ペツルの『フィネス』について

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需要がどこまであるのかよく分からないレビュー記事かもしれませんが、ペツルのドッグボーン(クイックドロー用スリング)『フィネス』について書いていきたいと思います。

 

ペツル・フィネス・クイックドロー用スリング

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コレについての記事です

 

ドッグボーン(クイックドロー用スリング)とは

今回紹介するフィネスは『ドッグボーン』と言われる物です。ドッグボーンとは、クライミングギアのクイックドロー(ヌンチャク)のパーツのことです。

上下のカラビナを繋いでいる繊維でできた棒状のものが、ドッグボーン。

犬が咥える骨みたいな形をしているのが名前の由来でしょうか。

クイックドロー用スリングとか、ランナーとかいう表記も見かけるので、定まった名前はないのかもしれません。

 

ドッグボーンが使われているクライミングギアの『クイックドロー』は、クライミングの途中、万一の落下を止める際に使用します。

クイックドローなしで直接カラビナを中間支点に使用した場合、ロープの動きによってカラビナが回転して外れやすくなったり、屈曲が起きやすくなりロープドラッグが発生するリスクが高まります。

クライミングに必須のギアである『クイックドロー』、それを構成する『ドッグボーン』は、地味ながら大切なアイテムなのです。

 

ドッグボーン(クイックドロー用スリング)素材について

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形状・素材の異なるドッグボーン

今回ご紹介する『フィネス』はダイニーマという素材が使われたドッグボーンです。

他に、ドッグボーンとして使われる素材はナイロンがあります。

 

ダイニーマ

ナイロンより丈夫

ナイロンより(値段が)高い

水を吸わない

 

ナイロン

ダイニーマより重い

ダイニーマより安い

 

ダイニーマとナイロンを比較すると、ダイニーマはナイロンより破断強度が高い分、同じ強度を出すように作ると(一般的なクライミング用ドッグボーンの破断強度は22kN)、ダイニーマ製の製品の方が細く、軽くなります

また、ダイニーマには水を吸わないという特徴もあり、濡れる可能性のある場所(沢登りやアイスクライミング等)での使用では濡れ重くなりにくいです(リアルでは繊維間に保水するので水に漬けても完全に濡れないわけではないですが…)

書いてみるとダイニーマはナイロンよりも完全に優れている印象を与えますが、ダイニーマはナイロンよりお値段が高いという欠点もあります。また、ダイニーマ製品はナイロン製品よりも薄くて細かったりするので、「岩角とかで擦れて切れてしまったりするのではないか」という精神的な問題を引き起こすことがあるのも欠点といえば欠点です(ナイロンは太いのでなんとなく見た目に安心感があります)。あとは、ダイニーマの方が融点が低い(熱に弱い)という欠点もありますが、この点はドッグボーン素材として使われる場合は無視してよいでしょう。

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ダイニーマ製はアイスクライミング等にオススメ

 

フィネスの詳細

今回のご記事で紹介するフィネスの公式解説は以下

クイックドロー用スリング『フィネス』は超軽量、コンパクトで高い耐久性を有しています。人間工学に基づく形状により、つかみやすく作られています。『ストリング』により、カラビナを正しい位置に維持し、カラビナを通すループを摩耗から保護することができます。

素材: 高密度ポリエチレン、ゴム

2つのバージョンがあります: 10、17 cm

・長さ10cm 強度:22kN 重量:7g

・長さ17cm 強度:22kN 重量:10g

www.alteria.co.jp

 

高強度ポリエチレン=ダイニーマが使われており、なおかつ握り易いようにデザインされているのがフィネスの特徴です。

 

他にないデザイン

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よくあるダイニーマ製(上)とフィネス(下)

一般的なダイニーマ製ドッグボーンは、ダイニーマの特徴である「細く軽く作れる」というメリットを体現すべく極めて細いデザインとなっています。

こういったデザインは軽いというメリットがある一方で、落ちないように咄嗟に握るといった場合(人によってはよくある)、細いだけに握った時に力が入れ辛かったりします。

 

一方のフィネスは、扁平なデザインとなっているため、咄嗟の場合握りやすいです。これは、スポートクライミングでとりあえずクイックドローにロープを通したい場合に安心ですし、アルパインクライミング等とりあえず何でもアリの山でのクライミングで、ドッグボーンを握って難所を通過(A0突破)だとかをやる場合には有利となります。

 

握りやすい扁平な形のドッグボーンはこれまでにも(2020年9月現在)一応、他メーカーもリリースしていますが、どれも重量が比較的重めのナイロン製でした。軽量で疎水性のあるダイニーマで平たいドッグボーンランナー作ったのはペツルのフィネスが初めてではないでしょうか。

「軽量化もしたいけど、咄嗟に掴めるドッグボーンだと安心、細いダイニーマだと見た目に怖いしちょっと扱い辛いのでちょっとボリュームのある形だと良い」とか微妙にワガママな私のようなユーザーのニーズにベストマッチしているのがペツルのフィネスです。

 

使用感について

それでは外のクライミングで実際に使ってみてどうか、感想をいくつか。

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怖楽しいクライミングのイメージ図

 

まずは使いやすさ。

他のダイニーマ製のスリングと違って扁平でボリュームのある形なので、やはり扱いやすいです。まぁ、細い一般的ダイニーマが扱いにくいかというと、どうせクリップ&アンクリップ時に触るのはカラビナだし、そこまで圧倒的に変わらないといえばそうなのですが…。グローブ必須の冬などでは、ギアの受け渡し時とかやっぱりボリュームのあるドッグボーンだと良いかも。横に太い分ちょっとだけ嵩張り感があります。

 

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エクスプレス(左)、フィネス(右)。横幅は一緒ぐらい

握り心地については、同じペツル社の定番製品である『エクスプレス』(スピリット・エクスプレスについてるドッグボーン)と比べた場合、フィネスは横幅ほぼ一緒でも一回りぐらい薄いので、握りやすさに関して言えばエクスプレスに軍配が上がります

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エクスプレス(左)、フィネス(右)。厚さが異なる

 

あと、これは使ってみて分かったことなのですが、フィネスは疎水性のあるダイニーマ製。こいつは水を吸わない分手汗で滑ります

フリークライミング中、落ちそうになったので咄嗟にフィネスを掴んだ際、夏の暑さ&緊張で手汗が結構出ていたのですが、ズルっと手が滑る感じがありました。ナイロン製のエクスプレスではなかった感触です。グローブをしている場合はあまり関係ないのかもしれませんが、素手でフィネスを握る際は手汗で滑ることを念頭においておきましょう。

以上より、咄嗟に掴むことを想定した場合、クイックドローのドッグボーンにはエクスプレスの方をオススメします(私のようにビビりな人は特に)。

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上にも書きましたが、アルパインやマルチピッチなど、装備を軽量化したいけど細いダイニーマだと見た目も怖いのでちょっとボリューム欲しいけど、軽量化もしたいし保水するナイロン製よりやっぱりダイニーマが良いようなゴニョゴニョ…みたいな人には、細くて軽くて扱いやすいデザインのフィネスは、魅力的な製品だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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