山中でテント泊をする場合、必要になるのがマットレス。寝袋だけだと、多くの場合、地面がゴツゴツしていてとても寝られたもんじゃありません。
しかし、結構値段が高い上にいろいろな種類があるのがマットレス。最初はどれを選んだらいいのか分かりません。自分もよくわからないまま、店員に勧められたものをなんとなく買いました。
今回の記事では、いろいろと種類があるテント泊用のマットレスの種類と、それぞれのメリット・デメリットを書いていきます。この記事が、マット選びで悩めるあなたの助けになれば幸いです。何の役に立たなければゴメンナサイ。
絶景の山でプライベートな時間を過ごせるテント泊。そこで快適な睡眠を得るのに地味だけど重要なのがマットレスです。
テント泊に使用するマットレスの種類について解説します
マットレスの種類を大きく分類すると、空気を入れるタイプと、入れないタイプに分けられます。
空気を入れずに使用できるのがクローズドセルマットレス。
空気を入れて使用するタイプのマットが、エア注入式マットレス。
エア注入式のマットレスには、中にスポンジのようなものが入っているインフレータブルマットレスと、中身が完全に空気だけのエアマットに分類されます。
それぞれに長所・短所があるのでこれから説明してきいます。
涸沢カールのキャンプサイトは絶景ですが、地面の状態はすこぶる悪い。良いマットを選択することが安眠への鍵となります。
クローズドセルマットレス
【写真】クローズドセルマットレスの代表、サーマレスト社の製品。両方とも120cmのものです
クローズドセルマットレスは、広げたらそのまま使えるタイプのアウトドア用マットです。(空気を注入せずに使用可能)
後述のエアマットに比べると値段が比較的安いこと、広げればすぐに使えること、丸めたり畳んだりするだけで済むので撤収が楽なこと、そして構造上故障しない(エア注入式はパンクのリスクがある)のがメリットです。
岩ゴロゴロの場合や、尖った枝が落ちている地面などに気兼ねなく設置できるのも素晴らしい点ですね。パッと敷いて休憩にも使えちゃったりします。
特に故障しないという点は、冬山など過酷な環境で使用する場合は、十分に選択する理由になります(マットが使用できないと低体温症のリスクがある、などの失敗の許されない環境で心強い)。
欠点は嵩張ること。一部で小型な製品も出ていますが、基本的には畳んでもかなりデカイです。そのせいで大抵はザックに外付けという形になるし、そうすると歩行時何かにひっかかったり、風に煽られてしまうようなリスクも出てきます。
ロールタイプマット
ロールタイプのマットレスが折りたたみ式と違う点は、収納時にクルクルと巻いて小さくする点にあります。
上の写真のように、クルクル巻いて収納すると中心付近にどうしても無駄なスペースがうまれて、折りたたみ式よりも嵩張ってしまいます。写真のザックに固定してあるマットは半身用(120cm)。この大きさになると、ザック内に収納するというのはあまり現実的ではありません。外付けという形になることが大半だと思います。
ロールタイプのマットレスのいいところは、折りたたみ式のマットレスよりも保温力がある点につきます。
ロールタイプマットの代表格である『リッジレスト・ソーライト』のR値(マットの保温性を示す値)が2.8で、後述の折りたたみ式(アコーディオンタイプ)のマットの代表選手である『Zライト・ソル』のR値は2.6です。
「R値0.2の差って体感的にどうなのよ」ってとこは正直不明ですが、同じクローズドセルマットの場合は、ロールタイプの方が若干保温性的には勝っている模様。
クルクル丸めて収納するタイプなので、使用時に展開しようとすると巻癖がついているため四隅がクルっと持ち上がってしまうのが地味にストレスだったりします。
クローズドセルマットレスは、サーマレスト社のものが一般的。というか、山で見かけるロールタイプマットは、ほぼこの製品だったりします。
折りたたみ式マット(アコーディオンタイプ)
【写真】左がモンベル、右がサーマレストの折りたたみ式(アコーディオンタイプ)マットレス
