アウトドアウェアで有名なパタゴニア(Patagonia)の代表的な製品であるダウンセーター。中綿にダウン(羽毛)を使用した保温目的のウェアです。
ダウンウェアの定番中の定番とも言える製品で、使用者も多く人気のウェア。
今回の記事では、「パタゴニアのダウンセーターって何がそんなにいいの?」ということについて、その魅力に迫っていきたいと思います。
Patagonia Down Sweater
スペック
まず最初に、パタゴニア公式からのダウンセーターの説明文をご紹介します。
どんな用途にも完璧な保温性を提供する、軽量で防風性を備えた定番のダウン・セーター・ジャケット。リップストップ・リサイクル・ポリエステル100%製シェルと800フィルパワー・アドバンスト・グローバル・トレーサブル・ダウン(強制給餌や生きたまま羽毛採取が行われたものでない鳥から供給されたことが追跡され保証されている、NSFインターナショナルの認証済みグースダウン)のインサレーション入り
シェル:1.4オンス・20×30デニール・リップストップ・リサイクル・ポリエステル100%。DWR(耐久性撥水)加工済み。裏地:1.4オンス・20デニール・リップストップ・リサイクル・ポリエステル100%。DWR加工済み。
371 g (13.1 oz)
他社製品と比較して
パタゴニア・ダウンセーターの中綿には、800フィルパワーのダウンが使用されています。
『フィルパワー』とは、ダウンの品質を示す値です。
フィルパワーが高いものほど高品質ダウンで、800以上あればかなりの高品質ダウンと言われています。
最近のダウンジャケットは、ダウンの保温力を表すフィルパワーの値が900~1000フィルパワーという製品がいくつもリリースされています。それらのより高いフィルパワー値を持つ他社製品と比べてしまうと、ダウンセーターが採用する800フィルパワーというグースダウンの数字は(確実に高品質ではあるのだけれども)平凡に映ります。
水に弱いというダウンの弱点を克服するために『撥水ダウン』という特殊加工を持たせた製品も市場にはありますが、ダウンセーターのダウンは、フツーのダウンです(白鳥に優しいエコなダウンという付加価値はありますが、機能性とは別の話)。
ダウンセーターが採用する表生地の20×30デニール・リップストップ・ポリエステルも、現在の軽量ダウンジャケットには10デニール級の細い糸が製品も採用されているので、それと比較すると20×30デニールという数字は(最新鋭のものと比較したら)太くて重い繊維ということになってしまいます。
パタゴニア・ダウンセーターの重量は371gです。最近の軽量ダウンジャケットの重量は200gを切り、モノによっては100g台前半の製品も登場しています。そうすると、371gの重量はどうしても「ヘビー」に見えてしまう。
このように最新の"尖った性能の"ダウンジャケットと比較すると、パタゴニアのダウンセーターはどうしても平凡な印象が拭えないというのが正直なところです(十分に高機能ではあるのですが)。
数字的には他社製品と比べたら劣っているところもあるダウンセーター。それでもなお愛用者が多いのはなぜでしょうか。
ベストなバランス
山の過酷な環境で使い倒すには、ただ軽いだけですぐに穴が空くようなウェアは、信頼できないところがあります。ハードに登り込む人にとっては、ヘビーユースできることも大事な機能です。
ダウンセーターに採用されている20×30デニールのナイロン生地も薄いので、岩にガリガリ擦れたら穴が空かないわけではないのですが、極薄生地の軽量ダウンジャケットよりも多分ちょっと頑丈。
これ以上耐久性を求めると、太くて丈夫な繊維を使うことになり、生地が嵩張り重くなってしまい、ダウンジャケットの「コンパクトに収納できる」という利点を潰してしまいます。
ダウンセーターの生地は、軽量コンパクトさと、ある程度の丈夫さのバランスが絶妙なのです。街から岩と雪の世界まで対応。
ダウンセーターの一見平凡に見える(尖った強みのない)スペックは、山でヘビーユースする際にはベストバランスです。
ダウンセーターの細すぎず太すぎないフィット感、すきま風を防ぐ細部まで作り込まれたデザインは、見た目以上の保温性を提供してくれます。適度なゆとりがあるので、中にフリースなどを着込めば結構な寒さにも対応できます。
ウェアのフィット感とか、細部のデザインでも保温力は異なってくるので、単純にフィルパワーなどのカタログ値だけでは保温力は比較できないことがあります。
同重量のダウンと化繊(プリマロフトとか)では、明らかにダウンの方が暖かかったですが、900フィルパワーのダウン(昔持っていました)と800フィルパワーのダウンを使ったジャケットとの保温力の差は、正直言ってよく分かりませんでした。私が鈍感なだけかもしれませんが。
できたらダウンのフィルパワーは高い方が、(気持ち的にも)良いのですが、800以上あればフィルパワーについて私はそこまで気にしていません。
ウェアのスペックを血眼になって調べるより、身体を鍛えた方が山では良く動けると気づいたので、最高スペック品よりフィーリングの合うものを最近は愛用しています。
着用場面
寒い時期に活躍するダウンウェア。
クライミングのビレイ(ロープによる確保)時に。
確かな保温力を備えたダウンセーターは、身体が冷える環境でのクライミングのビレイに使えます。着たまま岩の間を移動し、たまに岩肌にガリっと擦れますけど、ある程度耐久性があるので概ね大丈夫なことが多いです。穴が開いたら開いたでパッチとかダクトテープとかを当てとけば大丈夫。
テント泊の保温着に。
軽量にパッキングできて、着れば確かな保温力のあるダウンは、寒い時期の登山にもピッタリ。「ダウンセーターは最高の保温性!」という訳ではないですが、ダウンの中に着るフリースなどと組み合わせることで、結構な寒さにも対応できます。
もちろん街着にも!
オシャレでロハスなイメージのあるパタゴニアウェアなら、ス○バだって怖くない!?
過剰に厚すぎでオーバースペックということもなく、それでいて保温性は十分に備えていて。軽量ではあるものの、決してヤワというわけではなく。都会のど真ん中から山のてっぺんまで対応。
某社のように『世界最軽量』とか、スペックで訴追するのではなく、数字の上には現れてこない、「なんだか使いやすい」のが、ダウンセーターの魅力です。
ちなみに私の妻は、以前からダウンセーターを愛用しています。
街着に、キャンプに、低山ハイクからヨーロッパアルプスの登山でも着用していました。「なんとなく使いやすい」とのこと。
化繊ウェアとの使い分け
パタゴニアにはダウンウェアの他に、化繊の中綿を使った保温着もリリースしています。化繊の保温着のナノパフなんかは名作だと思っています。
ナノパフなど化繊の保温着のメリットは、濡れても保温性が落ちないこと。そしてすぐ乾くこと。それ故に、着たままガシガシ動くときや汚れる環境には(遠慮なしにジャブジャブ洗えるので)化繊ウェア。
保温着を着た状態であまり動かない環境(テント泊やクライミングのビレイ時など)ではダウンウェアを選択することが多いです。
最後に
パタゴニアの製品は、いろいろな用途で使い倒して、古くなったりツギハギになっても、違った味が出てくるのも特徴のひとつ。他ブランドのオシャレなアウトドアウェアは汚れるとなんとなく残念に見えるデザインのものがありますが、パタゴニアウェアは使えば使うほど味が出てくるものがあります(これは私の意見ですが)。
保温着に迷った場合、とりあえずダウンセーターを買っておけば、なにかと便利で長く使えると思います。
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