不定期休なのですが、今回は珍しく土日が休みになりました。一緒に登りに行くパートナーとは予定が会わなかったので、今回は単独で山を楽しむことにしました。
最近は人の多い山に行くことに対して、全く気が進まなくなってしまったので、土日でも静かな山域が良いなぁと考えていました(加えて景色が良いところ)。
中央アルプスの駒ヶ岳ロープウェイは、支柱に損傷が見つかったということで、しばらく休業中とのこと。冬の千畳敷を楽しみにしていた人や、駒ヶ岳ロープウェイの観光関係者には申し訳ありませんが、人影まばらで静かな中央アルプスを満喫させてもらおうと、伊那谷へと車を走らせました。
場所:長野県、駒ヶ根市、伊那前岳
登山タイプ:雪山登山(テント泊)
時期:2020年2月8日~2月9日
メンバー:ディーアイ(単独)
【中央アルプス】冬の伊那前岳
概要
伊那前岳は、標高2883m。中央アルプス(木曽山脈)の北部、千畳敷カールからほど近い場所にあります。伊那前岳は顕著なピークというわけではなく、中央アルプスという山塊を構成する一部分といった印象の強い場所です。
登頂までの最短ルートは、駒ヶ岳ロープウェイを利用し千畳敷からピークを目指す道です。しかし今回の山行(2020年2月)中はロープウェイは故障中で動いておらず、伊那前岳のピークを踏むためには麓から自分の足で登る以外の選択はありませんでした。
伊那前岳は非常に地味な山ではあるのですが、見方によってはそれなりに魅力的な場所でもあります。
特に、将棋頭山~木曽駒ヶ岳間のルート上から見る伊那前岳は魅力的で、伊那谷から立ち上がった稜線が、壁のようなボリュームを持たせながらに宝剣岳へと繋がっており、大きな迫力を感じさせます。
あの長い雪の稜線は、さぞ展望に優れているに違いない。そして、そこを歩いている間は(天気さえ良ければ)至福のひと時となることでしょう。
いつかはあの稜線を歩いてみたい。できたら下(伊那谷)から自分の足で歩いて、伊那前岳の山頂を踏んでみたい…と思っていては見たものの、やっぱり山が地味なこともあり、これまでなかなか足が向きませんでした。登山の出発点となる北御所登山口へは、基本的にしらび平行きのバスに乗ることになることが、足を遠のかせていた一因でもありました(自分の好きな時間帯にスタートできない)。
今回支柱の破損により駒ヶ岳ロープウェイは運休中。訪れる人が少ない今こそ、静かで快適な登山を楽しめそう…。今こそが木曽前岳を堪能できる大きなチャンスではないかと思い、山行を計画しました。
ちなみに北御所登山口までは除雪されるので、山中ある程度奥までは楽に入れます。ルート上は岩稜帯などの危険箇所はなく、この標高の山としては比較的登りやすい部類に入るのかな…と。
登山口までの道のり
適当なところへと車を停め、登山開始です。黒川平からはマイカー進入禁止となっています。
しらび平までの道は、普段ならバスで一瞬で通りすぎる(うたた寝している間に)のですが、今回は自分の足で歩きます。朝から気合を入れていかないといけません。
檜尾橋まで約1時間。菅の台から、ここまで歩いてくると凄く時間がかかる…というイメージを持っていたのですが、意外と早く着いたことに驚きです。
北御所登山口までなんとなく2時間を見ていましたが、約1.5時間ほどで到着しました。バスを使わず歩くと凄く大変だと思っていたのは単なるイメージで、普通に麓から歩いて行けるぐらいの距離だったのですね。(中房温泉まで歩いていくのよりも楽なのでは)。
北御所登山口では、嫌なものを見つけてしまいました。登山者が捨てていったと見られるゴミが、登山口標識周囲に散乱していました。こういう非メジャーなルートを好むのは、ある程度の登山経験者だと思うのですが、ベテランでもマナーが良いというわけではないらしい(憶測の域ですが)。涸沢岳西尾根でもゴミの放置があったし…。
ここで林道はまっすぐ続いていましたが、この標識のある場所で林道を離れ、登山道へと入ってきます。
うどんや峠
蛇腹沢登山口からは、本格的な登山道へ。最初は雪と地面が交互に出てくる感じでした。一応カレンダー上では厳冬期ですが、恐ろしいほどに雪が少ない…。
本日のものではなさそうですが、先行者のトレースも同ルートを辿っているようです。期待していなかったトレースというのは、あれば体力的に楽なので、登頂の可能性が上がってほっとしたものを感じます。反面、垢の浮いた二番風呂に入っているような複雑な気持ちがするのも正直なところ。
八ヶ岳のような山域ならば、トレースはあっても仕方ないのだけど…。
平地です。テント張れそうです。水場があるらしいのですが、雪に埋もれてしまっていて、発見できず。
うどんとか、なかなか気になる地名ですが、少し見晴らしが利くこと以外に何にも面白いところはなし。とりあえず休憩適地ではあるので一息入れました。
森林限界~テント設営
