先日購入したオリンパス(現OM SYSTEM)のデジタル一眼カメラ・OM-D E-M1 Mark3を冬の八ヶ岳で使ったらトラブルが発生してしまいました。
推定-15℃の環境下で、寒さに強いはずのOM-D E-M1 Mark3は正常動作しませんでした。そのことについて書いていきます。
【厳冬期】OM-D E-M1 Mark3はそんなに寒さに強くない
冬の八ヶ岳で起きたこと
当ブログは登山やクライミングなどを主に扱っており、冬山にもしばしば足を運んでいます。
今回の事象は気温の低い冬山、標高2200mを超えた地点で発生しました。
事象発生:2023年1月6日
場所:長野県 八ヶ岳
ルート:船山十字路→南稜→阿弥陀岳→御小屋尾根→船山十字路
登山口で出発時に確認した気温は-8℃。その時カメラは正常動作していました。
問題が最初に発生したのはルートの途中にある立場山(標高2248m)の山頂を過ぎて間もなくでした。
寒い中カメラを剥き出しで持ち運んで撮影していたら、突然「電池容量がありません」のエラーメッセージと共に、電源が落ちてしまいました。
その日のヤマテン(登山専用の気象予報サイト)で、八ヶ岳の主峰・赤岳の予報最低気温が-17℃程度だったので、当時の気温を推定するとあっても-15℃ぐらいったと思います(正確な気温は不明)。
直前までバッテリー容量は90%以上あったのを確認しているので、バッテリーを使い果たしたわけではなさそうです。寒さによってカメラ内部に異常が起きたのだと理解しました。
少し温めたりすればカメラは一応復活したりするのですが、すぐに電源が落ちてしまい、なかなか思ったように撮影できませんでした。
太陽光をしばらく当てたり、バッテリーをジャケットの胸ポケットで温めたりすれば、一時的には復活するのですが、快適撮影とはかけ離れた状況でした。
阿弥陀岳に登頂し、下山。標高2000m以下の地点で一応カメラをチェックしたら、普通に動きました。日も高くなり、標高が下がって気温が上がったからでしょう。
OM-D E-M1 Mark3はカタログ上では寒さに強いということになっていますが、冬の八ヶ岳の朝方(気温が低い時間帯)では電源が落ちてしまいました。
温かい時間帯や、厳冬期ではない雪山とかなら問題なく使えそうな雰囲気ですが、冬山の稜線上でご来光を狙うとか、気温が本当に低い場面でOM-D E-M1 Mark3を使うのはリスキーだと感じた次第です。
スペックを再確認
さて、メーカーのサイトでOM-D E-M1 Mark3を見てみると。
【絶対的な信頼性→防塵・防滴・耐低温性能】と謳っています。
【主な仕様】では、-10℃ ~+40℃(動作時)、-20~+60℃(保存)ということになっています。
動作環境よりも低い気温で使おうとしたのだから、動かなくても文句は言えない?
OMデジタルソリューションズに質問
【企業のお問い合わせ窓口へ、私から質問】
突然のご質問失礼します。
先日御社のデジタルカメラ、OM-D E-M1 Mark3を購入させて頂きました。 雪山で登山する機会が多く、E-M1 Mark3の-10℃対応という点が魅力的に感じました。 E-M1 Mark3は快適な撮影ができるカメラで、大変気に入って使用しております。 こから本題に入ります。 私は先日(1月上旬)長野県の八ヶ岳へと登山に行きました。標高3000m近い雪山です。 登山口の気温は-8℃程度で、その時カメラは正常に動作していました。しかし、山頂に近づき気温が下がっていくと、突然「バッテリーの充電がありません」のメッセージが表示され、カメラが強制終了されて撮影ができなくなってしまいました。直前までバッテリー充電は90%以上あったのを確認しています。エラーが起きた場所の気温は-15℃ほどだったと思います。 バッテリーを温めると少しの間動作するのですが、すぐにエラーメッセージが表示されて撮影不可能になってしまう状況で、山頂付近での撮影には非常に難儀しました。 下山して気温が上がると、とカメラのエラーメッセージは表示されなくなり、カメラは正常に作動するようになりました。現在カメラは問題なく機能しています。 御社のサイトにてOM-Dは耐低温性能を謳っておりますが、-15℃はカメラが対応できない気温ということでしょうか? それとも、-15℃でカメラが正常に作動しなくなったのは、故障が考えられますでしょうか?
