2020年のアイスクライミング始めは。八ヶ岳の阿弥陀岳の沢である、広河原沢左俣へと行ってきました。
先シーズン(2019年)の同時期にも同ルートを登りましたが、上部での氷の発達が悪くて引き返してきたことがあります。
今回で1年ぶり2回目となる、広河原沢左俣を目指しました。
場所:長野県、八ヶ岳、阿弥陀岳、広河原沢左俣
登山タイプ:アイスクライミング(日帰り)
時期:2020年1月5日
メンバー:ディーアイ、じゅん
【八ヶ岳アイスクライミング】広河原沢左俣
ルート概要
阿弥陀岳南稜などのルートの出発点となる、舟山十字路に駐車。そのまま林道を詰めて広河原沢を左俣へ。それから御小屋尾根の一般登山道に合流し、阿弥陀岳へ登頂。登頂後は御小屋尾根を下って舟山十字路まで戻りました。
出発点:舟山十字路(約1600m)
登路:広河原沢左俣
下降路:御小屋尾根
最高到達点:阿弥陀岳(2805m)
アプローチ
舟山十字路に車を停めて、登山開始。
ゲートを過ぎて林道を道なりに進みます。林道は凍結していてよく滑る。チェーンスパイクを持ってこればよかったと後悔しても時既に遅し。
林道終点あたりで対岸へ、堤防を越えて少し沢を遡ると、広河原沢は左右に別れます。
沢の分かれ目にテント適地あり。正月休みの最終日ということもあり、予想通り何針ものテントがありました。
沢を詰めていくと、両壁が狭まったところに到着です。ここが広河原沢左俣の実質取り付き地点。最初の氷瀑が出てきます。
7名ほどの先行パーティーが今出発しようとしていたところだったので、その姿を見送りながらアイゼンとハーネスを装備を装着しました。
氷の谷へ
広河原沢左俣は、変化に富んだ地形の中で10m前後の優しい氷瀑が断続的に出てくる、楽しいアイスクライミングルートです。
広河原沢の左俣の氷瀑の多くは、高さもなく傾斜も緩やかなものがほとんどで、アイスに多少の経験がある人ならフリー(ロープ確保なし)で楽しく登れるところが多いです。勿論、落ちたら怪我をする高さなので人によってはロープが必要なので要判断です。
先シーズンは積雪が少なく、場所によっては氷の廊下となっていましたが、今回は氷のナメはほとんど雪に埋まっていて少し残念。
水流沿いの極々のところを、沢に落ちないようヒヤヒヤしながら進みます。ゴルジュ帯を抜けると、見晴らしルンゼと左俣の分岐となります。左俣は本流を直進。
2番目の滝で先行パーティがロープを出していたのでしばし待機。
2番目の滝を越えてから暫く進むと再びのゴルジュ帯。ついつい見入ってしまう不思議な地形。両岸に聳え立つ岩壁に圧倒されます。
3番目の滝前で猛烈な空腹に苛まれたので早弁。
先行の大所帯パーティがリードで登る準備を整えていたので、その合間にフリーでさっっさと抜けさせてもらいました。
3目の滝を含め、そのあたりから傾斜が緩めの10m前後の滝が連続して出現します。全て正面から突破しました。
3~6番目の滝と滝の間は、雪の上を歩いたのですが、先シーズンとは随分と様子が異なりました。
先シーズン、3~6番目の滝がある場所は、沢床が一面凍結しており壮観でした。今シーズンは滝以外は雪に埋もれていたので、少し残念。雪の少ないシーズン始めあたりを狙って来るのが良いかもしれません。
それから少し左俣を登っていくと、水流があって直登不可能なチョックストーン(CS:挟まった岩)滝が出てきます。
CS滝の巻きは、狭い岩の出っ張りにアイゼンを載せ、岩にアックスをフックしたりしながら乗り越しました。リーチが届かない人はお助け紐とかあると助かるかも。
広河原沢左俣、ふたつあるうちの第一の核心部となる15m大滝です。ここまではロープを出さずに登ってきましたが、流石にここはロープを出しました。
スクリューは3本使用。
