元クライマーの母ちゃんと一緒に、日本を代表するクラシック岩稜ルートの前穂高岳北尾根に登ることになりました。
今回は、実際に入山したところから書いていきます(上高地~涸沢間)。
場所:岐阜県、北アルプス、穂高岳(前穂高岳北尾根)
登山日:2018年9月2日~9月3日
登山タイプ:無雪期アルパインクライミング、山小屋利用1泊2日
メンバー:ディーアイ、母ちゃん、マッシー(ガイド)
母ちゃんと前穂北尾根に登ってきたよ! 【涸沢アプローチ編】
★はじめに
今回の山行前に、母ちゃんとは電話連絡を何度か取り合っていて、集合場所についても話し合いました。
母ちゃん「体力のある人と一緒にペース合わせて歩いてたらそれだけで疲れちゃう。次の日の北尾根もあるし、疲れて登れんとかなったら嫌やで、私ゃ横尾で前泊してマイペースで涸沢行くわ」
我が家らしい個人プレーです。
基本的にはパーティをバラさないことを信条としていますが、横尾~涸沢間で道迷いとか遭難とかの可能性はかなり低いため(ここで迷う人は前穂北尾根登っちゃダメ!)、一緒に仲良く上高地出発ではなく、涸沢カールでの集合となりました。
上高地、横尾、涸沢の地図
翌日に疲れを残さないため、一足先に涸沢に着いておく…。前穂高岳北尾根を登るため、母ちゃんなりの気遣いだったのかもしれません。
【参考画像】集合場所の涸沢(涸沢カールとも)。秋の紅葉が特に有名
上高地出発
2018年9月2日。登山開始日。
ディーアイは早朝にマッシーガイドと上高地に到着しました。
天気予報によると、9月2日は雨で、9月3日は曇りらしい。更に日本列島に台風が接近中との情報あり。なんとか北尾根は登れなくもないかな~といった予報です。涸沢まで行って、北尾根登攀は最悪中止となることも視野に入れての出発となりました。
幸い上高地に着いてみると、曇ってはいるものの雨は降っていませんでした。カッパを着込んでのスタートとなる覚悟を持っていただけに、これは嬉しい。
登る方っばかりに意識が集中していたせいで、行きのコンビニでビールとつまみを買い忘れるという痛恨のミス。
上高地バスターミナルの売店でビールとつまみが買えることに気づきました。500mlのプレモルが400円。下界よりちょっと高いぐらい。山小屋で500mlの缶ビールを買うと700~800円ぐらいします。事前に酒類を買い忘れてしまった場合は、物価の比較的安い上高地で入手しておくと良いというのが、今回の発見です。
河童橋からの穂高連峰は雲をまとっていました。
【参考画像】晴れた日、河童橋から見える穂高連峰
小梨平~明神~徳沢~横尾を経て、涸沢へ。横尾まではほぼ平坦な道を歩きます。
明神。
徳沢。偶然すれ違ったガイド仲間と情報交換をするマッシー。
横尾に着です。母ちゃんは朝にこの場所を出発し、一人涸沢に向かっていることでしょう。写真の横尾大橋を越えると、本格的な登山道(登り)が始まります。
横尾~涸沢間のルートから見える、日本最大級の岩壁『屏風岩』。この日はガス(雲)をまとっていました。
【参考画像】晴れた日の屏風岩
ここ数年で素晴らしく歩きやすく整備された、横尾~涸沢間の登山道。
食えるキノコかそうでないかを判別するマッシーガイド。
ディーアイはキノコ嫌いなので、「ふ~ん」ぐらいに聞いています。名前とか説明されるのですが、その言葉は基本的に右から左へと抜けています。
本谷橋。このへんから雨がポツポツと降ってきたのですが、小雨なのでカッパ(レインウェア)は着ずに進んでいきました。歩いて火照った体に雨粒が冷たくて心地良いくらい。
本谷橋~涸沢の中ほどにある、数年前に大崩落を起こした場所。この近辺で休憩するのはおすすめできない。
大崩落の後、涸沢にいる関係者の人たちが「血ヘド吐きながら整備したんだってよ」とマッシーガイドより説明を受けました。
涸沢に向けての詰め上げです。
【参考画像】晴れていれば、穂高連峰を見上げながら歩ける場所なんですが…
雨粒に濡れたナナカマド。赤い実が、もうすぐ秋が来ることを教えてくれる。
涸沢(ヒュッテ)まであと少しの場所。この辺になってくると、会話中3回に1回ぐらいの割合で「ビール飲みたい」というワードが出てきます。
今晩の宿泊地である涸沢(ヒュッテ)に到着です。
受付のところで待っていてくれた母ちゃんとも合流できました。
涸沢ヒュッテこんなとこ
【参考画像】秋の涸沢ヒュッテ
涸沢ヒュッテは快適な山小屋でした。涸沢にはこれまで何度も訪れていましたが、ヒュッテに泊まるのはこれが初めてです。
涸沢ヒュッテ受付。
靴置き場。
受付横にある売店。
食堂はシャレた感じでした。美しい写真がそこら中に飾られています。
ヒュッテの宿泊者が少ないのがあってか、はたまたマッシーの交渉力なのかは知りませんが、個室をあてがわれました。
テラスのところにも売店があります。
【参考画像】おでんが名物。晴れていればテラス絶景を味わうことができます。
ヒュッテ到着後
前穂北尾根2峰からの懸垂下降を想定した訓練。
涸沢ヒュッテで、岩トレに使える場所を教えてもらいました。トレーニングに適した大岩は、登山道のすぐ近くにありました。岩トレ前には必ずヒュッテに確認を取りましょう。
アッセンダー(登降器)を使ってフィックス(固定)されたロープを登る練習。
本番では、ディーアイが先行して登りロープをセット、母ちゃんがアッセンダーを装着してロープ沿いに登ってくる手筈です。マッシーガイドには、アッセンダーが問題なく装着できているかどうか、母ちゃんが登る前に確認してもらいます。
今回使用した物と同じタイプのアッセンダー。登る際にはロープが器具内をスライドしてスムーズに進みますが、落ちた時には器具内に仕込まれたカム(歯)によってロープが挟み込まれ、墜落を止めるようになっています。
設定を間違えたりすると非常に危険なため、正しい使用方法を理解するのと、事前に練習しておくことが必須です。
ホントはハンドル無しタイプの方が軽くコンパクトで良いのですが、ディーアイはハンドル付きしか持っていなかったので…。
夕食は17時ごろから。いつも山では袋ラーメンとか食ってる身なので、しっかりした夕食が摂れるのは非常にありがたいです。
夕食のあと、長い間雲に隠れていた穂高の山々が見えました。
明日が平日(月曜日)だからか、この日の天気が良くなかったためか、または台風が接近中だからか。涸沢は今まで来た中で、一番人が少なかったように感じます。
黄葉が始まったナナカマド。涸沢に秋が到来するのはもうすぐ。
翌朝は前穂高岳北尾根登攀のため、4時起床予定。
天気はまずまず良さそうな予報ですが、日が落ちた後のヒュッテの天井を雨が叩く音がしていました。
一応天気は持ちそうな気はしますが、明日は岩が早く乾いてくれるといいなぁ、なんてことを考えながら、早めに就寝しました。
前穂北尾根シリーズ