木曽の名峰『御嶽山』。山頂の『剣ヶ峰』まで続く道の登山規制が一時的に解除となったので、登ってきました。
御嶽山が突如として噴火したのは2014年9月27日。その時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。多くの犠牲者を出し突然の噴火により、御嶽山の頂上『剣ヶ峰』周辺はは立入禁止エリアとなってしまいました。
噴火から約4年の月日が流れ、2018年9月26日に、黒沢口ルートから御嶽山頂上部・『剣ヶ峰』への登山規制が一時的に解除されました。規制は同年10月8日までの期間限定。
その限られた規制解除期間と、貴重な休みと、好天の予報が見事に合わさったので、これは登るしかないと御嶽山に向かいました。
場所:長野県、木曽御嶽山、黒沢口ルート
登山日:2018年10月2日
登山タイプ:無雪期登山
メンバー:ディーアイ(ソロ)
御嶽山 黒沢口ルートから剣ヶ峰往復
木曽御嶽山(3067m)
御嶽山について
御嶽山(おんたけさん)は、長野県木曽郡木曽町・王滝村と岐阜県下呂市・高山市にまたがり、東日本火山帯の西端に位置する標高3,067 mの複合成層火山である。大きな裾野を広げる独立峰である。
木曽御嶽山、御嶽、王嶽 、王御嶽とも称する。また嶽の字体を新字体で表記し御岳山や、単に御岳と表記されることもある。標高3,000mを超える山としては、日本国内で最も西に位置する。日本には同名の山(御嶽山・御岳山)が多数あり、その最高峰である。山頂には一等三角点(3,063.61m、点名「御岳山」) と御嶽神社奥社がある。
古くから信仰の山として信者の畏敬を集めてきた巨峰で、いくつもの峰を連ねてそびえる活火山である。民謡の木曽節では「木曽の御嶽夏でも寒い袷やりたや足袋添えて」、伊那節では「わしが心と御嶽山の胸の氷は 胸の氷はいつとける」と歌われており、神聖な信仰の山であるとともに木曽を代表する山として親しまれている[14]。東海地方特に尾張地方ではほとんどの場所からその大きな山容を望めることから、「木曽のおんたけさん」として郷土富士のように親しまれている山である。日本百名山、新日本百名山、花の百名山、ぎふ百山のひとつに選定されている。
御嶽山は昔からよく通っていた山です。山好きの両親に子どもの時に連れて行ってもらっていたので、最初に登ったのは10歳に満たない頃だったと思います。
社会人になり、本格的に登山を始めてから、自宅から最も近い3000m峰というのもあり、四季を通して足繁く通っていました。
【2010年8月撮影】五の池小屋からみた雲海と夕日
2014年9月に起きた噴火により、御嶽山には入山制限がかかり、その後は岐阜県から長野県に引っ越して、以前より少し距離が離れてしまったので、以前のようには登りにいけなくなってしまいましたが、御嶽山は自分にとってやはり特別な山です。
2018年になって、4年ぶりに山頂の『剣ヶ峰』への入山規制が一時的に解除されたので、いよいよその時がきたか…と少し感慨深いものがありました。
入山規制解除と好天と休みが合わさっていたのも、何かの巡り合わせのような感じがしました。
2018年9月の御嶽登山については、以下より始まります。
黒沢口ルート
自家用車を利用し黒沢口登山道の駐車場からスタートしました。
今回の山行で歩いたルートです。
※撮影年月が書いていない写真は、今回の山行(2018年10月2日に撮影した写真です)
黒沢口の駐車場。ワクワクして寝付けそうになかったので、夜のうちに到着して車内で前泊しました。到着時にはそれほどの車はありませんでしたが、明るくなってきた頃にはすでに上の駐車場の8割は埋まっていました。
慰霊登山、百名山ハンター、御嶽Lover…様々な人が入山規制解除の時を待っていて、集まってきたものと思われます。
黒沢口駐車場からスタートしてすぐの場所。昔はこの場所に中の湯という古い温泉の建物がありました。数年前には建物が残っていましたが、いつの間にか取り壊されてしまったようです。
最初は木道を淡々と登っていきます。前日までの雨の影響か、しっかりと整備された道ではありますが、木道は所々滑るので注意です(特に下山時)。
昔からずっと休業中の休憩所(?)
