小川山・烏帽子岩左稜線【マルチピッチクライミング】

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小川山のマルチピッチクライミングルート、烏帽子岩左稜線にいってきたので記事にしてみました。

左稜線ルート、登るのは今回で2回目です。ルート自体は対して難しくないのですが、ピッチ数が多くてロープワークの手順など、マルチピッチの練習に最適なルートです。

内容的にはマルチピッチのフリークライミングなのですが、アルパイン的な雰囲気も含んでいるので、イケイケのクライマーには物足りない可能性もありますが、山屋さんなら楽しめるのではないかと思います。

では、以下にレポートしていきます。

 

小川山・烏帽子岩左稜線

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烏帽子岩

 

烏帽子岩左稜線概要

日本のフリークライミングの代表的エリアである小川山。長野県川上村の奥地にある廻り目平を中心として、初心者から上級者まで、ボルダーからマルチピッチまで、数多くのクライミングルートを擁する場所です。

その小川山で、駐車場のある廻り目平から西股沢を渡った先、人気の妹岩やマラ岩の奥、見るものを圧倒するようなスケールでそそり立つ大岩壁が烏帽子岩(えぼしいわ)。岩の大きさとしては小川山でも随一といっていいスケールです。

その烏帽子岩の左側の稜線を登っていくのが今回の左稜線ルート。全18ピッチ(ピッチ数には歩きや懸垂下降も含んでいるので、実際に登るピッチは18よりも少ない)。

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烏帽子岩左稜線ルート

フリークライミングのルートににありがちなステンレス製のアンカーはルート上に存在せず、NP(カムなど)や、錆びたピトン、ピナクルや立ち木などにスリングを掛けたりして支点としていきます。
ルート自体の最高ピッチグレードは5.8と難しくはないですが、ほぼNPとなることや、終了点を自分で判断して構築する必要があるため、NPを使用するルートの経験がある程度必要となってきます。

 

アプローチ

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廻り目平キャンプ場の駐車場から出発

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金峰方面への林道を歩いてきます

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車止めのチェーンを過ぎて程なく、この看板から左の踏み跡に入ります

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堤防のある場所で西股沢を渡渉。靴を脱いで歩いても、石を飛び移っても可

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妹岩・マラ岩の分岐を右。廃林道を道なりに進んでいきます

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分岐から林道を50mほど歩いたところにあるケルンが烏帽子岩への入り口

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しばらく明瞭な踏み跡をたどるとガレ場に出ます

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ガレ場に出ると展望が開けます。奥に見えるのが烏帽子岩



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踏み跡の錯綜するガレ~沢状地形を登っていきます

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ところどころにケルンが積んであります

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この辺まで来ると、右の森へと入るトレースも出てくるので紛らわしい

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踏み跡がありますが正規ルートではない(一応ここからでも取り付きには行けますが)

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正規ルートは沢を上へと詰めていきます

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この辺りまで上がってきたら、右の森へと入っていきます

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ガレ沢から森へと入る場所にはケルンが積んであります

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森の中へ、トレースに導かれるまま入っていくと…

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烏帽子岩の取り付きが見えてきました

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烏帽子岩左稜線ルートの取り付き地点

廻り目平の駐車場から烏帽子岩左稜線ルートの取り付き地点まで、40分ほどかかりました。

左稜線ルート

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左稜線ルート1P目

1P 5.6 汚い岩溝~凹角を登る。

2P 5.7 最初右へトラバースしたあと上へ。

時間節約のために、1P~2Pは継続して登りました。

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2P目終了点は立木でビレイ

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2P目を登ってくるパートナー

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3P目のクラック。ガバガバ。

3P 5.6 ガバガバのクラックを登る。

4P 5.8 脆い壁を登り、岩稜上に出る。ところどころ残置ピトンがあります。一箇所少しいやらしい箇所あり。

3P~4Pは気づかず継続して登ってしまいました。ロープがギリギリ…。

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4P目を登ってくるパートナー

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5P目

5P 5.4 高度感のある岩稜歩き。

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6P目のスタート地点

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6P目終了点から振り返ったところ

6P 5.4はほぼ歩き。

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7P目を登るパートナー

7P 5.5 岩稜を右側から取り付き。最初プロテクションが取れずにちょっと緊張するが、登ってみると大したことはない。

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7P終了点

8P 5.5は7P終了点の右側を登り岩稜上へ。その後カンテを登り、チムニー前でビレイ。7P~9Pのへんはピッチの切り方が違ったのか、トポに表記されている距離と、実際に登った距離が違っていた印象。

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9P目は出だしにチムニーを登る(中に入るわけではありませんが)

9P 5.7 この辺はトポと登った距離が違った気がするので、ピッチの切り方が間違っていた可能性も…

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9P終了点より。登ってくるパートナーをビレイ

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10Pは手がかりの少ない岩のトラバース

10P 5.6は岩の左側をトラバース。ちょっと緊張するところですが、すぐに終わります。トラバース後は尾根を少し歩きます。

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11P

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11P

11P 5.6 左右切れ落ちた高度感のある稜線を歩く。ロープの流れを意識しないと、岩に擦れて重くなってしまうので注意。11P目は烏帽子左稜線の中でも随一の写真栄えポイント。

