急峻な岩峰が天へと聳え立つ、北アルプスの南部を代表する山岳地帯が槍ヶ岳・穂高岳(槍穂高連峰)。
多くの岳人たちを惹き付けて止まない、魅力溢れた槍穂高付近の山々について、山のブログ『のぼるひと』作者ディーアイが個人的に思っていることをテキトーにまとめてみたのが今回の記事です。
北アルプス(槍穂高周辺)の印象的な場所
釜トンネル(かまとんねる)
上高地はマイカー通行止めとなっているので、公共交通機関もしくはタクシーを利用するのが一般的です。
あまり一般的ではないですが、歩いて釜トンネルを通過すれば「お好みの時間に」上高地へ行くことができます。
上高地閉山後のシーズンだと、上高地へとたどり着くには釜トンネルの中を歩いて行くのが基本。オフシーズン中はトンネル内の明かりも消えて、ヘッドライトの明かりを頼りに歩いていく必要があります。バスの中だとあまり意識しないですが、トンネルの中は坂になっていて行きは登りになっているためちょっと大変。
友人が「幽霊が出る」とか余計な情報を吹き込んだせいで無駄にビビることになった。
上高地(かみこうち)
日本&長野県を代表する山岳観光地のひとつ。
朝イチに到着すると周りは山ヤさんばかり。昼が近づくにつれて一般観光客が増えていきます。
入山日は「帰りにゆっくりしていこう」と思ってさっさと通過してしまいますが、帰りになると「疲れたし人が多いから今回はいいや」と、さっさと家路につくことが多いです。結果、上高地(特に河童橋付近)でのんびり観光した記憶はほとんどない。
大正池 (たいしょういけ)
風の弱い日には水面に反射する穂高連峰と、立ち枯れした木のハーモーニーがなんとも美しい、上高地周辺随一のフォトジェニックスポット。
有名な景勝地ですが、早く山に登りたくてウズウズしている山屋さんにとっては、大正池はバスで通過する地点だったりします。山バカは意外に立ち寄ったことがなかったりする印象。
焼岳(やけだけ)
2455m 日本百名山
標高は北アルプス界隈では低いほうですが、バスが上高地に入ってくるとまず目に飛び込んでくる上に、山頂付近の樹木も育たぬゴツゴツした山容が特徴的で、記憶に残る山です。
「いつ噴火してもおかしくない」と言われるような活火山。最初に登った時は、山頂付近でシューシュー吹き上がる噴煙を見て、「もしかしたらもうすぐ噴火する前兆なんじゃないか?」とビビってしまいました。シューシュー噴煙が立ち上るのは、この山にとって平常運転であると後に知る。
霞沢岳(かすみさわだけ)
2645m 二百名山
穂高岳と梓川を挟んで対峙するように存在する山。霞沢岳の山頂に立つための一般登山ルートは、徳本峠(とくごうとうげ)からの一本のみ。徳本峠から、山頂までの標高差はあまりないように見えて、実はアップダウンが大きいので意外と大変。帰りもアップダウンなので疲れます。
山頂周辺からの穂高連峰の眺めは格別。
西尾根は北アルプス積雪期バリエーションルートの入門で、北アルプスバリエーションの中では割と人気だと思われます。
明神岳(みょうじんだけ)
2931m(主峰)
穂高連峰の南端。主峰~5峰と、5つのピーク群からなる岩山。
整備された一般登山ルートはなく、明神の山々を歩くには、基本的にクライミング用の装備が必要となります。
無雪期の5峰→主峰の縦走ルートは、クライミング的な登りはないのですが、懸垂下降が必須技術。自分が初めて本番で懸垂した場所で、最初はビビりまくりでした。
徳沢(とくさわ)
氷壁の宿があったり、蝶ヶ岳への登山道があったりしますが、私はいつも通過してばかりなので特にあまり書けることがないです。
芝生のキャンプ場はいつか泊まってみたいと思いつつ、まだその機会にめぐりあえていません。
穂高とか登った帰りには、徳沢園のカレーとかソフトクリームとかついつい注文してしまうことがあります。
横尾(よこお)
ここ横尾で、穂高(涸沢)方面と、槍ヶ岳方面とで道が別れます。上高地から横尾までは車も通れるような林道歩きですが、ここから先は本格的な登山道となり、平坦な道から登りへと変わっていきます。
上高地から出発して涸沢や槍ヶ岳方面へ向かう際には、ウキウキしているためか横尾までの行程はそれほどキツく感じません。一方で、帰りに横尾から上高地までの約三時間、平坦な林道を歩くのは、かなり辛く感じる不思議。
涸沢(からさわ)
奥穂高岳、北穂高岳などの登山ベース。言わずと知れた紅葉の名所でもあります。紅葉ピークシーズン中には1000張り以上のテントが並ぶことも。
紅葉シーズン以外でも、荒々しくも美しい穂高連峰に囲まれたこの場所は、ただ滞在しているだけでもウキウキしてしまいます。
場所的に日が沈むのが早いことや、テント場の下地が岩ゴロゴロで寝心地悪いのが欠点。
日が暮れると一気に冷え込むので、山々を眺めてゆっくりしたい人は早めに到着するように計画するのが良いと思います。
最近は猿が出没するので、デポした食料が荒らされないか心配。
岳沢(だけさわ)
前穂高岳や奥穂高岳に登るための登山ベース。涸沢と通じるものがあるものの、涸沢と比べて少し地味め。
涸沢と比べると日本では知名度が大きく劣るのに、何故かここを目的地とした外国人が多い。現地のガイドブック(地球の歩き方みたいなやつ)で紹介でもされているのか?