大して疲れてもいないので、スルーしてどんどん進みます。
御嶽ロープウェイから来る道との合流場所にある行場小屋。今回はまだ朝早いのもあって営業していませんでした(帰りの時には営業していました)。
【2011年9月撮影】行場小屋のトイレは何年か前に、いつの間にかとてもキレイに生まれ変わっていました
行場小屋の壁に貼り付けてあった入山規制の案内。
黄色く染まった葉が秋晴れの青い空によく合います。
行場小屋から標高を上げていくと森林限界を超え、8合目の小屋『女人堂』に到着しました。この周辺は秋の紅葉の名所として有名らしいです。
【2010年8月撮影】8合目女人堂。かつては多くの修験者の姿を見た御嶽山
女人堂手前の樹林帯ではだいぶ落葉していたので、先日の台風で紅葉した葉っぱは落ちてしまったのではないかと少々残念な気持ちになりましたが、女人堂のすぐ上手にある一部の場所ではしっかりとした色合いに染まっていました。
8合目女人堂を後にして、どんどん標高を上げていきます。
このような石碑が特徴的な御嶽山。日本三霊山と呼ばれる富士山、白山、立山よりも宗教色の強い山です。
御嶽の山中ではあちこちに石像や石碑などを見かけます。遥か昔から現在まで受け継がれている山体信仰という御嶽山の特色を、強く感じることができます。
8合目を過ぎて少し標高を上げると、紅葉に染まった樹木の姿は全く見なくなります。ゴロゴロと堆積した火山性の岩や石ころが目立つ、荒涼とした山肌に。この山が火山であることを改めて感じることができる風景の変化です。
標高を上げるごとに、背の低い植物の姿も見なくなっていきます。生物が行きていくには困難を極める高山帯の環境。異世界的な光景でもあります。昔の人がこの山に『神』を見出したのもなんとなく納得できるような気がします。
石室山荘を過ぎ、どんどん進みます。所々に噴火の痕跡である火山灰が蓄積したような場所もありましたが、噴火の直接的なダメージはあまり大きくなかったような印象ですね。
【2011年9月撮影】何年か前の石室山荘です。外見上は現在と特に変化なし
9合目の覚明堂。現在は休業中です。
【2010年8月撮影】一昔前まで、9合目の覚明堂は営業していました。現在は休業中。いつか再開する日は来るのでしょうか…
二ノ池
覚明堂のある9合目を過ぎたら、御嶽山の頂上まで残すところわずかです。と、その前に御嶽山頂部にある『二ノ池』に寄り道することにしました。
昨日から今朝にかけて冬型になった影響から、標高の高い山頂部エリアでは『エビの尻尾』と呼ばれるもの(氷)が付着していました。高山帯では短い夏と秋。もうすぐ冬の到来です。風もあり、体感温度もかなり低いので防寒対策が必須です。
見えてきた二ノ池。かつてあった美しいブルーの池は、半分以上火山灰に埋もれていました。
また、噴火の後、新たな池が出現しています(写真右にある池)。
火山灰で埋もれた(と言っても、この場所にはもともと池はありませんでしたが)場所から、剣ヶ峰へ目指すルート方面を。
かつては美しいブルーの二ノ池でしたが、残念ながら半分以上は火山灰に埋もれていました。噴火の影響で景観もいくらか変わっています。
【2011年9月撮影】かつての二ノ池。鳥居の場所は変わりません
再建が進むのニの池ヒュッテ。今シーズンから営業開始しているということです。
【2010年8月撮影】かつてのニノ池の脇に建っていた小屋
【2011年9月撮影】かつての二ノ池
【2012年7月撮影】噴火前の二ノ池は、青空を反射する美しいブルーが特徴的でした。いつかこの景色が戻ってくることはあるのでしょうか
今回の山行で帰り際に見た二ノ池周辺。
剣ヶ峰
