2019年の7月に、スイスの4000m峰のツィナルロートホルンに登ってきました。登ってきたと言っても、結論から言えば登頂はできませんでした。アプローチから敗退までの記録を記事としてまとめました。
場所:スイス、ヴァリス州、ツィナルロートホルン
期間:2019年7月14日~7月16日
登山タイプ:アルパイン、山小屋泊
メンバー:ディーアイ、miyu(妻)
ツィナルロートホルン(Zinalrothorn) 4221m
ツィナルロートホルン概要
標高:4221m
所在地:スイス、ヴァリス州
最寄りの山小屋:ロートホルンヒュッテ(Rothornhutte)
登山ルート
ルートグレード:PD+
登降距離:1000m
登山開始前
2019年7月のスイス旅行。7月12日~7月16日の間、現地の天候に合わせて登山やハイキングを行う予定でした。
7/12は高度順応のためにブライトホルン(4164m)に登りました。
7/12夜の時点で、Mountain Weather Forecastではロートホルンヒュッテの天気予報として
7/14 晴れのち雨(雪)
7/15 晴れ
7/16 晴れ
となっていました。そのため、7/13はゴルナーグラートでハイキングと、麓のツェルマットで行動食などの買い出し。そして、スイスの山小屋は電話予約が推奨されているので、ツェルマットのアルパインセンターで7/14~7/16間のロートホルンヒュッテの宿泊予約を行いました。
もともとの予定では、7/14はツェルマットからロートホルンヒュッテへ。7/15はツィナルロートホルン登山、7/16はオーバーガーベルホルン登山を行ってから麓のツェルマットまで下山予定としていました。
7月14日 ツェルマットから山小屋へ
山小屋で予約を入れた時点では、天気がイマイチのハズだった7/14は朝から快晴。そして天気予報は前日から一転し7/15の悪天を告げていました。
登頂の可能性についてはやや不安を覚えながらの出発になります。
ロートホルンヒュッテまでのハイキングは、以下の記事参照。
登山ルートの下見
ツィナルロートホルン登山は、山小屋に宿泊し、朝暗いうちから出発します。
最初は氷河を登り、チムニーを登ってから稜線に取り付くのが一般的な登山ルートになっていますが、チムニーへの取り付きがやや分かりづらいので、事前に下見しておくことが推奨されていました。
ロートホルンヒュッテ到着後、少しの休憩を挟んでから、氷河を登ってチムニーまで下見に行きました。
ロートホルンヒュッテからチムニーまでは約45分ほど。ロートホルンのルート上の氷河はクレバスは確認できなかったのでコンテは行わず。
朝は絶好の登山日和でしたが、天気予報の通り雲が湧いてきており天気は下り坂。
この日からロートホルンヒュッテ連泊。山小屋の情報は以下に。
7月15日 ロートホルンヒュッテ停滞
前日の夜から雪の降っている感じはしたので、前日の時点でこの日の登山は中止。オーバーガーベルホルン登頂の可能性は消えました。登るピークはツィナルロートホルン一本に絞ります。
早朝、外にあるトイレへ行きました。扉を開けて絶句。
夜通し降り続いた雪は10cmほど積もったでしょうか。翌日はツィナルロートホルンに登るつもりでしたが、そもそも登れるのか心配になってきます。
そのうちガスが晴れて視界が広くなってきましたが、小屋から見えている山々の岩稜にも、しっかり雪がついています。
小屋番いわく、スイスの高山帯では夏でも2~3回ほどこれぐらいの雪が降るそうで、この雪が溶けるのには2~3日を要すそうです。サミットデイとなる予定の翌日について、不安は募る一方。
いまさらジタバタしててもどうにもならないので、酒でも飲んでまったりモードに。今日1日は山小屋の停滞を決め込みます。
予報よりも幾分か早く、天気は改善傾向へ。太陽が顔を出してくれると、雪はどんどん溶けていきます。
午後になると登山者がちらほらと小屋を目指して登ってきました。
朝は半ば絶望ムードでしたが、翌日の登頂へ向けての希望が湧いてきます。
7月16日 登山開始
3:00起床し、朝食を食べる。何名ものパーティが、我々が準備している間に出発していきました。
下見の通り、ツィナルロートホルン登頂へ向けて氷河へと脚を踏み入れます。新雪の上にトレースはありませんでした。
前日、ガイド連れの女性が「私たちもツィナルロートホルンに登る予定」と言っており、その女性は我々よりも先に出発したはずなのですが…。積雪で条件が悪くなっているので、ガイドが行き先を変更したのか?
