山行記録
2014.3.23~3.24
バリエーションルート
中央アルプス 独標尾根より三ノ沢岳
はじめに
個人的に中央アルプスで一番美しい山は三ノ沢岳だと思っています。
上松尾根や中央アルプス主脈などから見えるその山容は、ある角度からは優美な三角形として、また別の角度からは堂々とした独立峰のようにも見受けられます。
両親の岳友が命を落とした山として、少しばかりの因縁もありました。
百名山ハンターからすれば、ともすれば見向きもされないような山ではあるかもしれませんが、私にとって三ノ沢岳は常に無視できない存在です。
その三ノ沢岳、以前より積雪期に挑みたいと思っていました。
一方で、ロープウェイを使って中ア最高峰の木曽駒ヶ岳のおまけのように登るのは、自分の中で山に対し少々失礼なようで気が引けていました。
そんな折にふと思い浮かんだのは、上松尾根から見た際に三ノ沢岳山頂より木曽側に連なる立派な尾根。
「あそこ、登れるんじゃない?」と常々感じていました。
そもそも、あんなに立派な山があるのに木曽側から直接上がるルートがないのはおかしい。
地形図やネットで調べてみると、風越山を経て三ノ沢へと繋がる尾根は独標尾根といい、今は廃道になっていますが以前は登山道があったらしいです。
数は多くないものの、独標尾根を登った記録もネット上に散見することができました。
しかし、積雪期に実際に独標尾根を経て三ノ沢岳の山頂を踏んだという記録は、当時ネットを検索した限りでは見つけることができませんでした(絶対に誰かがやっているとは思いますが)。
無雪期はなかなか藪漕ぎが大変らしいですが、積雪期ならば藪は雪の下に沈む。これはある意味で登り時です。
登るルートを決めたのは山行前年の11月末ごろ。
それから、地形図を頭に叩き込みながら天気と雪が登るのに最適な条件になるまで待ちました。
そして今回、これ以上ないほどの天候状況と判断したため、木曽側より独標尾根経由三ノ沢岳登山を実行しました。
3月23日 登山開始
長野県上松の吉野林道入り口に到着したのは4時過ぎた頃。
林道の下部に雪はありませんでしたが、林道を登るにつれ車道には雪とアイスバーンが出現し、少々緊張しながらの運転となりました。
風越山登山口まであとちょっとのところで、雪崩(?)の跡か大量の雪が林道を塞いでおり車でそれ以上の進むことはできず。仕方ないので、路肩に駐車。
5:00 登山開始。
風越山登山口までは10分ほどの歩行を要しました。
風越山への登りは西向きの斜面で、日が良く当たるためか雪はほとんどありませんでした。カヤトの丘あたりで、ようやく登山道に雪がでてきました。 全行程ラッセルする気概でワカンを担いで家を出てきましたが、雪は程よく締まっておりラッセルを行うようなことはありませんでした。
時々ズボっと脚が膝まで埋まることがあり、ワカンを履くか迷うこともありましたが、結局最後まで使わずじまいでした。
6:28 風越山山頂
展望ポイントからの中央アルプス主脈北部の景色。右端のピークが三ノ沢岳です。
風越の山頂を抜け、その先の展望地点を越えるとそこから先はもう地図に記載のないバリエーションルート。地形は尾根となっている為、基本尾根通しに進めば迷うことは少ないです。
所々、先人の残した古い赤テープの道案内もあり、迷うような不安もなく進むことができます。所々足を取られましたが、概ね雪も安定しており、藪漕ぎの苦労もないので快適でした。
今回のルートはいくつかの小ピークを越えていきます。
風越山山頂を過ぎたあと、次の目的地である天狗山へは、一度稼いだ高度を一旦落とし、それから登り返しとなります。
誰かのワカントレースが残っていました。好きな人もいるもんだ…。
尾根は所々で狭くなっています。整備された登山道ではないので少し注意が必要です。
天狗山山頂手前の登りはガレ場と少々の岩が混じった急斜面であり、少しだけ注意を要しました。
この辺りは先の人が入った記録を見ていたので、歩きにくさはあったものの、そこまでの苦労や緊張は感じませんでした。
8:40 天狗山に到着。小さいながらも立派な山頂標識がありました。
地図に載っていないルートですが、幾人かに登られてきている様子。
天狗山の次の目的地となるのは独標です。
独標の手前では一度樹林を抜け、展望が開けました。
左ピークが三ノ沢岳。
