SLCDの元祖、ワイルドカントリーが放つカミングデバイス『フレンズ』が2016年にモデルチェンジしました。
カムヘッドがシングルアクスル⇒ダブルアクスルへと変更になり、
サイズナンバーもブラックダイヤモンドのキャメロットと同じ0.5、0.75、1、2、3、4といった表記になりました。
これはある意味で、SLCDのデファクトスタンダードとなったブラックダイヤモンドに対する敗北宣言といってもいいでしょう。
しかし、今回モデルチェンジしたフレンズは、キャメロットC4の後発品となるので、性能的にはキャメロットを上回っているはずです。
今回、ブラックダイヤモンド勢が大多数を占めるクラック・クライミングの中において、マイナー機材であるワイルドカントリー製の新型カムを入手し、しばらく使ってみたので、レビューしていきたいと思います。
ワイルドカントリー・フレンズってどうよ
購入動機
ディーアイのフリークライミング仲間は何人かいますが、1名を除いてクラック未経験者でした。当然カム類も未所有。
そんな彼らにクラック・クライミングの魅力をお伝えするために、フレンズ1セットを購入した次第です。もともとキャメロットは1セット持っていましたが、それだけでクラックに行くのは心許なかったもので…。
ボーナスが入ったばかりで懐が暖かかったのと、某海外通販で1本約6000-7000円という破格のプライスで売り出されていたので、酒に酔った日、思わずポチっとしてしまいました。
手元に到着したばかりの新型フレンズ。0.5、0.75、1、2、3。
4番までラインナップされていますが、そもそも4番の使用頻度はそんなに高くなかったので買いませんでした。3番もいらなかったかも?
スペック
2軸構造により幅広いレンジに対応したSLCD(Spring Loaded Camming Device)
Made in UK
12mmのダイニーマスリングは10cm→18cmに延長可能。延長のためのスリングやヌンチャクを省けるため、トータルでの軽量化が可能。
ホットフォージド製法により高強度のヘッド。
アナダイズド加工されたヘッドの設置面を削り出し、フリクション性を向上させている。
サイズは0.5、0.75、1、2、3、4の6種類。
#0.5 20.6-34.5mm 12/10kN 88g
#0.75 25.8-43.0mm 12/10kN 102g
#1 31.7-53.6mm 12/10kN 123g
#2 41.5-69.3mm 12/10kN 142g
#3 52.7-88.0mm 12/10kN 192g
#4 66.8-112.1mm 12/10kN 260g
キャメロットとの比較画像
新型フレンズとキャメロットC4との比較画像。
左がフレンズ、右がキャメロット。
ヘッドがダブルアクスルかつ、カラーコードも同じなので、ぱっと見よく似ています。
ほんの少しフレンズの方がカムローブが大きめです。
フレンズの方が肉抜き加工が細かく、個人的にデザイン的にはフレンズの方が好きです。
ヘッド部を頭側がら見た画像。左がフレンズ、右がキャメロットです。
フレンズの方はヘッド部分のアナダイズド加工が初めから削り出されているのが特徴的な感じです。
ヘッド部分をアップ。左がフレンズ、右がキャメロット。
サイズ感は『ほとんど一緒』ですが、微妙に大きさは異なっています。
カムローブ接地面の幅が、フレンズの方が僅かに大きいです。幅が広い方が岩との摩擦が大きくなって安定性が増す…ような気が。
フレンズとキャメロットの相違点
NEWフレンズとキャメロットC4、基本的にはほとんど一緒です。
トリガーの引き具合も、旧型フレンズはキャメロットよりも明らかに引きが重かったですが、新型になったらキャメロットとほぼ変わらない印象を受けました。
フレンズに付いているスリングは12mmダイニーマ製の二重スリング。
カラビナの架け替えでスリング全長が10cmから18cmに延長できます。
ハングや屈曲の多いルートの場合、キャメロットだと別途スリングやヌンチャクをつけて延長を行うことになりますが、フレンズの場合だとスリングを延長できるので、トータルでの軽量化が可能ということらしいです。
ディーアイはこの機能をほとんど使ったことがないです。
結局フレンズを使うルートではキャメロット、ナッツ類なども一緒にギアラック下げていくので、そうなるとカラビナ、ヌンチャクとかも一緒に持っていくことになります。自分の使い方ではフレンズのダブルスリングはトータルでの軽量化に貢献していませんね。
ヘッドのアナダイズド加工が削ってある影響?
アルミの材質がキャメロットより柔らかめ?