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【OMデジタルソリューションズからの返答】
ディーアイ様
日ごろより、弊社の E-M1 Mark III をご利用いただきまして、 誠にありがとうございます。 このたびは、雪山でバッテリー無しの表示となり、 撮影ができなくなったことで、大変ご不便をおかけしました。 大変恐れ入りますが、動作時の使用可能温度としては -10℃ ~のため、お知らせいただいた環境では 動作の保証がいたしかねる次第です。 ※保存時は ‐20℃ 以上です。 せっかくの撮影機会に撮影ができず、 大変申し訳なく思いますが、カメラの故障ではなく、 カメラが対応できない気温だったことが原因と考えられます。 次回、同じような環境で撮影される機会がございましたら、 撮影の直前まで、カメラ本体または電池をポケットで温めるなど、 ご対処いただけないでしょうか。 耐低温の仕様を気に入ってご購入いただきましたのに、 このような回答ごなり大変申し訳ございませんが、 何とぞご理解くださいますようお願いいたします。
他のカメラはどうだったのか
・Canon EOS 6D
-20℃ぐらいになると、液晶表示の切り替わりがもっさりとするのですが、撮影自体に影響はありません。カタログでは動作保証は0℃まで。
・Canon EOS R
-20℃ぐらいでも動作は問題なし。ただし、低温下だとビューファインダー内が結露して、EVFが使い物にならなくなることがあります。その時は背面液晶を見ながら撮影しています。カタログ上の動作保証は0℃まで。
・OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2
E-M1 Mark3よりも寒さに弱いです。-10℃をちょっと下回るとバッテリー異常ですぐに電源が不安定になります。カタログだと-10℃まで対応。意外と寒さに弱いカメラでした。ただし、電源が落ちる寸前に1カットだけ撮影できていたので、こまめに電源をON/OFFすれば一応厳冬期登山でも使えました。
・スマホのカメラ
多分厳冬期の山中でその辺に出しておくと、バッテリーがすぐ上がってしまうと思うのですが、ハードシェルの胸ポケットに入れておけばそこまで冷えません。撮影時にサッと出して、撮影が終わったらすぐ胸ポケットにしまうとか、寒気に晒さないように注意して使えば問題なく作動します。ワンポイント撮影だけだったら意外と手堅く使えます。
キヤノンのフルサイズカメラは動作環境が0℃までとなっていますが、-20℃ぐらいなら概ね問題なく使用できるというのが経験で得た印象です。
オリンパス(現OM SYSTEM)のOM-Dシリーズは、-10℃対応と謳っていますが、実際のところ低温にはそれほど強くなかったというのも私の経験です。
まとめ
OM-D E-M1 Mark3はキビキビ動くし、メカとしてカッチリした作りだし、システム全体を考えると軽量になるし、良いカメラだと思います。
ただし、今回の記事に上げた点は残念だとは思いました。-10℃を上回るマイルドな低温ではタフなカメラなのかもしれませんが、油断していると指がなくなるような低温の環境下(厳冬期のアルプス、八ヶ岳等)では他社のカメラに比べて、特段寒さに強いというわけではないです(優れた耐低温性能とは…?)。
同じ機種でもカメラによっては、厳冬期でも問題なく動作する? 個体差がある可能性もあります。でも十数万出して、冬山でしっかり動くかどうか分からないカメラを買うというのは、結構勇気がいる賭けだと思います。
一応-8℃ではカタログ通り正常動作していたので、オリンパス(現OM SYSTEM)が不誠実だとか、誇大広告だとかは思っていないのです。が、期待を裏切られた感はあります。自身を持って-10℃で動作保証するようなカメラなら、-20℃でも普通に使えると思いたいですよね?
冬の八ヶ岳や日本アルプス級の山で、ご来光や夕日、夜景撮影などをする場合、OMシリーズは電源が落ちて撮影できないリスクがあります。厳冬期登山で写真撮影をする場合、私はOMシリーズを選ぶことはないでしょう。
「OM-D E-M1 Mark3は冬山登山に最高のカメラです! 是非オススメします!」と結べる記事になればどんなに良かったことか…。厳冬期の山で使わなければ、非常に良いカメラなんですけどねぇ。
追記
記事公開の後、頂いたメッセージ。裸で持ち歩くと低温下で電源が落ちるので、カメラバッグに収納(+カイロを中に仕込む)ことで安定して動作するようになったというものがありました。
数年間使ったE-M1 Mark2は、マイナス一桁でも電源が落ちるようになってしまった。
バッテリー交換するとマイナス二桁で普通に使えたので、寒さへの影響はバッテリーの状態(個体差?)にも左右されるのではないかという情報もありました。
OM-D E-M1(シリーズ)が冬山で電源が落ちるというのは、私がもっている個体だけではなさそうです。
で、結局こういうことに。
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