これだけ食べても生きていけるという、『完全栄養食』のCOMP(コンプ)。登山でどれほど役に立つのか、実物を買って、味わって、考えてみました。
完全栄養食COMPが登山の栄養補給に最適か考察
完全食のCOMPシリーズ。水に溶かすパウダー状とグミタイプ。他にもそのまま飲めるドリンクタイプもラインナップされています。
はじめに
何を楽しみとして山遊びをするかは、各個人の好みよるところであります。その中で、食事を楽しみとして行くか、食事は単なる栄養補給と割り切るか…山行の目的によって、山での食事の内容は変わってきます。
今回取り上げる『完全栄養食品』のCOMP(コンプ)を持っていくとするなら、後者のパターンでしょう。
長い距離を歩いたり、厳しい/危険なルートを登る場合る場合には、荷物はできるだけ軽量化しておきたいところです。
以前の記事で、「明治のメイバランスは山で使えるのか」を考察したことがあります。
結論としては、メイバランスは確かにコンパクトでカロリーが高く、栄養バランスに優れてはいますが、それだけで必要な栄養素を補給しようとすると、水分の含有量が多いため、複数持つとかなり重くなってしまって、現実的ではなさそうでした。
そこで考えたのが、メイバランスと違ってパウダー(粉末)状でパッケージングされている栄養食品が、山では有効なのではないかということ。
パウダー状であれば、乾燥しているので軽量・コンパクトに持ち運びできます。そして、必要時に水で溶かせば摂取できます。山の中では当然水分補給のために水を持っていくし、所により沢などで飲料水を入手することも可能。冬になれば雪を溶かせば水は手に入ります。必要時に水と組み合わせて取り込める乾燥した食品は、持ち運ぶ労力を考えると合理的です。
パウダー状で入手できる栄養食品を考えた時、最初はソイレントやエレンタールなんかが浮かんできたのですが、入手することを考えるとちょっと面倒そう。
そんな時に見つけたのが、日本人による、日本人による、日本人のための完全栄養食(完全食)であるCOMPでした。
COMPの有用性
早速取り寄せた完全食COMP。これだけ食べていれば、人間が生きていけるだけの栄養素を補給できるという話です。
スタンダードな粉タイプのCOMPは、水に溶かせばサッと必要な栄養素を摂取できるため、調理の時間や手間を省くことが可能。パウダー状であるため、重量も必要最小限に抑えることができます。
パウダー状のスタンダードなタイプ。水に溶かして飲むことで手軽に栄養補給できます。一袋につき400kcalです。
これだけ食べれば栄養不足にならず、満遍なく必要な栄養素が摂取できるという話なので、食事の効率化を追求する場合、最も合理的な食品となりそうです。
こちはらUHA味覚糖とコラボして作られたグミタイプ。そのままの形で食べることができる完全栄養食です。
登山のシーンでは行動食として使えそうですね。
ライバル食品との比較
パウダー状のスタンダードなCOMP。
重量の実測値は104g
エネルギー量は400kcal。カロリー/グラムで計算すると3.84kcal/gとなりました。
炭水化物 59g
脂質 13g
たんぱく質 15g
その他ビタミン・ミネラルなど、人間が健康的に生きていくために必要となる栄養素が過不足なく含まれているらしいです。
そのまま食べられるグミタイプのCOMPです。
重量は111g
エネルギー量は400kcal。カロリー/グラムで計算すると3.6kcal/gとなりました。
炭水化物 59g
脂質 13g
たんぱく質 15g
成分的には前述のパウタータイプのCOMPと大差ありません。
山での食料の定番のひとつ、カロリーメイト。
重量の実測値は93.5g
エネルギー量は400kcal。カロリー/グラムで計算すると4.28kcal/gとなりました。
炭水化物 40g
脂質 22.4g
たんぱく質 8.7g
軽量でエネルギー量は見た目多く、登山で軽量に持ち運びできる食品としては優秀な印象です。ただし、即席のエネルギーとして使われない脂質が22.4gも入っているのが注意点です。
脂質は1gで9kcalなので、
カロリーメイトに含まれる脂質の量:22.4(g)×9(kcal)=201.6(kcal)/パッケージとなります。カロリーメイト1パッケージで、400kcalと見た目カロリー量は多いですが、半分は脂質によってカサ増しされています。
コンビニとかで手軽に買えるアルファ米。そこそこうまくて安いので、最近よく利用している日進のカレーメシシリーズ。
重量の実測値は124.5g
エネルギー量は422kcal。カロリー/グラムで計算すると3.39kcal/gとなりました。
炭水化物 68.7g
脂質 12.8g
たんぱく質 7.9g
ライス主体なためか、炭水化物の比率が高い。重量は他と比べれば重いですが、食品として考えれば十分軽量なレベル。欠点は、内容物に対してパッケージがやや嵩張るぐらい。
山の食事によく使われる袋ラーメン。元祖袋ラーメンであるチキンラーメンをピックアップしてみてみましょう。
重量の実測値は91.5g
