クライミングの写真の撮り方 【クライマーの撮影】

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「臨場感のあるクライミング写真が撮りたい!」という願望があります。

単なる「クライミングをしている人の写真」ではなくて「臨場感のあるクライミングの写真」が撮りたいのです。

今回はいくらかのギア投資でできる、『クライミングシーンの写真』の撮り方について書いていきたいと思います。

 

クライミングの写真撮影方法 

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★注意事項★

基本的に、クライマーの写真はクライマーにしか撮れません

今回紹介するシステムは、やり方を間違えると大怪我や死亡事故に繋がる可能性があることをご了承ください。

クライミングに関する用語はあえて噛み砕かずに書いていきます。言葉が難解だと感じる方は真似しないようにお願いします。

システム自体に思わぬ不具合が潜んでいる可能性も否定できないため、行う場合はくれぐれも自己責任でお願いします。(オメーのせいで酷い目に遭ったとか言うのは無しヨ)

 

普通に撮ったクライミングの写真はイマイチ

はじめに。

これから、岩の取り付き点から撮ったクライミングシーンの写真を何点かご紹介します。

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いかがでしょうか?

実際に登っている本人からすると、高度感にヒヤヒヤしたりして、結構スリリングな体験をしているんですけれども、こうやって写真として見ると、とても作品とは呼べたものではありません。

「ここを登りましたよ」程度の、個人用の記録写真といったところでしょうか。

岩場でクライマーが感じている緊張感や、絶壁を進んでいく躍動感は、このアングルからの写真でほとんど伝わらないというのが正直なところ。

 

臨場感のあるクライミング写真

クライミング写真といえば、Jimmy Chin氏の作品なんかが有名ですかね。他にもロクスノの見出しに出てくるような写真とか、瑞牆山のトポに載っているような作品…そんな写真が撮りたいと思いました。

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こういう本の表紙みたいな写真が撮りたいのです。

 

準備したギア類

そこで、クライミング中のクライマーの写真をもっと撮るべく、元から持っているギア類に加えて、いくつかの物品を追加してみました。

 

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アッセンダー2

 

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アブミ1つ。

 

撮影のためには他に、通常のクライミングで使う装備も持っていきます。

通常のクライミング装備が分からない人は、手を出していけない分野です。念のため。

 

システム概要

 以下は図による解説

※クライマー(登る人・被写体)

※フォトグラファー(写真を撮る人)

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撮影者(フォトグラファー)は、対象より先にクライミングするか回り込むかして、岩の上に支点をセット。

クライマーのいる高さ(写真を撮りたい位置)、もしくは取り付き地点まで懸垂下降を行います。

 

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撮影者は懸垂下降の後、目的地点で一旦停止するか、地上まで戻ってくるかしてから、アッセンダーをセット。クライマーが登っていくのに合わせて、フォトグラファーはユマーリングでロープを登り返しながら好みのアングルで写真を撮っていきます。

 

※歩いて回り込んでトップに立てる岩場の場合は楽ですが、そうでない場合は誰かが先にクライミングをしてロープを張りに行かないといけません。

 

※デバイスのセットや手順を間違えると普通に死ねます。ロープワークや道具の使用方法について熟達しておく必要があります。

 

※フォトグラファーはクライマーの横(別ルートであることも多い)に長時間滞在することになります。岩場が混雑している場合、長時間のルート占有は慎みたいです。ルートは譲りあって使用しましょう。

 

支点の作成

ロープセッティング

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何らかの方法で岩の上まで登り、終了点やら立ち木やらを利用してロープを固定します。

 

★別の方法

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普通にクライミングした後に、終了点にロープをかけてロワーダウン。

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その後、片方のロープを木などに固定。そうするともう一方のロープがアッセンダーで登れるFIXロープとなります。

この方法は撮影終了後のロープ回収が楽です。 

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手頃な木が無くて、クラックがある場合はカムを使用してロープを固定することも可能。

 

登り返し(ユマーリング)

ロープが確実に固定できたら登り返し(ユマーリング)を行っていきます。

ここからカメラを持っていきます。

 

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登り返すFIXロープに、アブミを連結したアッセンダーを装着。ハーネスのビレイループにもうひとつのアッセンダーを装着します。