こうして見るとマットそのものは結構薄めですが、この大凸が体重を受け止め、またエアスペースを作ってくれるので(ある程度)快適なのと、保温力があります
上の写真でも明らかなように、折りたたみ式(アコーディオンタイプ)のマットはその名の通りアコーディオンのようにパタパタと折りたたむことでコンパクトにまとめることができます。マットそのものが小さくなるわけではないので、後述のエア注入式マットと比べるとどうしても嵩張ってしまいますが…。
クローズドセルマットを選択する場合、折りたたんだ時のスペースに無駄がないため、個人的にはロールタイプよりも折りたたみ式(アコーディオンタイプ)の方が好みです。
【写真】一応雪山でも寝られました(薄手の銀マットも併用)
ちなみにマットの長さですが、全身をカバーするサイズ(180cm)とかだと、長くなる分畳んだ時に結構嵩張るので、個人的には使用するマットの長さは120cmと決めています。下半身の保温性はザックとかを敷いておけば十分です(冬山でも)。縦走用のザックは快適性を重視した作りなので、背面が分厚くて結構保温力があります。
折りたたみ式のクローズドセルマットレスと言えば、こちらもサーマレスト社の製品が代表的。
クローズドセルマットレスは今までサーマレスト一強でしたが、2018年にモンベルも似たような製品を出し、それ以来山でちょくちょく見かけるようになりました。
エア注入式マットレス
エア注入式マットレス(エアマット)は、マットの中に空気を吹き入れて膨らませるタイプのマットレスとなります。
寝るためのマットを…
人間が空気を吹き込んで膨らませるイメージ
エアー注入式(エアマット)の素晴らしい点は、使用しない時は空気を抜いてコンパクトに持ち運びできるところ。
山でテント泊するとなると、マットの他にテントや寝袋、食料品など様々な物品を持っていかなければならないので、荷物が大きく重くなりがち。そんな時に、なるべく小さくコンパクトなものを選びたいのが人情と言うものです。
エア式マットレスは、そんな時に荷物の小型・コンパクト化に貢献してくれます。
【写真】左がクローズドセルマットレス、Zライト・ソル。右がエアー注入式のインフレータブルマット、プロライト。両方とも約120cmの大きさ。収納時のサイズ差は一目瞭然です。
コンパクト化の代償として、使用する時には空気を入れて膨らませる手間がかかること。片付ける時には空気をしっかり抜かないといけないこと(空気をしっかり抜かないと収納袋に入らない!)。これは疲れている時や、早く出発したくて焦っている時には意外と面倒です。先に紹介したクローズドセルマットレスは簡単に展開・収納ができるとは対照的です。
また、エア式マットレスはアウトドアで使えるようにある程度丈夫に作ってあるとは言え、基本的に構造は浮き輪のようなもの。
何らかのきっかけで穴が空いてしまうと、中の空気が抜けてしまってマットの意味をなしません。「マットが使えない→寝れない→体力が回復しない」は、特にシビアな環境(厳冬期の雪山とか)では、場合によっては生命の安全にも関わるトラブルです。
肝心な時にトラブルが発生するリスクが潜んでいるということを理解して、エアマットを選択する必要があります(一応パンク修理キットが付属している製品もありますが、穴が小さ過ぎると見つけられないこともある)。
インフレータブルマット
山のブログ『のぼるひと』の作者、ディーアイが愛用しているのがこのタイプのマット。
マットの中にウレタンフォーム(スポンジみたいなの)が入っていて、空気を出し入れするバルブを開けていると、ウレタンが勝手に膨らんでくれます。なので、完全に中身が空気だけのエアマットと比べて膨らます手間が少しだけ省けます。ま、完全には膨らんでくれないですし、膨らむのがだいぶゆっくりなので過度な期待は禁物ですけどね。
最初に買ったテント泊用のマットレスは、ISUKAの120cmのインフレータブルのやつ。中のウレタンフォーム(スポンジみたいなの)が入っていることの利点は、何かのトラブルで穴が空いてしまっても、スポンジみたいなののお陰で少しはマットとして役に立つことです。