小屋には数パーティの姿があり、我々の出発は遅い方でしたが、誰もツィナルロートホルン方面には足を踏み入れてはいないようで、昨日降り積もった雪の上にトレースを刻みながらの歩行となりました。
新雪で以前のトレースは消えていましたが、下見をしていたおかげで迷わずにチムニーに到着。
真っ暗な中ディーアイのリードにてチムニーの登り。グレードは大したことないが、暗いのと雪が乗っているのと、プロテクションないのでちょっと緊張。
新雪を踏みしめながら進みます。途中ルートがよくわからず迷う場面も。そんなに早いペースで登っているわけではないのに、追いついてくるパーティもありませんでした。この日ツィナルロートホルンに挑む登山者は我々だけの模様。
左に見えているのがマッターホルン(4478m)
右のドーム状のピークがヴェレンクッペ(3903m)
その奥にそびえる山がオーバーガーベルホルン(4063m)
先行者のトレースもなく、(後に判明しましたが)進む方向を間違えてしまいました。この場所からだと右の尾根沿いの方が傾斜が緩そうに見えたため、右寄りの方向へ。
間違いルートである右の尾根(その時はまだ気づいていませんでしたが)方向へと上がっていくと、浮石多発。新雪が上からカバーしているので、足元が安定しているかどうかもわかりません。とりあえず、触る岩のほとんどが動くという嫌な状況。
とりあえず登りやすそうなところを探しながら、右往左往しつつ登ります。
ガレガレの岩の斜面を登って、稜線上へと到着。ここまで上がってくると本峰(ツィナルロートホルンのピーク)が見えました。
降り積もった雪が足元を隠しており、時々踏み抜いて隠れた穴に足がはまりそうになりながら進みます。この辺でルート間違いに気づきました。このまま尾根を進んで行けば、おそらく一般ルートに合流すると思われるので、尾根通しに進んでいきます。
進行方向に岩が乗った小ピークあり。どうやって通過したら良いのか遠目にはわからないので、とりあえず近づいて様子を見てみることにしました。
岩が乗った小ピークには、人がやっと通れるぐらいの穴が空いていました。ザックを背負った状態では通過できなかったので、ザックを置いて空身になることで何とか通れました。
穴をくぐった先から、岩稜の傾斜は緩み、一般ルートとの合流点も見えてきました。
営業小屋(ロートホルンヒュッテ)がある夏のアルプスなので、降雪の後でなければおそらくトレースがあったと思われます。それだったら、このような道迷いはしなかったでしょう。
再び尾根に戻ったところに十字架がありました。
本来はここからナイフリッジを経て本峰に取り付き、ガリー(溝状の地形)を通して本峰の肩まで登ったあと、スラブ(垂直以下の岩壁)をクライミングしてから山頂に行くことになります。
しかし、トレースのない道を歩き、道迷いで時間を浪費してしまったこと。ガイドパーティが登っていないこと(この山域に精通した人が避けるような条件)。不安定な新雪の中ガリーを登ること。西面に陽が当たっておらず、核心部のスラブに着雪が予想されていること。様々なリスクを考慮し、妻と安全に登頂するには難しいのではないかと考え、ツィナルロートホルンの登頂は諦めて下山することに決めました。
正直、ツィナルロートホルンの核心部にも触れられていない状況で諦めることについては悔しさもあり、次回この場所に来られる機会があるのかもわからないまま戻ることに抵抗もありましたが、無事に帰ることを考えると、このへんで撤退が無難という結論に至りました。
撤退~ツェルマットへ
なだらかで幅広い尾根上の通常ルートから下山に取り掛かります。日が昇る前は氷点下でしたが、太陽が登ってからは暑いと感じるほどになっていました。
そのため、昨日降った新雪は陽光による気温上昇で緩み、アイゼンには雪団子がくっつくような状況に。
懸垂下降でチムニーを下り、氷河上に降り立った時点で一安心。
この氷河上には危険なクレバスはなく、あとはロートホルンヒュッテに歩いて下るだけです。
無事にロートホルンヒュッテに戻ってくると一気に気が抜けるような感じがしました。
小屋のテラス付近でいくらかの休憩。その後、小屋にデポしておいた大きなザックにロープやハーネスなどをしまい込み、後はハイキング用のトレイルを歩いて麓のツェルマットに戻ります。
ツェルマットまで戻ってきました。
それからインターネットに接続し、急いで空いているホテルを予約。
ホテルで荷を下ろしてから、MIGROS隣の酒屋で安いビールを買って乾杯しました。
翌日はツェルマットでお土産を買ってからジュネーブに移動し、翌々日の便で帰国しました。
動画
私が2019年7月のスイス旅行で撮影した映像が動画でまとめてあります。
ツィナルロートホルン登山の様子も映像の中に出てきます。
"4K Snow mountain climbing in Switzerland" DJI OSMO ACTIONで撮影したスイスの映像
機材提供・動画編集はドローンブロガーのスカイフィッシュさん(id:drone_skyfish)。
動画撮影に使用した機材:DJI OSMO ACTION
使用したギアなど
スイス登山で使用した、8.7mmでシングルロープの規格も通っている軽量のロープ。スイスのクラシックルートはコンテで進むことが多いので、シングルの方が扱いやすいかもです。
アタックザックとして使用しました。背負心地もよく、軽くて快適。
スイスで使用した撮影機材。ブログ掲載の写真はEOS RとRF24-105mm F4 Lで撮影したものです。
メンズ・マイクロパフ・ジャケット(スイスで使用)
メンズ・プルマ・ジャケット(スイスで使用)
関連の記事