1月の某日に2連休があって、計画さえしっかり立てれば天気もそれなりに持ちそうだったので、南アルプスへ登山に行ってきました。
冬に行くのはこれがお初となる農鳥岳です。
場所:山梨県、奈良田~農鳥岳
登山日:2019年1月14日~1月15日
登山タイプ:雪山登山、テント泊
メンバー:ディーアイ(ソロ)
積雪期の農鳥岳 【1月の南アルプス】
農鳥岳について
農鳥岳(のうとりだけ)は南アルプス国立公園内の赤石山脈(南アルプス)にある標高3,026 mの山である。山頂は山梨県と静岡県の県境にまたがる。日本二百名山、新日本百名山、及び山梨百名山に選定されている。
北岳・間ノ岳とともに白峰三山の一つに数えられる。名前の由来は、春に山頂東面に白鳥の形の残雪(雪形)が現れるためだとされている。
南アルプスにある3000m峰のひとつですが、名前や山容は少々地味ではあります。しかし、立派なスケールを持つ山であることは確かで、登り応えはあります。
積雪期でも出発地点は奈良田(もしくは林道)からであり、冬でも夏期(無雪期)と同様の地点から出発できるという、日本アルプスの中では貴重なルートがある山です。
今回歩いたルート
1月14日
登山口のある奈良田周辺には完全に雪はありませんでした。
登山口のゲートを過ぎてから、しばらくは雪のない林道を歩きます。
ちなみにラッセル(新雪を掻き分けながら進むこと)があるとだいぶ時間がかかると思ったので、周囲が暗いうちからスタートしています。
林道を歩き、吊橋を渡り、暗い中沢を渡ったりもしましたが、その辺の写真はナシです。
明るくなってきた頃。1月の半ばというのに、驚くほど雪が少ないです。厳冬期の南アルプスは北アルプスと比較すると雪が少ないとは言え、これは少なすぎ…。
2019年の1月は、かなり雪の少ないですね。雪がないので夏山登山とほぼ変わらないコースタイムで歩けてしまいます。
大門沢小屋がだいぶ近づいたころ、ちらほらと幸を目にするようになりました。
このへんで下山してきた登山者と遭遇。この日は3連休の最終日ということもあり、2人組2パーティと、単独1名とすれ違いました。
2018年の台風の影響で流された(?)橋。ルートは沢の向こうなので、流れが狭まっているところでジャンプして、沢を通過しました。
大門沢小屋間近のところで、ようやく雪道。何パーティも入ったっぽいので、トレースはしっかりしています。
大門沢小屋。冬季休業中。右の建物は冬季避難小屋として開放されています。
避難小屋の内部。40名ほどは余裕で収容可能な広さがありました。ここをベースにしてしまえば、テント分荷物は軽くなりそうですが、翌日は朝から天気が崩れる予報でした。この日のうちにできるだけ標高を上げておくプランだったので、避難小屋は利用せず。
避難小屋、標高は比較的低いところなので、ここを利用して農鳥岳山頂を狙うとしたら2泊3日になりそうですね。
避難小屋で少々休憩を取り、先へと進みます。本当に雪が少ない。
避難小屋を出た後、2本目の沢が最終水場でした。積雪期はバーナーで雪を溶かせば、どこでも飲料水は手に入りますが、結構時間と燃料を消費してしまいます。体力にはまだ余裕があったので、1.5Lほど汲み上げておくことにしました。
農鳥岳の稜線が見えましたが、雪はかなり少なそうですね。
思った以上に入山者がいたようで、バッチリのトレースが作り上げられています。
八ヶ岳でも登っているようだ…。
標高を上げると富士山が見えてきました。稜線から富士山の眺めが良いところが、南アルプスの魅力のひとつでもあります。
トレースはばっちりでしたが、久しぶりの3000mクラスの山、厳冬期テント泊フル装備だったので、結構疲れてきました。日頃からもっと登っておかないと、と反省。
尾根上にアイゼン(片方)を発見。このアイゼンの持ち主は、気づいたのかどうしたのか気になるところです。
スケール感のある、南アルプスの3000m級の稜線は間近です。
稜線上に到着。「雪少なっ!」
なんとか雪上に幕営。防風のためのスノーブロックが高く詰めませんでした。これ以上掘るとハイマツが出てきてしまいそうです。
1月14日~15日は風が弱目の予報だったので、これぐらいでもなんとかなると判断。
それなりに風はありましたが、厳冬期と思えばそよ風程度です。
テントの中では景色を見ながら酒と肴を楽しんだり、お湯を作ったり、昼寝をしたりして時間を過ごしました。
夕暮れの富士山。これが撮りたくて12-100mm(35mm換算で24-200mm)のレンズを持ってきたようなもの。
厳冬期のアルプスだとレンズ交換できる余裕が無いことも多々あるので、持っていくレンズはたいてい1本だけです。
夕暮れの塩見岳。
甲府盆地の夜景をテントの中から手持ち撮影。
周囲に人の気配はなく、この場にいるのは自分ひとりだけ。聞こえてくるのは風の音だけです。
「べ…別に人恋しくなんかないんだからねっ!」
山で使うのにオススメレンズ。マイクロフォーサーズ使っている人はぜひ!