奥穂高岳南稜などのバリエーションルート(アルパインクライミング)のベースキャンプにもなります。5月の連休中は岳沢を中心とした、そうしたルート付近で遭難が多い印象。
前穂高岳 (まえほたかだけ)
3090m
一般登山道では、穂高ファミリーの中では登頂者は少なめ?
一方で、前穂高岳北尾根や、前穂高岳東壁など格調高いクラシック・アルパインルートがいくつもあるので、アルパインをやる山ヤさんにとっては外せない場所。
奥穂高岳(おくほたかだけ)
3190m 日本百名山
穂高連峰の盟主であり、北アルプスの最高峰。標高日本第三位。日本を代表する岩峰。
北穂と奥穂、涸沢から登った場合どちらが怖いのかという疑問がたまに出ますが、白出コルから出た直後にあるハシゴや急登を理由に、少しだけ奥穂の方が大変なんじゃないかと。残雪期は北穂より奥穂の方が怖いと思います。
涸沢からピストンするも良し、奥西縦走や、前穂高・吊尾根を経由した縦走ルートも充実します。何度登っても、登る度に良い山だと感じます。
山頂の祠がいつの間にか石造りの頑丈なものになっていた。
西穂高岳(にしほたかだけ)
2909m
ナンチャラ穂高で最も標高が低いので甘く見られることもありますが、ここも立派な穂高岳ファミリー。落ちたら死ぬところがあちこちにあります。
ロープウェイが通年営業しているのもあり、気軽に標高を上げられるためか、登山者も多くて四季を通して遭難事故がが発生している印象。
ジャンダルム(奥穂西穂縦走)
3163m(ジャンダルム)
奥穂高岳からだと一際目を引く岩のピーク。断崖絶壁に鎮座する岩のドームは存在感抜群です。ただし、西穂方面から見るジャンダルムは微妙に印象が異なります。ジャンを見るなら奥穂側から!
ジャンダルムを含む奥穂高岳~西穂高岳は一般縦走路で最難関のコースと言われており、危険箇所が連続する気の抜けない縦走路です。
「最難ルート」の称号が欲しくて、チャレンジしてしまう登山者も多いためか、ピークシーズンでは渋滞に注意です。気軽に先行者を追い抜ける場所も限られているので、個人的には渋滞する時には避けたい。岩が脆いので落石起きやすいので、人が多いとリスクが上がりそう。
涸沢岳(からさわだけ)
3110m
白出(しらだし)のコルにある穂高岳山荘から、最も近いピーク。白出コルから唐沢岳山頂まではそこまでの難所もないので、奥穂のコンディションが悪いときにはこちらで妥協するのもアリ。
穂高界隈にありながらナントカ穂高の名前がない上に、奥穂と北穂に挟まれる形であるのでチョット影が薄い子。『中穂高岳』とか呼ばれたら印象も幾分か違ったかも。実は北穂高岳より標高が高い。
積雪期穂高の入門(と言っても危険度は高いのですが)となる涸沢岳西尾根というルートがあるので、冬に穂高を登る人にとっては馴染みの深いピークだったり。
北穂高岳(きたほたかだけ)
3106m
山頂直下(マジで直下)に山小屋があるので、穂高の美しい岩峰や夕日・朝日の撮影に最適。
山頂から西に目を向けると切れ落ちた断崖絶壁『滝谷』があり、日本のアルパインクライミングの一大スポットです。
ちなみに北穂から北に向かうルートである『大キレット』が危険箇所として有名ですが、北穂高岳~涸沢岳間の縦走路も同じぐらい通行注意箇所だと思っています。
大キレット
穂高岳を代表する難所(一般登山道の中では)。
最低コルから南岳までは大した危険箇所はありませんが、コルから北穂高岳方面には『飛騨泣き』などの危険ポイントがあります。危険箇所は下りの方が怖いし危ないので、難所が登りになる南岳→北穂高岳というルートの方が難易度は低め?
南岳(みなみだけ)
3032m
穂高界隈を代表する難所である『大キレット』の出入り口となる山。
山頂付近に山小屋(およびテント場)があり、山の名前も知名度も控えめ感があるのですが、地味に絶景スポットです。
大喰岳(おおばみだけ)
3101m
山としてはスケールが大きく、見た目も立派なのに、すぐ隣に日本の山岳界の大スターであるある槍ヶ岳が存在するために話題にも登らない悲運な山。
槍ヶ岳(やりがたけ)
3180m 日本百名山
日本を代表する山。槍のように尖ったピーク(穂先)が目を引く岩峰。
「日本のマッターホルン」と紹介されることもありますが、個人的にはこの呼び方は好きではないです。全然違う山だし。
北アルプスのどこかのピークに立てば、必ずと言っていいほどその特徴的な山頂が目を引きます。
厳しい山だという印象がありますが、露出感のあるのは基本的に槍の肩から穂先に登るところだけ。飛騨沢や槍沢を経由する際には、槍の穂先意外は特に難所という難所はありません。
北鎌尾根(きたかまおね)
槍ヶ岳の北方に伸びる岩稜。
山岳文学の古典『風雪のビヴァーク』や『孤高の人』などで悲劇の舞台としても有名。日本三大岩稜のひとつに数えられる、岩稜ルートの大クラシック。
あまりにも有名になりすぎたバリエーションルートとして、ネット上には山行記録多数。クライミング経験のないハイカーでも登れるルート(安全かどうかは別として)なのもあり、北鎌尾根をアルパインクライミングと言っていいものかは微妙なところ。
冬に登るのは今でも結構厳しいと思います。
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