ボルダリング(クライミング)は登山の役に立つのか?

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(インドア)クライミング・ボルダリングを行うことが、登山(者)にとってプラス効果になるのかどうか、個人的に考えていることを書いたのが今回の記事です。

 

2020年の東京オリンピック効果もあってか、手軽にボルダリング(クライミング)を楽しめるジムが、ここ数年メジャーな存在になってきています。それなりの規模の街に行けば、高い割合でクライミングジムがあるような状態。

山→岩→クライミングと、山登り好きな方が、なんとなくボルダリングやクライミングに興味を持つ場合もあるのではないでしょうか。しかし、岩壁やカラフルなでっぱりをよじ登る能力が、山登りと直接結びつくかというと、微妙なところも。

 

ボルダリング(クライミング)は登山の役に立つのか?

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登山の基本動作は歩き

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登山の基本は『歩き』となるので、上半身の力よりも、歩行する能力(下半身の力)の方が大切です。

身体能力的には、荷物を背負った状態で、斜面を登ったり、下ったりを何時間も行うことが求められるのが登山。

腕の力より断然、脚の筋力を使う場面が多いです。

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岩山でも基本は歩き

 

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この動きは登山には出てこない気が…

オーバーハングした壁を進む動作は、一般登山道では全く使いません…。

登山道を歩く場合、難所と言ってもせいぜいハシゴとか鎖の登り降りぐらいなので…。どちらかといえば、垂直(に近い)傾斜を上り下りする能力が大切です。

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権現のあたりにある長いハシゴ

登山のシーン出てくる難所も、腕の力だけで登るというよりは、脚でしっかり立って、腕はサポートで使うことが基本。

登山のシーンですぐに役立つトレーニングがやりたいのならば、「脚の筋力をUPさせる運動を行う」のが近道でしょう。

 

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話は逸れますが、どっかの本に書いてあったのですが、ウォーキングだと身体への負荷が低すぎて、登山のトレーニングとしてはイマイチなのだそうです。(やらないよりはやった方がいいのでしょうが)

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登山の主動筋である大腿四頭筋を鍛えるスクワット、登りと下りという登山に近い動きをする階段の昇降、心肺機能を鍛えるジョギングなどが、登山のトレーニングとしては適しているとは言えましょう。

 

登山の運動生理学とトレーニング学

登山の運動生理学とトレーニング学

 

  

クライミング能力が役立つ場面

とはいえ、インドアクライミングを行うのが登山に全く役立たずで不必要なのかと言うと、「クライミング力は無いより断然あった方が良い」というのが私の意見です。

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日本の山の場合(世界の山は詳しくないので知りませんが)、登山道の9割以上は歩きが主体ですが、一部の登山道では岩場などを通る必要があります

岩場などを含んだルートを安全に、素早く通過するには、クライミングで培ったバランス能力や重心移動のスキルがあると有利です。

オーバーハングした(手前に傾いた)壁を登る動きは登山道では出てこないと先に書きましたが、垂直に近い傾斜をバランスを取りながら登る動きは訓練しておくと、岩場で役に立つでしょう。

 

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剱岳、カニのタテバイ・ヨコバイあたり

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槍ヶ岳、穂先へ通じるハシゴ

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北アルプス一般ルートの最難関、ジャンダルム(奥穂~西穂縦走)

上に挙げたようなルートを通過するには、クライミング能力が必須というわけではありません。クライミング未経験の登山者も大勢通過しています。

大抵の登山者は無事故で通過できるのですが、毎年のように滑落事故も起こっています。

いくらかでも岩をやったことがある人間は大抵、通過もスムーズで、見ていて危なっかしいところがありません。

クライミング能力は一般登山道の岩稜帯で必須スキルではないですが、安全のマージンを広く取るために、または「岩場が怖くて楽しくなかった」という思いをしないために、登攀スキルはあると何かと重宝します。

 

また、岩上での動きに慣れていないと、まごついて通過に時間がかかり、渋滞を引きを起こしてしまうことも。剱や槍、奥西縦走なんかは人気ルートで、シーズン中は混雑しますし、渋滞によって後続の登山者たちも巻き込まれてしまい、他人の登山スケジュールを遅らせてしまう可能性もあります。

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「すべての登山者がクライミングを経験するべきだ」なんて極論言うつもりなんてサラサラないですが、岩場の多い山に行きたいなら、ちょっとでも岩慣れしといた方が危なくないし怖くないし楽しいと思います。

クライミングジムに行かないまでも、ちょいとそのへんで三点支持の練習するだけでもいいので、事前練習をオススメします。ヘルメット買うよりは三点支持がスムーズにできる方が安全だと思っている登山者です。(両方あるに越したことはないが)

 

 

他の山遊びに繋がる

アルパインクライミングや沢登りなどのアクティビティを行う場合、難所を突破するにはクライミング力が大いに役立ちます。

登山のスキル+クライミングのスキルが必要となるアルパイン的な(ロープを使うタイプの)山をやる場合には、ひたすら練習あるのみです。

将来的にスリリングな山遊びがやりたい人は、一緒に行くパートナーなどが見つかるまで、一人で粛々とクライミング能力に磨きをかけておくのもいいでしょう。

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自分(ディーアイ)はクライミングを本格的に始めたのが30歳過ぎてからなので、20台の頃から、登山ばかりでなくクライミングもやっとけば良かったと思っています。

 

アルパインクライミング (ヤマケイ・テクニカルブック―登山技術全書)

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登山以外の趣味として

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インドアクライミングが、登山の役に立つか立たないかは別として…

山は天気が悪いと登りに行けない場合が多いので、悪天時に登山の代替案としてやるのもおすすめです。山に行きたくても行けない日に、部屋の中で悶々としているより、身体を動かすことで幾分か気は紛れるでしょう。

山以外の趣味のひとつとして楽しむのも悪くないかと。

 

まとめ

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歩行が主体となる登山においては、クライミング(ボルダリング)を行うことは、必ずしも役に立つわけではなさそう。登山に向けたトレーニングとしては、下半身の筋力や心肺機能を鍛えた方が有利だと思います。

しかし、クライミングの経験が、登山中に出てくる難所(岩場など)を通過する際、安定性や安全性を向上させるためには有効です。

また、将来的にロープワークが必要となるような山遊びを希望している場合、クライミングのスキルは大きな助けとなります。

(インドア)クライミングが登山の役に立つかの答えは、「どのような登山をしたいか」によって、変わってくるでしょう。

 

インドア・ボルダリング練習帖 (RS Books)

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教科書になかった登山術 クライミングを楽しむための45の知恵

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