八ヶ岳を代表するアイスクライミングルートであるジョウゴ沢。アイスクライミングのシーズンインして間もない、雪の少ない12月に登ってきました。
場所:長野県、八ヶ岳、硫黄岳、ジョウゴ沢
登山タイプ:アイスクライミング(日帰り)
時期:2019年12月21日
メンバー:ディーアイ、じゅん
ジョウゴ沢 2019年12月21日
アプローチ
土日祝日休みの山仲間であるじゅんさんと予定が合ったので、アイスクライミングしに八ヶ岳へ。
12月だと、八ヶ岳とか甲斐駒とかの標高の高いところぐらいでしか滝は凍っていない感じ。そのため特にアプローチが楽な八ヶ岳付近に、アイスシーズンを待ち望んでいた多くのアイスクライマーが集結してくる印象があります。
土日のうち、日曜は天気がイマイチな予報だったので、天気の良さげな土曜は特に混み合いそうだと予想を立て、混雑を避けるため、まだ暗いうちに出発することにしました。
雪深いシーズンは、美濃戸口~美濃戸林道を運転するのは結構緊張感が伴うのですが、2019年の12月21日、美濃戸の林道には雪が無いという情報だったので、車で問題なく入れました(4WD+スタッドレス)。
6時前には美濃戸に到着して準備を整え、ヘッドライトの明かりをつけて登山開始。
アイスクライマーと思しき装備の人を追い越したりしながら、ほどんど雪のない北沢を通過し、赤岳鉱泉に到着。
鉱泉で軽く休憩してから、どうせF1かF2あたりで順番待ちになるだろうからと、アイスの装備も身に着けずに(順番待ちの間に着けてしまおうという考えのもと)行動再開。
赤岳鉱泉から硫黄岳登山ルートに向かう際に出合う3つ目(最後)の沢がジョウゴ沢。入り口に「ジョウゴ沢」書かれた標識もあります。
一般登山者が迷い込まないようにするため張ってあるロープをくぐって、沢を詰めていきます。
この年(2019年)は雪が少なく、沢沿いに歩くと歩きにくいし沢にドボンするリスクもある感じ。右岸(下流から見て左側)に明瞭な踏み跡があるので、それを辿って最初の滝まで歩いています。
アイスクライミング
F1*1というふうにに到着。登っている人は誰もいませんでした。後続が来るとこの先で順番待ちになってしまう可能性があるので、急いでアイスクライミング用の装備を身に着けました。
まだ時期が早く、氷結が薄いところがあるので、比較的氷が厚くて階段状になっているところを選び、フリー(ロープなし)で登りました。
F1を登ると遠目に立派な滝(F2)が見えてきます。土曜なので、朝早く出たとしても1~2パーティぐらいは先に登っていると予想していたのですが、なんと我々だけの貸し切り。
とはいえ、のんびりしていると後ろから誰か追いついて来る可能性も大いにあるので、さっさとロープを出して登ってしまいました。
F2は氷結が薄いところもあり、登れる場所は限られている印象。アイススクリューは比較的傾斜のある下部で2つ使用。
ジョウゴ沢F2は赤岳鉱泉からも近く、人気の氷瀑。登り切るとあちこち支点がありました。錆びた鉄杭や鎖、木にスリングが巻きつけてあったりと種類豊富。強度はまちまちなので、要注意。
F2のあとに出てくるF3は5メートルほどで、なんてことない傾斜の緩い滝。ロープも出さずにさっさと通過しました。
F3を登り切ると、沢は二俣に分かれています。右俣にも氷瀑はありますが、本流は左俣。今回は混雑を避けるためさっさと上まで抜けてしまう予定だったので、迷わず左俣を進んでいきました。
雪が非常に少なく、大小の岩がゴロゴロしていたので、アイゼンを履いた状態では非常に歩き辛かったです。しばらく歩きにくいゴーロ帯を進むと、両岩壁が迫るゴルジュ帯に突入。
滝の落口は流水なので、落ちないようにやや緊張しながらトラバース。雪が乗っていてどこまでが氷で、どこまでが岩なのか分からない…。
両岸が狭まるゴルジュ帯の中はナメ状の氷瀑になっています。こちらも容易そうだったので、ロープなしで通過しました。