それともたまたまなのか?
そんなに激しく繰り返し使っているわけでもないのに、フレンズのヘッドの一部分が少しえぐれています(写真左上のカムローブ)。
以前から所有しているキャメロットの方が激しく、回数も多く使っているはずなのに。キャメロットの方ではこんな削られ方はしていないです。
フレンズの方がアルミが若干柔らかめという印象を受けます。
NEWフレンズとキャメロットX4の比較画像。
ディーアイ所有のキャメロットは、0.75以下はX4にしています。
キャメロットX4…大好きです。フレキシブルなステムと、耐久性の高いアルミビーズによるステム部の保護。コンパクトなカムヘッド…。とにかく色々と使い勝手が良いですね。
ヘッド部の幅は、X4と比較するとフレンズはかなり幅広です。幅広の方が岩にセットした場合安定はします。しかし、ポケットなどの限られた幅しかないクラックにセットする場合、カムヘッドはコンパクトな方が有利です。
クラックは細くなればなるほど、幅が均一でなくなってくる傾向があるので、個人的にスモールカムはヘッド幅が小さい方が好みです。
フレンズとキャメロットを比べてみて
キャメロットC4と比較した場合、フレンズはどうかというと…
そんなに変わらん。
というのが正直な感想です。
本当に、好きな方使えば?というぐらいどっちでもいいような気がします。
キャメロットC4の代わりにフレンズを使えば登れるとか、フレンズを使ったらカムが外れて死ぬとか、そんなことは全く無いですね。多分。
しかし、同時期に発売されたキャメロットULと比べると話は別。
クラックの新人がカムをどれか1セット揃えるとしたら、断然キャメロットULをおすすめします。
以下にスペック比較を。(2018.4.6現在。値段は税率8%込み)
フレンズ
#0.5 20.6-34.5mm 12/10kN 88g ¥10,800
#0.75 25.8-43.0mm 12/10kN 102g ¥10,800
#1 31.7-53.6mm 12/10kN 123g ¥12,420
#2 41.5-69.3mm 12/10kN 142g ¥12,420
#3 52.7-88.0mm 12/10kN 192g ¥13,500
#4 66.8-112.1mm 12/10kN 260g ¥15,120
weight 907g
price 75,060yen
キャメロットC4
#0.5 19.6-33.5mm 12kN 99g ¥7,884
#0.75 23.9-41.2mm 14kN 119g ¥7,884
#1 30.2-52.1mm 14kN 136g ¥7,884
#2 37.2-64.9mm 14kN 155g ¥8,028
#3 50.7-87.9mm 14kN 201g ¥8,640
#4 66.0-114.7mm 14kN 289g ¥10,800
weight 999g
price 51,120yen
キャメロットUL
#0.5 19.6-33.5mm 10kN 74g ¥10,800
#0.75 23.9-41.2mm 12kN 89g ¥10,800
#1 30.2-52.1mm 12kN 101g ¥10,800
#2 37.2-64.9mm 12kN 126g ¥12,960
#3 50.7-87.9mm 12kN 167g ¥15,120
#4 66.0-114.7mm 12kN 225g ¥17,280
weight 782g
price 77,760yen
カムを1セット以上ジャラジャラ下げていくのは結構重いので、トータルの重量で大分軽量化できるキャメロットULが今のところイチオシです。値段は高いですが…
更に0.75以下のスモールカムは、個人的にはX4が好きなので、小さい方はそちらをおすすめしたいですね。
結局フレンズは買いなのか
上でも書いたとおり、使用感はそんなに変わらないです。
上記のカムの違いで登れた、登れない、死ぬ、死なないに関わってくる可能性は低いと思います。
そこで問題になってくるのが値段と重量。
安く済ませたいなら、キャメロットC4
軽くしたいなら、キャメロットUL
そうやって考えると、フレンズはどうしても中途半端で選択肢に入ってこないのが実情ですね…。
いやいや、フレンズにもひとつ、大切な選択理由があります。
それは個性です。
岩場でフレンズを使っている人は圧倒的少数派。フレンズはキャメロットの中でキラリと光る存在感ありです。
iPhone全盛期の中、あえてAndroidを使うような連中にこそピッタリではないでしょうか。
また、仲間とカム類を一緒に使って混在させる時に、フレンズだと取り違えの可能性を減らせます。
海外通販だとフレンズはキャメロットより安い設定だったので、そうなると値段でフレンズを選ぶのもありだな~なんて書くと代理店の刺客に狙われそう。
こちらの記事もどうぞ