八ヶ岳で「幻の氷柱」と呼ばれているクリスタルタワーという氷瀑を登りに行ってきました。
クリスタルタワー(別名:鼻水)が氷結して下まで繋がるのは何年かに一度とのこと。2019年/2020年シーズンは記録的な暖冬でアイスのハズレ年ではありましたが、2019年の大型台風の影響もあってか、おそらく山は保水しており標高の高い(気温の低い)八ヶ岳の上部では場所により氷が発達したようです。
場所:長野県、八ヶ岳
登山タイプ:アイスクライミング(日帰り)
時期:2020年1月30日
メンバー:ディーアイ、E中、横
八ヶ岳 クリスタルタワーとワカンハイキング
ことの始まり
先にも書きましたが、2019年/2020年の冬シーズンは暖冬でアイスの大外れ年。日帰りでアイスクライミングをするとなると、標高が高く気温が低い八ヶ岳ぐらいしか選択肢がないという状況でした。そんなわけで、その日も八ヶ岳のジョウゴ沢かどこか、何かの用事で赤岳鉱泉付近を歩いていました。その時何気なく赤岩の方に目をやると、クリスタルタワーらしき氷が発達しているのに気が付きました。
下部は氷が細そうですが、なんとか下まで繋がっていそうです。
最近知り合った山仲間の横さんと、どこか氷に登りに行こうかという話をしていたところ、強靭なクライマーであるE中さんから「お暇ですか」のお誘いが。
行き先に迷っている旨を伝えたついでに、何の気無しに「クリスタルタワーが凍っていて登るかもしれませんね~」と写真付きで伝えたら、何やら盛り上がってきてしまい、クリスタルタワーを登りに行くことが決定。
ちなみにクリスタルタワーは、「幻の氷柱」であると同時に「八ヶ岳最難」のアイスルートらしいです。今までは二の足を踏んでいましたが、E中さんが来てくれるというのが心強く、まぁリードは無理でもトップロープで触らせてもらえばいいやという算段もありました。
かくして私、横さん、E中さんと、長野移住組という謎の共通点がを持つ男3人で、2020年1月30日、八ヶ岳に向かいました。
クリスタルタワーへ
所々凍結している美濃戸林道ですが、チェーンを履かせた四駆の車で問題なく突破。前の記事でも言いましたが、今季一番の買い物はタイヤチェーン。
赤岳山荘で駐車料金を払い、出発です。
E中さん、横さんともに体力アリアリでついてくのが大変。ちょっと写真を撮っていたらあっという間に置いていかれそうになります。
この日は稜線は荒れ模様の天気。美しい山々が見えないのは残念ですが、クリスタルタワーは日当たりが良い場所にあり、この暖冬の影響で崩落のリスクがないわけではないです。ある意味日が差していなくて良かったのかもしれません。
赤岳鉱泉の手前にて、クリスタルタワーが見えました。ちゃんと残っていてくれてヨカッタ。
赤岳鉱泉に到着。アイスキャンディーも立派に成長しています。暖冬の影響で、標高の低い場所では氷の発達は絶望的ですが、それでも赤岳鉱泉ぐらいの標高になるといくらか寒いので、氷瀑が発達するような気温となるようです。
ちなみに前日までに40cmほどの降雪があり、大同心沢やジョウゴ沢へのトレースはありませんでした(硫黄岳へと向かうトレースはあり)。
雪がないと金属製の階段がある場所。廣川本(白山書房のアイスクライミングルート集)では「木のハシゴ」と表記されている場所だと思われます。廣川本ではここから沢に降りていく…ようなことが書いてありました。
しかし我々は、もうちょっと行った先からトラバース気味に下った方が早いんじゃね? と誰かが言い出し(俺か?)、金属製の階段を通り過ぎ登山道が折れ曲がっているところまで直進。
しかし、歩き出してすぐに下れないほどに急斜面の沢に出くわしどん詰まり。
結局金属の階段(廣川本では木のハシゴ)のところまで戻り、沢状地形の急斜面を下っていくことになりました。
適当に斜面を下っていくと、クリスタルタワーが見えてきました。方向性としては間違っていなさそうです。
ある程度下ると、赤岩の頭を源頭とした広めの沢に合流。そこから少し沢を登り、クリスタルタワーがあると思しき支流へと方向を転換して詰めていきます。
岩の後ろにクリスタルタワーが。雪が薄くなり、傾斜も無くなってきたのでワカンからアイゼンに装着し直します。
いよいよクリスタルタワーが目前に…
そこで、皆一同嫌なものを見てしまいます「下まで繋がってない?」
クリスタルタワーは下まで繋がっていませんでした。氷の形状からすると、自然に壊れた? 誰かが蹴って破壊した?