ゴルジュ帯を通過すると支流に一際目を引く『乙女の滝』が見えました。氷結は薄く、安定したプロテクションを決められる場所も限られていそう…。
乙女の滝は登らず、左の本流へを進みます。『ナイアガラの滝』と呼ばれる滝がある支流をスルーし、本流をひたすら詰めていきました。
『ナイアガラの滝』のある支流をすぎると、いよいよジョウゴ沢本流の氷瀑は残すところあと2つ。
5mほどの氷瀑は、高さは無いが傾斜があって、ロープ無しではちょっと緊張しました。右側が2段になっていて登りやすそうだったので右から登りましたが、岩が多くてアックスを決められる場所が限られ、意外に登りにくかったです。
5m滝が意外に嫌らしかったので、ロープを上から投げ落とし、上にある頑丈な支点でビレイしながらじゅんさんに登ってきてもらいました。
両岸が狭まる特徴的な地形に、25mほどの氷瀑がかかっています。ここが『大滝』。ジョウゴ沢の本流を詰めるルートでは、最後の最後に技術的に一番難しい滝が出てきます。まるでラスボス。
ジョウゴ沢大滝はロープスケールで言えば25mほどですが、難しいのは出だしから8mほどの垂直部分。それ以降は傾斜も落ちて登りやすくなっています。
ディーアイがリードで登りました。スクリューは3本使用。落ち口付近に支点がありましたが、気づかず通り過ぎてしまったので、上でゴロゴロしていた岩にスリングを巻きつけてじゅんさんをビレイ。
大滝を登りきったところで、ジョウゴ沢のアイスクライミングは終了。
下山
ジョウゴ沢の下山路は、登って来たルートを懸垂と巻きで戻るか、硫黄岳方面へと登って登山道と合流し、一般ルートを降りるかのどちらかになります。
我々は登山からクライミングの世界に入ってきた人間なので、「折角山に来たのだから頂上まで抜けよう」という暗黙の了解にて、大滝の上部でクライミングの装備を片付け、沢を詰め上げていきました。
途中で右手に進路を取り、沢を詰め上げると硫黄岳山荘~硫黄岳山頂間の登山道に出ます。これにてジョウゴ沢ルートは終了。
以前初めてジョウゴ沢を登った時には、「こっちの方が早いんじゃね?」と横着して赤岩の頭方面にトラバースを試みましたが、ハイマツ帯のラッセルになり非常に苦労した覚えがあります。右に詰め上げた方が楽な印象。最後の硫黄岳への登りがチョット辛いですが。
最後の登りは、ロープ等を担いでるのもあってちょっと疲れましたが、硫黄岳山頂から見渡す展望は何度見ても良いものです。「やっぱり山は良いところだ」とお互いに言葉を交わし、風の強い山頂でいくらか展望を楽しんだ後、下山にかかります。
硫黄岳の下りでは、雪が薄かったので途中でアイゼンを脱ぎました(アイス用アイゼンの爪を温存したい意図もありました)。それはそれで滑ったので、チェーンスパイクを持ってこればよかったとちょっと後悔。北沢ルートも途中で凍結箇所がありましたし。やっぱり八ヶ岳ではチェーンがあると便利ですね。
予想外なほど何事もスムーズに事が運んだため、昼過ぎには赤岳鉱泉着。
早く出たお陰もあってか、結局ジョウゴ沢はまさかの貸し切りで、誰とも出会うこともありませんでした。それでも土曜ということもあり、赤岳鉱泉付近では多くのアイス装備のクライマーの姿を見かけました。
赤岳鉱泉から、多くの登山者とすれ違いながら下山。快適で楽しいアイスクライミングでした。
装備など
参考にしたガイド本。
今回使用したアックス。良い刺さり具合でした。
愛用のヘルメット。軽さは正義です。
使用したアイススクリュー。軽くて刺さりが良い。
今回はマイクロフォーサーズのカメラ使用。レンズはコレ。
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*1:F1のFは英語の滝(Fall)由来。下から登って最初(1番目)にある滝(Fall)なので、F1と名付けられています。