1月15日
久しぶりの厳冬期稜線のテント泊。時折テントを揺する強い風や、結露した水分が霜となってパラパラ降り掛かってくるので時々目を覚まし、懐かしいものを感じる冬の夜でした。
1月15日は朝のうち晴れ、午後からは荒れる予報でした。
多分ご来光は見れるだろうけど、その後はガスに包まれていくんじゃないなかと予想していたので、4時半ごろには目を覚まして登頂への準備を開始しました。
まだ暗いうちから、ヘッドライトに明かりを灯して行動開始です。
稜線上から農鳥岳の山頂までは、夏山の標準コースタイムで1時間ほど。日の出時刻の約1時間前に出発です。最初はヘッドライト頼りでしたが、すぐに明るくなってきました。
農鳥岳山頂へ、最後の稜線歩き。
南アルプスの農鳥岳(3026m)に登頂です。
この時期にしてはそんなに風は強くないですが、気温も低いし、無風ではないので突っ立っていたらそれなりに冷えます。
寒さに震えながらご来光を待ちました。
富士山の脇から太陽が顔をのぞかせた瞬間。実際に気温が上がったわけではありませんが、太陽を見るだけでなんだか暖かくなったような気がします。
朝の光が、雪山を染めていきました。
標高日本第三位の間ノ岳(3190m)と、日本第二位の北岳(3193m)。時間と天候さえ許せばあの稜線を縦走したいものです。
北岳をアップで。
十分にご来光とモルゲンロート(朝焼け)を堪能したので、下山にかかります。
予報(予想)通り、南から不穏な雲が少しずつ湧いてきました。
塩見岳がガスに包まれ始めたところ。
テントまでもう少し(写真右端のやや下)。
テントに戻って撤収を完了したところで、稜線は南から迫ってきたガスに包まれはじめました。
南アルプスの稜線脱出。
ある程度下ってきたところ、上部は完全にガスに包まれています。計画通り、山での絶景のオイシイところを頂きました。
下山中、雪というかアラレがパラパラと降ってきました。
人工物のあるところまで降りてきたら、ホッと安心。左の氷瀑が気になる。
他にも大門沢沿いのルートには、登れそうな氷瀑をいくつか目にしました(楽しいかどうかは別として)。
吊橋を渡ったあとは、堤防を進み…
最後は舗装された林道を下るのみです。
無事下山。天候が崩れるタイミングをバッチリ当てられたので、美しい朝焼けも見られたし、楽しく充実した登山でした。
撮影機材について
今回の山行では、撮影機材はOLYMPUSのOM-D E-M5 Mark II(ボディ)と、M.ZUIKO DIGITAL 12-100mm F4 IS PRO(レンズ)を使用しました。
ボディ・レンズともに防塵防滴機構搭載、-10℃の動作保証付きです。
それだけのスペックがあれば厳冬期の南アルプスでもバリバリ使えると思っていました…が、カメラが思いの外寒さに弱くて、ちょっとガッカリです。
夕方から朝方にかけて、多分気温は-15℃前後でしょうか。このへんは正確に測定したわけではなく、自分の感覚的なものです。経験上、-10℃以下、-20℃には確実に届いていない感じ。
夕焼けや夜明け前の撮影を行おうとしたところ、それまでバッテリー残量は「■■■」で十分あったにも関わらず、突然「□□■」のもうすぐバッテリーが切れそうです表記に。起動から30秒くらいで「バッテリーが無くなりました」のメッセージと共に、電源が強制OFFになってしまいました。一応電源を入れ直せばちゃんと再起動してくれるのですが、その後20-30秒でバッテリー切れ表示とともに強制電源OFFへ、の繰り返しでした。
撮影に関しては快適とは言えず、結構イライラでした。キヤノンのEOS 6Dは、-20℃ぐらいになると液晶の表示が多少遅くなりますが、問題なく使えていたので、厳冬期の安定性ではやっぱりレフ機なのか…。
OM-D E-M1 Mark IIだったら、大丈夫だったのか?
E-M5 Mark IIの厳冬期の動作安定性については、もう少し検証が必要そうです。
最後に一言
正直言って、雪は驚くぐらいいに少なかったし、トレースはバッチリあったので、思った以上にアッサリと登れてしまいました。出発前にはそれなりに覚悟して挑んだだけあって、少々拍子抜けではあります。
これで「厳冬期の南アルプス3000m峰を単独で登った!」とドヤるのは恥ずかしいレベル。
冬山の本気はこんなモンじゃないはずなので、これからも安全に気をつけながら山を楽しんでいきたいです。
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