場所:長野県、八ヶ岳、横岳
登山タイプ:アルパイン・アイスクライミング(日帰り)
時期:2020年1月10日
メンバー:ディーアイ、E中
大同心ルンゼ~小同心クラック継続
行き先の決定
不定期休である私とE中さんの休みが合ったのが、1月10日。その2日前である1月8日に、季節外れの「暖かい」雨が降りました。アイスクライミングの行き先を色々考えていましたが、標高が比較的低い場所の氷結状況は絶望的に。
直前まで行き先については決めかねていましたが、日帰りで、この暖冬で滝が氷結していそうな場所という条件で考えると、やはり安定して遊べるのは八ヶ岳。
私が大同心大滝は未踏だったこともあり、まず第一にしっかり氷結していそうな大同心大滝に行き先が決定。どうせなら山頂まで抜けるアルパインルートが良いのではないかということで、大同心大滝から沢を詰めて、そのまま小同心経由で横岳の山頂に立とうという話になりました。
アプローチ
暖かい雨が大量に降った後に気温が下がったので、美濃戸の林道はガチガチに氷結していました。ある意味核心となる美濃戸林道は、タイヤチェーンを履いたジムニーで問題なく通過。
どれだけ美濃戸の林道が凍結していても怖くない。この冬買ってよかったもののベスト5には確実にランクインするのがタイヤチェーン。
美濃戸にある赤岳山荘の駐車場に車を停め、歩き始めます。雪はこの時期としては異常に少なく、道は雨で流れた水が凍ってスケートリンク状態。初っ端からチェーンアイゼンを装着しての歩行となりました。
美濃戸(赤岳鉱泉)スタートだったので、休憩を入れずに赤岳鉱泉まで。軽くトイレと水分補給をしてから、大同心沢に向かいます。
大同心沢(大同心大滝)
赤岳鉱泉から硫黄岳へ向かう登山道へと進み、程なく大同心ルンゼの出合に到着。ロープをくぐり踏み跡を辿って大同心ルンゼへ。踏み跡から察するに、数日前に登山者は入ったようですが、この日は一番乗りです。
目指す小同心が目の前に聳え立っています。下界では暖かい雨でしたが、標高の高い場所では雪だったようで、南八ヶ岳の稜線は真っ白に染まっていました。
大同心大滝は三段でおよそ60mほどのスケール。そのうち一段目は雪に埋もれていたので、登りやすそうなところから適当に越え、雪で埋まった斜面を平らにならしてからクライミング用の装備を装着。
お互いに大同心大滝をリード登ろうという話になったので、E中さんが荷物を取り付きに置いた状態で、先行して登っていきました。
50mロープダブルで、E中さんがサクッとリードで突破。
大同心大滝を登り終えたE中さんは、懸垂下降で取り付きに。その後ディーアイ(私)が登攀用の装備を受け取り、大同心大滝をリードで登りました。
私は雑魚なので、途中でビビってテンションを入れてしまいました。ペツルのスリングはピンチの時、咄嗟に握り易いのでビビリな人にオススメです。
大同心ルンゼは、ほぼ大同心大滝の一発屋なので、それ以外にそれほど目ぼしい滝はありません。大滝を越えた後はトレースも微妙で、ラッセルが大変になってきました。適当なところから大同心稜に乗り上げることに。そのまま大同心沢を詰め上げて行けないこともないですが、その場合は結構悪いらしいです。
大同心稜~小同心へ
適当に急斜面を登っていくと、何度か通過して見慣れた大同心稜上に出て、他の登山者のトレースと合流。腹が減ったのでチョコバーを1本を食う。
平日ということもあり、本日はまだ誰も大同心~小同心には入っていない模様。赤岳鉱泉から誰一人として会っていません。ちょっと嫌らしい箇所もある、大同心~小同心間のバンドにはトレースなし。
小同心基部に到着。岩にはエビの尻尾がビッシリついて真っ白。先行者が登った跡は無く、雪が降ってから我々が恐らく一番乗り。
1P目は25m程度。小同心正面からやや左の凹角へ。雪がなければ難しくはないですが、今回は全てのホールドにエビの尻尾がくっついており、ホールドを探すのにエビの尻尾を払い除けなければいけません。中間支点を取れる場所も乏しく、見つけられた残置ピンは2つほど。
2P目はディーアイがリード。20~25m程度。クラックと言うか、チムニーの中を進む。無雪期だとガバガバのホールドだらけですが、今回は全てのホールドがエビの尻尾つきなので、アックスでガンガン叩いたりしないとホールドがまともに掴めません。
気休め程度の残置ピンを3つ発見。決して難しくはないが落ちられないところ。
2Pはチムニーを抜け出した先にある狭いテラス上が終了点。キレイなペツルのアンカーが2本打ってあります。
3P目はE中さんリード。一番難しいのは出だしのちょっとハングした場所を乗り越すところ。ハングした出っ張りを越えてしまえば大して難しくはないのですが、エビの尻尾がビッシリなので、それを落とさないとホールドがまともに使えません。
E中さんがガンガン落とすエビの尻尾の破片(実質氷)が、上から降り注いできます。ビレイしているディーアイは狭いテラスの上にいるので逃げ場が無く、頭上から降り注ぐエビの尻尾(実質氷)を、身を縮めながら耐えました(縮こまると氷の当たる面積が小さくなるのです)。上を見上げたくても氷が絶え間なく降り注いでいるので(顔面直撃しそう)、メットで氷が受け止められるようにじっと下を向き、人が登っている感覚を頼りに握ったロープを送り出しました。
そのうち小同心の頭から登って来いの合図が届いたので、フォローで3P目を登り、小同心の頂上へ。
小同心の頭でロープをほどき、目の前に聳える真っ白な横岳の山頂を目指します。
道中はガスったり晴れたりを繰り返す天気でしたが、横岳山頂へ向かう頃には、雲がいい感じに切れてきてくれました。
横岳山頂~下山
小同心から横岳山頂へ。
小同心から横岳山頂直下、一箇所だけダブルアックスで越した方が良いところがありました。雪の状況や、パーティメンバーの実力によっては要ロープ。その悪い一箇所を越せば、ほんのわずかな登りで横岳山頂に到着です。
横岳山頂(2830m)に到着。大同心ルンゼから小同心クラックを継続して登ってきたので、結構な充実感がありました。
小同心クラックのあとなどは、大同心稜から下ったほうが楽(?)で一般的なのですが、E中さんと「どうせここまで来たんだから山頂を踏んでおきましょう」ということで、硫黄岳を目指します。
充実の硫黄岳登頂も果たし、あとは赤岳鉱泉へと続く登山道を下っていきます。
迫りくる暗闇とのレースとなりましたが、なんとかヘッドライトを使うことなく美濃戸(赤岳山荘)の駐車場に到着。
E中さん、ありがとうございました。
使用した装備など
とりあえず登山道が氷結していることが多い八ヶ岳で、頼りになるのがチェーンアイゼン。無くてもよほど死なないが、あると非常に快適です。
ディーアイ、E中氏が使用するアイスアックス。
今回の山行写真で使用したレンズ。マイクロフォーサーズマウント対応。使用したカメラはOLYMPUS OM-D E-M5 MarkII。
パタゴニア・メンズ・マクロパフフーディ。アルパインアイスの保温着に活躍。ビレイ中に着ていました。
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