上の写真にあるISUKAのマットは、5泊6日の縦走中の3日目に突然パンクして空気が漏れ出てしまうようになりました。それでも、寝心地は多少悪くなったものの、夏の北アルプスぐらいではなんとか眠ることができました。
インフレータブルマットレスの利点は、空気を抜けばコンパクトになる点と、たとえ空気が抜けてもなんとか使えないことはない点。また、バルブを開けておけば(ゆっくり途中まで)膨らんでくれる点です。
ISUKAのインフレータブルマットが壊れてからは、サーマレストのプロライト(プラスじゃない方)という製品を愛用中。冬山含めてオールシーズンたいていはこれで済ませています。
ディーアイ愛用のモデル(実際に使っているのはこれの一つ前のモデルですが)。R値(マットの暖かさを示す値)は2.4ということなので、前述のクローズドセルマットレスより保温性は少しだけ劣るようです。
こちらは対象が冬山登山を含む4シーズンモデル。R値は3.4とのこと。その分重くなって嵩張りますけどね。
エアマット
エアマットの基本構造は、ほぼ浮き輪と同じと言っても差し支えないでしょう。空気を入れて膨らませなければただの袋。ただ、その構造上最もコンパクトに収納可能です。
ここまで読んでいただければお分かりだと思いますが、欠点は何かの理由で穴が空いてしまうと、マットとしての役割を果たさなくなってしまうこと。
まぁ、アウトドア製品ということでちゃんとしたメーカーのならそれなりに丈夫に作っているはずです。ディーアイはそもそもエアマットを使用したことがないのでメチャ詳しくは書けません。
テント泊装備の中で嵩張る物リストを挙げると上位にマットレスが入ってくるので、そのマットレスの小型・軽量・コンパクト化を追求するとエアマットにたどり着くはずです。パンクというリスクがあっても、荷物小型・軽量化に際しては、エアマットは実に魅力的な選択肢です。
また、雪上のキャンプであれば、地面にある尖ったものに当たるリスクも少なそうです。荷物が重く、嵩張る冬山登山に最適?パンクしたらヤバイけど。尖ったものと言えばアイゼンとかピッケルとかのウッカリぐらいじゃないでしょうか?パンクにどこまで神経質になるかが選択ポイントの一つになりそうです。
サーマレスト社のエアマット、ネオエアーXライト。R値3.2。3シーズンモデルです。
ネオエアーXサーモ。エアマットの4シーズン向けモデルです。R値5.7。
で、結局どれが買いなの?
これまでにマットレスの紹介をしてきましたが、結局どれが買いなのでしょうか。
どの製品も一短一長なので、「自分の登山スタイルに合うもの」というのが答えになってしまいます。
とりあえず、取り扱い簡単で、壊れないもの、値段が安いものが良ければクローズドセルマットレス。
軽量コンパクトさを優先したい場合は、エア注入式マットレス。エア式の中でも、山中で壊れても多少はなんとかなるのがインフレータブルマット。壊れるとどうしようもないけど軽量・コンパクトさでは最強なのがエアマット。
ちなみに値段は…エアマット>インフレータブルマット>クローズドセルマットという順番になっています。
重さに関しては、エア注入式マットレスは3シーズンモデルだと軽いですが、冬山向けの保温性が高いモデルはクローズドセルよりも重くなってしまいます。
約120cmの長さのモデルの重量を比較すると…
リッジレスト(ロールタイプマット) 260g
サーマレストZライト(折りたたみ式マット) 290g
プロライト(インフレータブル) 350g
プロライトプラス(冬用インフレータブル) 450g
ネオエアーXライト(エアマット) 230g
ネオエアーXサーモ(冬用エアマット) 430g←これは120cmモデルがないので180cmモデルの重量
最初は3シーズンモデル。メーカーは定番のサーマレストか、最近ではモンベルも頑張っているので、よく分からないうちはどちらかの比較的軽量なモデル(最軽量がいいとは限らない)を選んでおけば、大間違いということはないはずです。
実際に店頭で触ってみて、自分に合うモデルを選択していただければいいかと。
モン○ルショプにて。店員に許可を取ってからマットで寝てみる人。
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