それでは4年ぶりに立ち入り規制が解除された御嶽山頂の『剣ヶ峰』に向かいましょう。
ニノ池分岐から薄い空気の中ゆっくりと歩いていくと、程なく御嶽山の山頂が見えてきます。ここから見える一番高い場所が『剣ヶ峰』です。日本最高峰富士山の山頂部と同じ名前ですね。剣のように尖っている先端部だからそのように呼ばれるようになったのでしょうか。
【2010年8月撮影】当時の剣ヶ峰付近の様子。登山者・修験者に向けた山小屋が数多く建っていました
噴火後、緊急時に避難できるようシェルターが備えられていました。
【2010年8月撮影】かつての剣ヶ峰周辺
御嶽山頂の剣ヶ峰へと続く最後の登り。登山をはじめて間もない頃は、この最後の登りが辛かった覚えがあります。
【2013年9月撮影】噴火以前、山頂手前にある階段
噴火の傷跡。恐らく噴石を受けたのでしょう。山頂部の建造物にはあちこち破壊された痕跡が残されていました。
御嶽山の山頂(3067m)に到着。
久しぶりにこの場所に来られた嬉しさ、御嶽山で生まれた様々な思い出などが蘇ってくる反面、悲劇の噴火、遺族たちのやるせない気持ちなど考えると、素直に喜ぶ気にもなれず複雑な心境です。
噴火によって破損した山頂の石像。
それでも山は美しい。
山頂へと続く階段から下方を見下ろした口径。この周辺にはあちこちに噴火の爪痕が残っています。
山頂手前にある慰霊碑に手を合わせてから、下山に取り掛かりました。
【2014年9月撮影】御嶽山が噴火した日の約1週間前、剣ヶ峰の頂上を踏んでいました。その時の写真
【2014年9月撮影】噴火の約1週間前。この日の御嶽山も美しかった覚えがあります
下山開始
山頂でやや厳かかつノスタルジックな気分にもなってしまいました。登りの時は剣ヶ峰周辺の様子が気になってばかりで、紅葉の部分はあまり気にせずにすっとばして来たので、紅葉を楽しみながらゆっくりと下って行くことにしました。
石室山荘あたりから、8合目女人堂の周辺を見下ろした図。
御岳ロープウェイの営業開始時間後とあってか、多くの登山者が続々と山頂を目指していました。
女人堂やや上にある紅葉帯。美しい赤色に染まっていました。
紅葉をじっくりと楽しみ、下っていきます。
下山完了!
この日の御嶽山も美しい山でした。
【おまけ】御嶽山の写真あれこれ
【2013年1月撮影】田の原周辺から見た冬の御嶽山
【2013年9月撮影】御嶽山はライチョウを数多く見た山でした
【2012年4月撮影】白い冬毛のライチョウ(ちょっと夏毛が出てますが)
【2012年10月撮影】2018年現在、今もなお立ち入りが禁止されている王滝頂上付近。剣ヶ峰を目指す登山者
【2014年9月撮影】噴火数日後、噴煙を上げる御嶽山
【2015年7月撮影】噴火から約1年後、濁河(or日和田)から飛騨頂上までの立ち入り制限が解除された御嶽山
【2015年7月撮影】入山規制が解除された翌日。継子岳から御嶽山頂の剣ヶ峰を見た景色
【2012年4月撮影】木曽山脈から見た御嶽山
【2013年3月撮影】飛騨(濁河)方面から見た御嶽山
【2010年8月撮影】盛夏の御嶽山
【2014年1月撮影】厳冬期の御嶽山
いろいろ紹介コーナー
この山行で使用したカメラ(の後継モデル)。山での耐久性は保証済みです。
今回の山行で使用したカメラのレンズ。
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ブログでよくディーアイの相手をしてくださっているI AM A DOGのOKP(id:OKP)さんと御嶽山でお会いできました。そのあと一緒に食事も。
大変光栄です!機会があればまたご一緒にお願いします。