エネルギー量は377kcal。カロリー/グラムで計算すると4.12kcal/gとなりました。
炭水化物 53.6g
脂質 14.5g
たんぱく質 8.2g
軽さとカロリー比で検討すれば、かなり優秀です。カロリーメイトと比べれば、脂質の含有量も少な目。欠点としては、食塩相当5.6gを含んでいるところですかね。食塩の1日の摂取量は8.0g以下とすることが推奨されているので(男性値・厚生労働省・日本人の食事摂取基準2015より)、即席ラーメンが含んでいる塩分量はかなり多いです。
山に持っていっている軽量食品、だいたいどれも100gで400kcal前後ということが分かりました。
その中で、COMPはやはり完全食を自称するだけあって、栄養バランス的に優れています。単に重量対カロリー比で見ると、COMPに優位性はないかもしれませんが、栄養のバランスで考えるとCOMPは他の食品よりも一歩以上抜け出た印象です。
COMPの味はどうか…試食編
COMPは完全食で栄養的には素晴らしいのかも知れません。ただ、味がゲロマズだったとしたら、とても飲めたものじゃありません。
というわけで、COMPの味はどうなのか、実際に飲んで検証してみることにしました。
パウダータイプ
スタンダードなCOMPはパウダー状。これを水に溶かして摂取します。プロテインっぽい感じですね。
溶かす時にはプロテインシェイカーなどがあると便利かもしれません(山ではナルゲンボトルなどを使用すればいいと思います)。
COMP購入時に付いてきた解説書には、「水何mlで溶かすと良い」という情報は見当たらなかったので、適当に水を入れてシェイクします。
シェイク後。底の方に少しだけダマができていましたが、概ね良好に溶けてくれました。
溶かした後のビジュアルが分かりやすいよう、コップに入れてみました。本来ならシェイカーで溶かした後にゴクゴク直飲みしてOKです。
飲んでみました。
味は…特別うまくはないですね。まずいわけではなかったですが…。好みの分かれそうな味。大豆成分が入っているせいか、「プロテインきな粉味」みたいな印象です。
完全に栄養補給と割り切れば、まぁ飲めなくはないけど…
パウダーは水に溶かすだけで飲めるので、ラーメンやアルファ米みたいにお湯が不要です。夏山ではバーナーなどの火気を省いて、更なる軽量化も期待できそうです。
グミタイプ
日本のグミ界の大御所、UHA味覚糖とのコラボ商品。COMPグミ。その味は如何に!?
一袋分をガラスの器に出してみました。これで400kcalあります。一般的なグミと比べると、高カロリーです。色と形は、正直他のグミと比べて特別美味しそうというわけではありません(というか、あまり美味しそうではない)。
それでは試食に入ります。
口に入れた直後は、大豆成分の影響からか、ほのかな大豆風味を感じます。グミ自体は乳酸菌飲料を連想させるような甘みがあり、なかなか美味しかったです。
さすがUHA味覚糖とコラボしているだけあって、それなりに美味しく食べられるグミに仕上げてくれています。
まぁ、これだけで2000kcalを摂ろうとすると、5袋食べないといけません。グミ5袋は流石にちょっと飽きてきてしまって、相当好きじゃない限りはキツイものがあるかもしれませんね。
COMPのみを口にして、山でエネルギー補給を行う場合は、グミは行動中に食べられるだけにしておいて(行動食として使う)、しっかり栄養補給する場合はパウダー状のCOMPを水に溶かし、必要な栄養分だけ飲むのがいいかも。シャリバテにならないための行動食にはグミ、しっかりと栄養補給するならパウダーといった具合に、使い分けをするのが良いと思います。
COMPを使うメリット・デメリット
完全栄養食のCOMPは、これだけ摂取していれば生きていけるというスグレモノ。
乾燥したパウダー状、グミ状とバリエーションもあり、重量対カロリーで考えても、なかなか優秀です。軽い故に、登山では装備の軽量化に貢献できますし、パウダーやグミの形で存在するので、大量に持ち運ぶ時にもかさばりにくいメリットもあります。
特別に美味しい物ではないので、ずっとこれを食べ続けるというのは苦行かも知れないですが…。何か楽しみとなる食品も併用するのが良いのかも知れません。
ちなみに値段は、パウダータイプ400kcalが12袋で5000円。1袋約416円です。
山の栄養補給として、COMPを選択するメリットとデメリットを以下に。
【メリット】
・軽量・コンパクト
・調理の手間が省ける
・山の中でも栄養が偏ることがない
【デメリット】
・味がイマイチ(特にパウダータイプ)
・食事の楽しみがなくなる
・コンビニ等で気軽に買えない
・値段が高い
完全食COMP、山で使うことを考えた場合、探せば欠点は無いわけではありませんが、軽量・コンパクト性と含まれる栄養素、調理の手間が省けるといった魅力は満載です。
友達・家族と楽しいハイキングといった場面での出番はなさそうですが、自分の限界に挑むような山行の場合には、選択する価値はありそうですね。
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