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12Pも歩きピッチ

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12Pスタート地点

12P 5.5 ここも岩稜歩き。キレイなクラックの走った快適なテラスまで。11P終了点/12P目スタート地点の岩は脆いので支点作成時注意…と言っても、落ちるようなピッチではないですが。

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13P目のクラック(以前に撮影したもの)

13P 5.7 快適なテラスから始まる美しいクラック。ハンドジャムがバチ効きするので、廻り目平周辺にあったら絶好の初心者のクラック練習場として人気になりそうなピッチです。

写真を撮り忘れるというミス。上に挙げたのは以前に登った時の写真です。

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13P終了点より

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13P終了点で使った木

13P目のキレイなクラックを登りきった時点で、烏帽子岩のトップに到着です。この先のピッチはちょっと蛇足感が漂いますが、最終ピッチのチムニーが面白いので、それまで頑張ってダラダラ進む必要があります。

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13P終了後は、ロープを畳んで少し歩きが入ります

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烏帽子岩本峰ピークを過ぎ、歩いていきます

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烏帽子本峰を過ぎて、少し下った先に懸垂下降支点があります

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14P目、懸垂下降支点。一段下がったところにも下降支点がありました

14P 懸垂下降支点のあるテラスから、ちょっと緊張するリッジ上の懸垂下降。2回懸垂下降すると、次ピッチのクラックの走ったリッジを省略可能。

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烏帽子本峰から見る、蛇足的な終盤ピッチ

15P 5.5 クラックの走ったリッジを進み、岩の脆いチムニーというか、岩の間を進みます。その後、右上の岩を登って残置されたスリングでビレイ。

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15P終了点

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16Pは懸垂下降

16P 先ピッチの終了点となっている岩の右側(烏帽子本峰側から見て)を懸垂下降。そのあとしばらく踏み跡を歩きます。

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17P取り付き

ここまでで時間的に厳しかったり、最終のチムニー登りが厳しいようなら、この場所にあるコルから歩いて帰ることも可能です。

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17Pのクラック

17P 5.7 2段に別れた登り。終了点に残置ロープがありましたが、次のピッチは17P目終了点からもう少し登った先でビレイしたいところ。

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18Pのチムニー

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18P目をフォローで登るパートナー

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18P目はクラックを使ったり、岩にスリングを回してビレイ

18P 5.8 チムニー登り。ワイドクラック的な登り方になるので、ワイドに慣れていないとグレード以上の難しさに感じるかもしれません。
カムはキャメロット#1#3を1つずつ使用。チムニー上部に残置ピトンが1本あります。

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左稜線ルートの終了点から見た光景

18P目のチムニーを登りきった時点で、烏帽子左稜線の登攀は終了です。

 

下降ルート

烏帽子岩左稜線ルート終了点からは、ロープを使わず歩いて降りることが可能です。

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18P終了点から奥へ、少し岩場を歩いていきます

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終了点の岩の奥に、下降路となる踏み跡があります

 

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踏み跡が錯綜していて、時々不明瞭になることもあります。最初は右手の岩場からあまり離れないようにしながら、傾斜が緩くなったらひたすら下りです。

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林道まで戻ってきました。ここを右へ

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林道脇にあるボルダー

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烏帽子岩取り付きへの目印になるケルンのとこまで戻ってきました

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最後に西股沢を渡渉し

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廻り目平キャンプ場まで戻ってきました

 

使用したギア

持っていったギアは、『日本100岩場 伊豆・甲信』のトポを参考にしました。

フリークライミング 日本100岩場 3 伊豆・甲信 増補改訂新版 (フリークライミング日本100岩場)

フリークライミング 日本100岩場 3 伊豆・甲信 増補改訂新版 (フリークライミング日本100岩場)

 

 

クイックドローは5本持参。残置ピトンで中間支点を取る時に何回か使用しましたが、ピトン自体が少ないし、古くて錆びているものばかりなので、可能ならできるだけNPで支点取っていった方がいいかも。

 

カムは#0.3~#3まで1セット。NPに慣れていない人や、こまめにプロテクションを取りたいという人は、もう少し持っていってもいいかも。

ルートは屈曲していることが多いので、中間支点を取りすぎるとロープがかなり重くなります。

 

スリングは60cm、120cm、180cmを持っていきました。

木にスリングを巻き付けて支点とする場面が多かったので、120cmの使用頻度が最も多かったです。

残置ピトンが信用できず、終了点でカムで支点補強をしたり、ピナクルにスリングを巻き付けた場面もあったので、普段あまり使わない180cmのスリングも数回使用しました。

 

後はビレイデバイスなど、クライミングギア一式。

 

 

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