マイクロフォーサーズ対応の軽量・コンパクトな交換レンズ、M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6のレビュー記事です。山遊び(登山/クライミング)という使用状況に絞った観点で、本レンズの魅力について語っていきたいと思います。
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark IIにM.ZUIKO 9-18mm F4.0-5.6を装着した図。
M.ZUIKO 9-18mmの魅力
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6は2010年に発売された、マイクロフォーサーズマウント対応のカメラレンズです。新しいレンズではありません。
本レンズの最大の魅力は、9-18mm(35mm換算18-36mm)という超広角でありながら、155gという圧倒的な軽さとコンパクトなサイズ。それに尽きます。
このレンズには、素晴らしい解像感とか、とろけるようなボケ味とか、レンズの明るさとか、カメラマニアが期待するような要素は一切ありません。
「軽さこそ正義」という、山の世界で役に立つレンズであります。
「ちゃんとした写真も撮りたいけど、この登山(クライミング)は軽量化が肝になるので余計な装備は省きたいという状況」で取れる妥協案という感じ。
(左)M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
(右)M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
小型軽量さが売りのマイクロフォーサーズレンズ群ですが、9-18mmは特に小型なデザインとなっています。
山×軽さ×超広角
山にいる間は常に絶景を見ているわけではありません。
素晴らしい朝焼けとか夕日とかのシーンなんかはたいてい一瞬で、重い荷物を背負って息を切らしながら歩いて…という地味~なシーンが非常に長いのです。地味にトボトボ歩いている時には、荷物は軽いほうが圧倒的に楽です。カメラ機材も当然荷物になるので、軽ければ軽い方が歩きが楽なのです。
こんな岩壁を登る時には、時として装備の重さが通過の成否を分けたりすることがあります。(荷物が重いとたいてい大きくなるので、動きの邪魔にもなるし)
レンズの画角(数値が少なければ広く写せる)について。
以下2枚の写真は季節こそ違いますが、同じ位置で撮ったものになります。
山の中では「これ以上動けない」という場所も時々あって(上の撮影場所はテント泊用マットぐらいの広さしかないテラス)、物理的に限られたスペースでの撮影では撮りたいものがフレームに収まらないことがあります*1。
よくある標準ズームレンズの広角端は24mmぐらいなので、となると上の撮影場所の場合はクライマーとバックの山を同時に写せないのです。
軽量さとコンパクトさに加えて、M.ZUIKO 9-18mm F4.0-5.6は広い範囲が写せる「超広角レンズ」ということに価値があります。
もともと軽量・コンパクトなシステムが売りのマイクロフォーサーズシステムの特徴を、遺憾なく発揮しているレンズです。
軽量・コンパクトがいいなら最近の超広角レンズを搭載したスマホでいいんじゃね? という声も否定しません。(むしろ、軽量化最優先ではスマホが最適解かも?)
ただ、スマホの画質はスマホのモニタで見る分には良いのですが、拡大すると画質が荒れていたりする場合もあるし。タッチパネル対応じゃないとグローブしたままで操作できなし。寒いと使えないこともあるし。どうも自分の用途だと、スマホで写真を撮る気にはなれないので(時々記録写真を撮るためには使ったりする)、軽量コンパクトな機材で超広角な写真を撮りたい場合、M.ZUIKO 9-18mmを装着したマイクロフォーサーズのカメラがよいのではないか…という結論に至ったわけです。
趣味というか自己満足というかどれだけを許容するかという話。
軽くて比較的かさばらないので、クライミング(リード)でも背負っていけます。
ただやはり、画質で言えばフルサイズセンサーカメラ+高解像度or明るいレンズの方が数段良いので、重量増に寛容なハイキングや撮影目的の山行などには、フルサイズのカメラを選択しています。
マイクロフォーサーズの9-18mm F4.0-5.6のレンズでは、ボケを生かした写真は撮りにくいし、星景撮影には向いていない。レンズ/カメラが得意とする用途に合わせて使い分けています。
機動力を生かして撮影できる山の世界
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6を使用し、山で撮影した作例のいくらかをここでご紹介していきます。
欠点
M.ZUIKO 9-18mm F4.0-5.6は、山遊びで軽量化が必要な人にとっては良いレンズなのですが、やはり欠点もあります。いくつか気になる点を挙げてみます。
防塵防滴設計ではない
オリンパスのPROシリーズのレンズは、OM-Dシリーズ中上級機のカメラボディと組み合わせることで、水洗いにも対応できるような強力な防塵・防滴性が売りとなっています。一方M.ZUIKO 9-18mm F4.0-5.6はスタンダードラインの製品なので、オリンパスの強みである防塵・防滴構造は省かれています。
山の過酷な環境下では、水しぶきを浴びたり、雪にまみれたり、砂埃が降り掛かったりするのはよくあることで、防塵・防滴機構がないと故障率が上がってしまうことは必須。その点が心配です。
暗い(F値)
これも(比較的)安価で軽量なレンズに望む点ではないのですが、F値が4.0スタート(望遠端は開放F5.6)なところはやや残念。天気が良い、青空の下の撮影なら良いのですが、暗めの場所でシャッター速度を上げたい場合はどうしてもISOを上げざるを得ず、画質が犠牲になってしまいます。
オリンパスの手ブレ補正機能は素晴らしいですが、被写体ブレは防げないのです…
レンズの繰り出しが面倒
持ち運びのコンパクトさを享受するのには仕方のないことなのかもしれませんが、本レンズは使用前にズームリングを回して、撮影できるモードにしないと写真が撮れません。
地味に面倒です。咄嗟にシャッターを切りたい場合は特に。
レンズ本体はコンパクトですが、それは持ち運びモードの時。撮影モードの時にはレンズの同鏡が繰り出された状態になるので、見た目的には不格好だと思います。
広角端がやや狭い
これも軽量・コンパクトさを求めるが故の妥協点なのでしょうが、広角端9mm(35mm換算で18mm)というのは、超広角レンズの中では写せる範囲が狭目の設定です。
世の中の『超広角ズームレンズ』カテゴリーの中では、広角端が(35mm換算で)16mmスタートが標準的で、中には14mmスタートのレンズもあります。
望遠の1mmは大した差はありませんが、広角の1mmは結構大きいので、広角端16mmとかの超広角レンズを使い慣れると、18mm相当のM.ZUIKO 9-18mm F4.0-5.6は少し画角が狭く感じてしまいます。
総評
カメラ・レンズは数多くの製品が世に溢れていますが、軽い超広角レンズが欲しい場合、選択肢はそう多くありません。
山遊びでは快適さだけでなく安全性の面からも、軽量化が重要になってくることがあります。
その2点を考慮した場合、M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6という選択肢が自然と浮かんできました。このレンズ、軽さと小ささ意外に強みはないですし、山岳写真界隈からは無視されがちな存在だとは思うんですが、私は悪くはない選択だと思っています。
レンズを岩にガンガンぶつけるし、行動中出しっぱしにする時はレンズキャップしないので、プロテクトフィルターは必需品。どうせぶつけて傷がつくので高いのでなくとも良いです。
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*1:「画角は足で稼げ」の言葉は通用しない