリース素材のライニングがあるのでそこそこ保温性があるものです。結果的に言えばちょっとオーバースペック感がありましたが、寒いのは嫌ですからねぇ。ちょっと厚めでも間違いはなかったかと。

 

その他

ネックウォーマーにも使えるBUFF。メットの下に着用しても違和感のない薄手のキャップ。汗拭き&結露取り&下山後の温泉に使えるマイクロファイバータオルなど。

 

クライミング装備

ロープ(50m×2本)

ロープが屈曲するルート取りになりがちなので、ダブルが良い

8mmぐらいのハーフロープを相方と1本ずつ、計2本。今回登ったルートはロープの屈曲やスレが生じる場面も多々あったので、登る時はダブルが無難かと。

ドーム中央稜とクラック尾根に関して言えば、懸垂は25m(50mロープ1本)で十分足りました。

 

カム・ナッツ類(プロテクション)

カムは#0.2がひとつと、#0.3〜#2が2セット。途中のピトンもプロテクションとして使えるし(強度とか信頼性は…ですけど)、結果論から言えばカムは1セットでもどうにかなりました。カム(プロテクション)をどれだけ持っていくかは、クライマーの登攀力や安全に対するマージンの考え方にも寄ります。

#3以上が使えそうな割れ目もありましたが、無くてもどうにかなるレベルかと。

ナッツは持っていきましたが一回も使いませんでした。

 

ヌンチャク(クイックドロー)

クイックドローも何本か持っていきましたが、メインで使ったのはカラビナ2枚を60cmのダイニーマスリングで繋げたアルパインドロー。

ロープの摩擦を軽減するため、延長して使うことが多かったです。

クイックドローのハンガー側のカラビナは、ペツルのアンジュが最高でした。ノーズ部分がスムーズな形状なので、変な位置にある曲がったピトンとかにクリップ/アンクリップが非常にやりやすい。

 

クライミングシューズ

アルパイン用の緩めのクライミングシューズを持っていなかったので、手持ちの中で一番痛くなく、スメアもエッジも両方そつなくこなせるスクワマを持っていきました。

相方はBDのアスペクト。クラシカルなデザインが滝谷の雰囲気には合う。

まぁ、そこまで難しい登りはないし昔の人は登山靴で登ってたぐらいだから、そこまで靴選びにはシビアにならなくても良いかなという感想です。

 

ハーネス

BDのヴィジョンっていうアルパイン向けの超軽量ハーネス使用。ハーネスとしてフル機能が備わっているのに軽くて薄いという製品です。軽量コンパクトで持ち運べるのが良い点ですが、長時間ぶら下がっているとハーネスが食い込んでちょっと痛いというのが欠点です。普通に使えました。

今回登ったルートは懸垂も短いし、繰り返し墜落するわけでもないし、ハンギングビレイもなかったので、ハーネスに対する要求度は高くないと思いました。強いていうなら、やっぱり軽くて薄いのが長いアプローチで持ち運ぶ際にちょっと楽できます。ハーネスひとつの重量差なんて微々たるもんですが。

 

ランナー

ドーム中央稜の終了点はピカピカのアンカー

終了点を作る用に、120cmのと180cmのスリングを持っていきました。ドーム中央稜に関してはキレイなステンレスハンガーが終了点になったので、120cmのスリングがあれば問題なく終了点&ビレイ点が作れそうです。

クラック尾根では岩に巻き付けたり、残置ピトン使ったりして支点作成しました。特別長いのじゃなくてもなんとかなりそうな雰囲気。

 

ビレイデバイス

軽いのが良かったのでルベルソ。ATCガイドでも、懸垂下降が出来てフォローのビレイができるタイプなら何でも良いかと。

 

ギアラック

つるべで登る際にカムの受け渡しがスムーズになるので、2セットのカムはギアラックで持っていきました。

私とパートナーがそれぞれカム1セットをそれぞれギアラックに入れて持っていったのですが、パーティにひとつで十分でした。

 

 

無雪期の滝谷登攀を計画している方、装備の選択についての参考になれば幸いです。

 

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