大滝を越えてすこし進むと、見上げるような巨大チョックストーン登場。廣川本では左から細い氷瀑を越えると書いてありましたが、とても登れるような状態ではなかったので、右から急斜面を登りました。
巨大チョックストーンを越えると、沢は一旦開け、それから10m前後の傾斜の緩い氷瀑が連続する地帯に突入。周囲の木々も高さがなくなってきて、標高を上げてきたことを実感します。
最後に出てくる滝が、広河原沢左俣の2つある核心部のうち、2つ目。
最後の滝は高さが10mと、最初の核心部である15m大滝よりも低いですが、特に下部はほぼ垂直で、10m滝の方が技術的に難しく感じました。スクリューは3本使用。
先シーズンに広河原沢左俣に来た時には、最後の滝は下まで繋がっておらず、悔しい思いをしながら引き返した記憶があります。今回、広河原沢左俣を最後の滝まで登れたことで先シーズンの悔しさを晴らすことが出来ました。シーズンごとに氷瀑の発達具合は異なるので、何度来てもその度に発見があって楽しめそうです。
阿弥陀岳山頂へ
最後の滝を越えた後は、沢をある程度まで詰めたら、御小屋尾根か阿弥陀岳の中央稜に乗り上げるのが一般的です。(沢を最後まで詰めるとラッセルが大変だし、登って楽しい氷瀑もないので)
最後の滝までは正月休みで着けられたであろう、先行者のトレースに助けられてある程度快適な歩行が出来ましたが、先日の積雪によって、詰めて行くに従って雪が深くなってきました。
御小屋尾根は八ヶ岳の中でも不人気ルートなので、休日というのにトレースはありませんでした。これ以降登攀装備は使う予定はないので、御小屋尾根上でハーネスとロープをザックにしまいました。
アイスクライミングだけを楽しむつもりなら、最後の滝を登った後に、氷瀑で懸垂下降を交えながら来た道を下っていくのが恐らく最も楽でしょう。
我々は登山からこの世界に入った身なので、折角なら山頂を踏みたいという欲があり、暗黙の了解的に阿弥陀岳の山頂を目指して登っていきました。
上の写真、左が中央稜。右が御小屋尾根です。広河原沢左俣を詰め上げる時にはどちらを上がっても良さそう。自分たちは御小屋尾根で下山予定だったので、御小屋尾根に上がりました。
御小屋尾根の後半は結構息が切れましたが、問題なく阿弥陀岳山頂に到着。
ヤマテンでは午後から天気が好転予報だったので、しばらく阿弥陀の山頂で天候の回復待ちをしました。30分ほど山頂で滞在しましたが、雲は切れそうでも切れなかったので、諦めて下山することに決めました。
下山路
阿弥陀岳山頂から、車を停めた舟山十字路を目指して下山していきます。
阿弥陀から舟山十字路への下山ルートとしては、(1)御小屋尾根、(2)阿弥陀岳中央稜と2つのルートがあります。そのうち阿弥陀岳中央稜はバリエーションルートですが、この時期は下降に使うクライマーも多いので、しっかりとしたトレースは出来ていそうな雰囲気。
今回は登山計画の段階で「御小屋尾根を経て下山」としていたので、計画通り御小屋から下りました。しかし、御小屋尾根の下山路は御小屋山での登り返し(少しだけど)があるので、手っ取り早く降りるのだったら中央稜の方が良かったかもしれません。
御小屋山山頂付近~舟山十字路間の道は、トレースが不明瞭な場合は、一部に謎のマーキングがあるため、惑わされて間違った方向に下山する可能性のあるルートです。積雪期・降雪後などトレースが消えた条件で、初めて下山路で使う場合には注意が必要かもしれません。トレースがついていたり、雪がない場合はそこまで迷わないと思うので、「道迷い注意!」というほどではないですが…。
道具・装備
「廣川本」と呼んでいるアイスクライミングのルート集
持っていけばよかったチェーンアイゼン
アルパインアイスでは軽量アイススクリューが軽くて良い
ロープは50mmのシングルロープ使用
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