先行者のトレースが新雪によって完全に見えなくなっている割合が増えてきましたが、そこまで雪深くないのでつぼ足で行けました。
森林限界手前辺りから傾斜もきつくなり、それに伴って進行方向の積雪は膝から一番深いところで股レベルに。すぐ先に見えている森林限界を越えてしまえば雪面が締まってくる予想は立っていたので、今更ワカンを履く気にもなれず(面倒なので)、つぼ足で乗り切ります。
予期せぬトレースもあり、予想よりもだいぶ早く森林限界上に到着できました。ただし、ここからは吹きさらしになりそうです。実際、森林限界上に出てきた時から絶え間ない強風が吹いていました。
森林限界上はカリカリのアイスバーンで、防風壁も作れそうになかったので、安全な幕営場所を求めて森林限界と樹林帯の境目まで戻りました。
まばらな木々が生えている場所まで下ると、ガリガリの足元は柔らかな雪へと変わり、今まで吹き荒れていた強風がピタリと収まりました。
つまみは持ってきたのにビールを買い忘れるという痛恨のミス。奮発して大好きなビーフジャーキーを買ってきましたが、食べるのはぐっとこらえて次回の山行に持ち越しです。水をビールと思って啜ってみたものの、イメージの力だけではどうにもなりませんでした。
とりあえず、やることもないのでひたすら寝る。
伊那前岳山頂へ
周囲が暗いうちに目が冷めました。稜線にはガスがかかっている感じ。午前には寒気が抜けてガスが晴れる予報なので、焦ってもしかたがない。時々外の様子を伺いながらテント内で待機。
ヤマテンの木曽駒ヶ岳の予報気温はこの時間で-20℃ほど。思ったよりも寒くない感じがするが、温度計を持っていないので確かめる術はない。テントから頭だけ出して周囲を見回している間に鼻毛が凍ったような感覚があったので、それなりに寒いのだろうと思います。
とりあえずサッと山頂を往復するだけなので、食うだけ食ってから装備を身に着け、空身で出発しました。
夜中にいくらかの降雪があったようで、強風で雪が絶え間なく運ばれてくるのもあり、昨日せっかく森林限界上までつけてきたトレースがほとんど埋まっていました。とりあえず、昨日歩いたところは沈み込む量がマイルドなので、昨日の記憶を頼りに登っていきます。
森林限界を越えた辺りから絶え間ない強風が吹いていましたが、七合目~八合目間の風は特に猛烈でした。久しぶりに、風で身体が持っていかれそうになりました。時々耐風姿勢を取りながら進みます。写真を撮ろうにも、吹っ飛ばされそうになることがあるので踏ん張り気味で時間を掛けず撮っています(なので、構図がいつも以上に適当です)。
画像が霞んでいるのは少しガスが残っているからか、雪煙のためか…。
一応伊那前岳の山頂標識のところまで来ましたが、伊那前岳の山頂標識から奥にも小さなピークがアップダウンして続いています。三角点の関係からか、山頂部から一番手前側(伊那谷側)に山頂標識はありますが、最高点はもっと奥にある感じ。
せっかくここまで来たのだし、伊那前岳の最高点を踏んでみようと思います。
下山
顔がピリピリすると思ったら、顔に1度の凍傷が出来ていました。バラクラバ+ゴーグルで登っていたのですが、途中息苦しくて鼻の部分だけをオープンにしていたのが原因です。低温と絶え間ない強風にやられた模様。久しぶりにやってしまった。
テント内で食事と水分を摂って一休みしてから、テントを撤収して下山します。
帰りは来た道をそのまま引き返します。木々が疎らな場所は、風に運ばれてきた雪がトレースを隠していましたが、樹林帯は自分のトレースがしっかり残っていたので帰りは楽です。
拾って帰ろうかどうか迷っていた登山口のゴミですが、そのままにしておくのも気が引けたため集めてみました。食品の包装、使用済コンタクトケース、タバコ、OD缶など…。結構な量です。
オッサンの使用済ティッシュとか入ってたら嫌なので、手袋必須。集めたゴミは自分のゴミ袋でカバーして、ザックと雨蓋の間に挟んで持って帰りました。
北御所登山口からは、菅平方面へは舗装された歩きやすい道をダラダラ下っていくだけです。最悪何かが原因となってブッ倒れても業者の人とかが見つけてくれそうなので、安全圏と言っていいでしょう。
駒ヶ岳ロープウェイが運休なので、菅平~しらび平間のバスも運休していると思いこんでいたら、普通に走っていたみたいです。
「知らなかったあァァァァ!!!」
北御所登山口~中電取入口の間で拾ってもらったのですが、「料金は北御所登山口からということになりますが」ということ。折角バスが停まってくれたので、ありがたく乗せて頂きました。
おわり
装備など
撮影に使ったカメラはキヤノンのEOS Rという機種です。
使用したレンズはコレ1本。
ラッセルを想定してワカンを持っていきましたが、実際には使用せず。
テント設営で活躍。MSRのショベルを使っています。
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