【1】アブミをセットしたアッセンダーをできるだけ上方にスライドさせる。

【2】アブミに立ち上がりながら、ビレイループにセットしたアッセンダーを上にスライドさせる。

この【1】~【2】を繰り返しながら上へ上へと登っていきます。

 

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【写真】ユマーリング・別の方法

『ジャック中根のクライミング道場』という本のP41にある楽ちんユマーリングと理論的に同じ方法。こちらの方法もありっちゃあり。マイクロトラクション・プーリーを利用し、1/3システムで身体を引き上げる原理なので、登るのは楽です。

ただし、セッティングが多少煩雑になります。被写体のクライマーに合わせて登っては降りてというこういを繰り返すと時間はかかるし、ミスってしまう可能性もあるので、個人的にシステムはできる限り単純化したいです。

 

ダイナミックロープは体重を掛けると伸びるので、出だしは結構登りにくいです。

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また、地面に近い場所ではロープが軽いので、アッセンダーが上手くスライドせず、上の写真のような状態になります。

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地面につかない程度の場所で、アッセンダーの下になる位置に、何でもいいので重りをつけておくと、出だしでもアッセンダーがスムーズに機能します。

ある程度登り返すと、ロープの伸び幅が減って登りやすくなります。

 

登り返し自体はアブミに乗っていくので、クライミングシューズでなくても可能ですが、アブミに乗り込む代わりに、スタンスが拾えそうなら岩を足がかりに登った方が楽な場合が多いです。

TC Proのような、長時間はいていても痛くなりにくいシューズを使用するのも良いと思います。

 

写真撮影が終わったら、撮影者が登り返しに使ったロープの回収が必要になります。

トップロープでセッティングしている場合は、地上まで懸垂下降してきた後にロープを引けば回収できるので楽です。ユマーリングをして登り返す前に、下降器をギアラックに装着しておくのを忘れずに。

上部にロープをFIXしている場合は、一旦登りきった後、ロープの固定を解除してから懸垂下降をします。歩いて降りられそうな場合は、歩いて下っていってもよいです。

 

作例紹介

とりあえず、平日の人影まばらな小川山で試験的に撮影。

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ロッククライミングとしては入門的なルートでしたが、上から横から撮ってみると、それなりに見栄えします。

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撮影風景。

 

Q&A

Q ハンドル付きのアッセンダーを使う理由は?小型のアッセンダーも使えますか?

A ハンドル付きのアッセンダーを使ったほうが、登り返しが楽で疲労が少ないからです。写真だけ撮り行ってるわけではなく、自分もクライミングをしたいので、体力の消耗は抑えたいです…。ハンドル付きのアッセンダーの代わりに、ペツルのタイブロックやセルフジャミングプーリー(マイクロトラクション等)、ハンドル無しのアッセンダー(ベーシック等)、フリクションノット(マッシャー等)でも一応機能するはずです。

 

Q アブミの代わりにスリングを使っても大丈夫ですか?

A 問題なく機能するはずです。そちらの方がシステムとしてはコンパクトになります。アブミの場合、足を乗せる段を調節して立つことで、ハーネスで圧迫される大腿や股の負担を減らして休むことができるのが良い点です。

 

Q 写真で見たヨセミテのユマーリングとは少し違うようですが。
A 主に日本のシングルピッチのクライミングで撮影を行うために採用した方法です。ユマーリングの方法はいろいろあって、アブミ×2、デイジーチェーン×2を使って行う方法もyoutubeで見ました。写真撮影専用のギアをできるだけ少なくしたいという思いと、楽に速く登り返しをしたいという気持ちのバランスを取って、今回の方法を採用しました。ちなみにユマーリング方法は、グリベルのアッセンダーの中に入っていたマジックマウンテンの日本語説明書を参考にしました。

 

Q おすすめのカメラ、レンズはありますか?

A 使っているカメラはCanon EOS 6Dです。それ以外は今回の方法で使ったことがないので何とも…。レンズは24-105mmのズームレンズをメインにしています。レンズ交換はリスクが高いので(落っことしたら危ないし、ほぼ100%レンズは粉々)、ズーム倍率は高い方が良いかもです。また、超広角レンズだと、撮影者側の足やロープ、アブミなどが写り込んでしまう可能性があります。クライマーの表情を撮るために、中望遠域も時々活躍します。

 

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