三ノ沢岳手前の樹林帯ピークが、今回幕営予定の中三ノ沢岳。
右が独標です。
中央アルプスの峰々。
振り返ると木曽御嶽山。快晴なだけあり展望が素晴らしい。
独標の手前には偽ピークあり。偽ピーク先にある樹林を抜けると、本物の独標が姿を見せてくれました。
10:15 独標到着です。中央アルプスの稜線や振り返れば御嶽山の展望が素晴らしい。
独標から最初は大きな下り。最初は急斜面でやや緊張しましたが、落ちて死ぬほどではないのでそれほどでもないです。この日の最終目的地の中三ノ沢岳まではアップダウンを繰り返していきます。
木々が深く道は時々不明瞭になるものの、慎重に進めば大きく迷うようなこともありませんでした。
危険箇所も見当たらず。登り下りを繰り返し進みます。
12:10 中三ノ沢に到着しました。
中三ノ沢岳には山頂標識はないため、どこがピークか分からず。この周囲にテントを張ることを計画としていたので、幕営適地を探しながら足を進めました。
昼を少し回った時間ではありますが、山を越えるにしては時間的に中途半端になるし、天気も良く穏やかな気候だったので、これから雪は腐ってきそう。
中三ノ沢岳を少し過ぎた先の尾根上、比較的見晴らしのいいところにテントを張りました。
明日越えていく無名ピーク(右)
あとはテントの中で寝袋にもぐりこみ、ダラダラと寝たり起きたりを繰り返し、明日に備えて休養しました。
3月24日 登頂・ロープウェイ下山
4:30に起床し、テントを畳み荷物をまとめ、5:30頃に出発です。
気温-10℃と並みの冷え込み。狙ったとおり、雪は締まっており歩きやすかったです(所々ズボっと膝下まで潜ることはありましたが)。
幕営地点から観察した限りでは、中三ノ沢岳から少し先の無名ピークを越えた後から三ノ沢本峰に取り付くまでの尾根が細くなっていそうです。
そこが通行注意だと感じていたましたが、実際に歩いてみて予想は的中でした。
木々の入り混じった細い尾根は、ナイフリッジの連続。
リッジには潅木や岩なども入り混じっており、どう通過しようか迷う箇所もありました。
結局2回ほどナイフリッジを避けトラバース(これはこれで斜度があり緊張しましたが)して、核心部を通過しました。
いくつかのナイフリッジを超えて、ほっと一息。
尾根が細くなっている箇所を振り返ったところです。
本峰に取り付いた後は、時々尾根が細くなっている箇所はあるものの危険と感じる場所はなく、順調に高度を上げていきます。
最後の急登です。
山頂が目前に迫ってきました。
7:00頃、三ノ沢岳(2847m)の山頂に到着。
三ノ沢岳山頂からの景色。
中央アルプス主脈。檜尾~空木~南駒へと連なる山々。
山頂には幾人か人が歩いた足跡が残されていました。
しばらく三ノ沢岳の山頂で景色を満喫してから、足跡を辿って下山にかかります。
当初の予定通り独標尾根をピストンではなく、千畳敷からロープウェイを使って、中央アルプス横断の形で下山としました。
車を回収しに行くのが、公共交通機関の乗り継ぎになるので大変そう。一般登山道に合流して安心したのか、その点が気になり始めました。
三ノ沢岳の山頂を後に。
千畳敷方面への下山のため、尾根をたどって先端の尖がった宝剣岳(写真左上)の右側にある、極楽平を目指します。
極楽平への登り途中から、三ノ沢岳を振り返るの図。
木曽側から見た三ノ沢の印象とは随分異なります。見る場所からによって、山の印象が大きく異なるのも、この山の魅力だと思っています。
極楽平の分岐。ここから千畳敷方面に下りていきます。
最後の最後に滑って転げ落ちるのは嫌なので、気を引き締めていきたいところです。
ロープウェイの始発に十分間に合う時間には、もう千畳敷にいました。
千畳敷駅で、去年3月の中央アルプス縦走の終盤で偶然出会った登山者とバッタリ再会しました。
山がもたらす出会いや縁は全く不思議なものです。
その方になんと上松の吉野林道まで車で送ってもらい、1日がかりと覚悟を決めていた車の回収作業は、なんと昼前には終わってしまいました。
こうして無事に、独標尾根のバリエーションルートを経ての積雪期三ノ沢岳の登山は終了しました。
積雪状況や気象条件など、狙いが気持ち良いほど当たって非常に快適な登山が楽しめました。
車で伊那谷から反対側の木曽まで送ってくださった駒ヶ根の山岳会のG様には、心よりお礼を申し上げます。