登るかどうするか一同で協議した結果、3人のうちで最も強いE中氏がとりあえず登ってみるとのこと。もし危険そうなら途中で諦めるかもしれないと言いながら取り付きました。
氷柱を直登すると最初に足がないので、左側のミニ氷瀑を登ってから、クリスタルタワーに乗り移るという登り方で行くことに。
ディーアイ(私)がビレイ。以降、登っているところの写真は無し。
こんな氷結具合なのでE中さんも緊張している様子でしたが、すんなりとリードで上まで抜けていきました。下まで繋がっていない氷は折れやすいので、「叩けば叩くほど自分の命を削っているようで怖かった」とのことです。
上の灌木が支点にできるとのこと。ロープは50mでギリギリ足りました。E中さんがロープを掛けてくれたお陰で、トップロープでクリスタルタワーに登らせてもらいました。
とりあえず、登ってみての感想は、自分にはまだリードは無理だなということ。八ヶ岳最難と言われるだけあって、今まで登った氷瀑の中では最も難しかったです。E中さん曰く、グレードはVI-ぐらいとのこと。
私と横さんは、1本ずつ登っただけで結構腕にきてしまいました。このままここで登り続けるのも良いですが、結構風が抜けて寒かったのと、まだ時間が早いというのもあり、せっかくここまで来たんだから、(比較的)近くにある『赤岩の氷柱』という氷も登りに行こうという話に。
一同クリスタルタワーを後にし、赤岩の氷柱へと向かいます。
ワカンハイキング
一応E中さんは過去に一度赤岩の氷柱へと行ったことがあるそうですが、今回のようにクリスタルタワーからトラバース気味に行ったことはない(下から沢を詰めたことしかない)とのこと。我々のもとにあるのは、廣川本からコピーしてきたざっくりとした地形図のみ…。
それでもまぁなんとかなるだろうの精神で、適当に尾根と谷を越えて歩いていきます。
いくら暖冬少雪の八ヶ岳といえど、40cmほどの降雪直後で、さらに誰も入っていない道なき道を行くのはかなり骨が折れました。
つぼ足では遅々として進まないため、一度荷物をおいてワカンを装着。
スノーシューハイキングならぬワカンハイキングの始まりです。ハイキングと言うよりは、彷徨という方が近いかもしれませんが…。
それっぽい谷をちょっと詰めてみたり、割と開けた尾根上に上がって周りを見渡したりもしたのですが、赤岩の氷柱は一向に姿を見せてはくれません。
どうするか相談した結果、赤岩の氷柱は諦めて下山することに。
なんだかよくわからない沢を適当に降りた結果、峰の松目沢の分岐がある北沢登山道のところに出ました。
そこから赤岩方面を見上げてみると、赤岩の氷柱らしきものがちらりと見えましたが、散々雪をかき分けて歩いてきたので、今更登り返す気にはなれずに下山の方向に。
おわり
装備など
ウチでは「廣川本」と呼ばれているアイスクライミングの定番ルート集。
今回の山行では3人ともペツル・ノミックを使用。アイスクライミング用の定番アックスです。
降雪後の山ではワカンをどうぞ。
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