前編からの続きです
厳冬期北アルプスの穂高山域、他人のトレースに頼らず、自分の力だけで登りたい。
その思いから2月に明神岳5峰を目指すことに決めました。
2月2日より釜トンネルから上高地を経て入山し、岳沢登山口へ。
初日は南西尾根入り口となる7番標識の少し先でテントを張りました。
2月3日
翌朝起きた時には、昨日自分がつけてきたトレースは消えていました。
夜中に吹き付け、テントを揺らしていた強風はいつのまにか止まっていました。
8:11 南西尾根の様子。当然ながら、トレースはありません。
厳冬期の北アルプスなので、ものすごく雪が深いのかと思っていましたが、意外にも雪は結構締まっていて、潜り込みは膝下ぐらでした。
少し悩みましたが、ワカンをつけない方が足が軽くていいと考えて、つぼ足で南西尾根を登っていくことにします。
9:38 写真ではわかり辛いですが、かなりの急登です。
9:38 太陽が出てくれると嬉しいです。癒される瞬間。
尾根と支尾根との分かれ道にあった空き缶。
天候が悪く、トレースがない状態での下山時ではありがたい目印。
10:28 傾斜が弱くなったところで一休み。
ここも下りの場合、どの方向に下ったらいいのかわかり辛い箇所ですが、そんなところはよく探すとマーキングテープがあったりします。
12:11 尾根っぽい地形。こういう場所は風が抜けるからか、雪が少なくて歩くのが比較的楽でした。
確かに思ったよりも雪は少なかったですが、すごい急登なので、目の前の斜面に積もっている雪が胸や目の高さまで達することもありました。
平均して腰ぐらいの雪の量。場所により硬いモナカ雪。
ストックで力強く叩かないと割れないくせに、体重をかけるとズボっと踏み抜く感じ。
そんな雪に悪戦苦闘しなかなか高度が稼げません。
この日は今日は午前中はガス、午後から天気が改善傾向の予報でした。
急ぎすぎると昼前の天気がイマイチな時に森林限界を超えてしまい、強風にさらされるのではないかといらん心配をしていましたが、それは自分の実力を過大評価した高慢な杞憂でした。
雪をかき分け、少し登って荒い息を整え、カタツムリのような速度で進んでいきます。
13:32 大分高度を稼いでくると雪庇の混じったナイフリッジ出現。腰まであるふわふわの雪と、雪庇のコラボは油断すると踏み抜いてしまいそうです。
13:35 帰りのことも考えて、雪庇をピッケルでカットしたり確実なステップを作る為に蹴りこんだりして時間をかけながら進みます。
ここで丁寧に道を作っておけば帰りが楽で安全になるので手を抜けないところ。
14:08 ふわ雪の下に岩が隠れていたりするので、油断できません。滑落したら救助は期待できそうにない状況です。
写真は撮り忘れてしまいましたが、ナイフリッジの後はちょっとした岩場がありました。II級ぐらいだったと思います。お助けロープもありました。
無雪期なら鼻歌まじりに越せるところですが、ホールドやステップにびっしり雪がついていて、無雪期と比べると意外にやっかいで気を抜けない場所でした。
14:52 森林限界は近いですが、傾斜はますます急に。
天候は回復し、見晴らしのいいところまで駆け上がりたい気分ですが、股~腰ラッセルのせいでなかなか進んでいけません。
15:12 上高地が見下ろせる場所に到着です。
急速に天候が回復し、陽光によって気温も上がってきたのでカメラのレンズが結露してしまいました。
15:16 5峰の肩です。
冬場に稜線でテントを張るのは強風に吹き飛ばされるリスクがありますが、これから風も弱まってくる予報なので、絶景ポイントに幕営して景色を楽しむことにします。
朝7:30ごろに出発し、ここまでほとんどの時間をひとりでの急登ラッセルに費やしたので非常に疲れました。
16:08 テント設営完了。
16:09 幕営地から。左からジャンダルム、ロバの耳、奥穂高岳山頂が見えます。
16:09 こちらは西穂方面。
夕暮れに染まる穂高の山々をゆっくり堪能するつもりでしたが、相当疲れていたせいか、少し昼寝をする予定で横になったら、目が覚めた頃には暗くなっていました。
外は寒いし、風もそれなりに強かったので、雪を溶かし水を作って食事を終えたら、朝まで寝ることにしました。
いよいよ明日は明神5峰の登頂日です。